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達磨酒

作者: Urs

 なんぞ人の性にありけるや、真理を追い求むるは世の常なり。

 海を渡った男、油を注がれた子、最後の預言者など、教えを真理とする者ありけれども、覚者は悟りの真理を教えけり。

 今は昔、真理を法と伝える男ありけり。天竺より魏に赴き禅を為す。されば後の教えとなりけり。

 さて、悟りには種々ありて、覚者の教えを出れば、本質は変わらねども、その形質は移りけり。覚者の教えの広まりしこと海を渡るほどなれば、いかほどばかりか。

 ここに真理を酒とする男ありけり。古くより神の飲みものなれば、神と仏は違えどもいかなる力ぞあるかと思ひて、神仙の奥義を追い、法の酒を求めけり。真理を求める者、遥かなる錬金術師も酒に頼りしことを見ると、さても酒には不思議な力のありけるにや。

 然れど法の酒はついに日の目を見ることかなわず。かの男の書き記ししもの散り行きて悉く失われたり。

 されどその音遥かなる未来へと伝わりて、二人の男に継がれたり。

 この男二人、兄弟なる、家の蔵より石に刻まれた真理の酒を知らば、法を知らねども酒に惹かれ作らんと欲す。酒の造り方を調べたれば米と水を機械の手にかけるなり。二人は杜氏蔵人にあらねども、機械のことはよく知りたれば、酒を造る機械を作りたる。

 その機械、人の手を離れて作られたるものなり。プログラミングは機械のおのずから学びたるままに、外なる形を作るも機械なり。兄弟ただ思いを機械に伝えたるのみなり。

 さて、石に刻まれし言葉の完全ならざれば、機械はその元を推し測り、おのが酒を造りたる。機械に真理は分からぬ。法も分からぬ。いかなる愚人をして持ちたる意思の無かりせば、いかなる雑念とて生じず、無となりたり。

 これ諸法無我なれば、覚者とて知らぬこと、人に非ざるものに真理を見つけたり。

 されど意思は非ず。いかなる酒を造りたれども真理を知らず。

 さて、男二人、出来上がりし酒を舐めたれば三口で顔を赤らめ五口でおおいに酔いたり。その目に映るもの悉くねじれ正体をなくせば、己の腕と脚も分からず、ただ座りしままでいたり。

 天におはします覚者地上を覗き奉りて曰はく、人の苦は消えども業は変わらざる、真理は人が作りしものに見出したり。


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