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   10



 瑠璃浜美香。


 特森町在住の自営業を営む17才にして、特森町にある賃貸住宅の内3分の1を占める『瑠璃浜賃貸』の一人娘。まだ親の店は継いでいないが、すでに普通に暮らせるだけの年収を稼いでいる。業種を特森町風に言うならば、【家賃取立】の専門家(エキスパート)。行動心理学を独学で学んだ家賃を取り立てる事に特化した人間だ。たしかにそれは将来『瑠璃浜賃貸』を継ぐのには良い能力なのかもしれないが、字面だけみるとなんだそれ、と思ってしまう。現在は取立を行うのではなく、他の賃貸管理者にノウハウを教えつつ実験に協力してもらう事で、より効果的な取立方法を模索する事を主に行っているようだ。だから時間の融通はかなりきくのだとか。以前悠哉に事件を解決してもらったことがあり、そのお礼としてあの超優良物件を紹介した過去がある。


 そんな美香にとって、店子を呼び寄せる場所である物件を壊されることは激怒するべきことらしい。


 「で、あんた誰よ」


 お、気付いたか美香ちゃん。前任の奴がなんかいなくなったから配置された地の文だよ☆ 美香ちゃん可愛いよねこのあと一緒にデート行かない?


 「うざい、馴れ馴れしい、興味ないのUNKで却下」


 え、う○こ? ダメだよー美香ちゃん、女の子がそんな汚い言葉使っちゃぁ。おじさん、感心しないなあ。


 「ナンパ野郎なのかおじさんなのかはっきりしろ。面白くないのOを追加」


 もちろん、ナ・ン・パ野郎です☆ てかホントにダメだよ美香ちゃん、美香ちゃんのキャラが崩壊しちゃうよ? さすがに汚物ネタはダメだって……。


 「五回目。もういいわよね、わたしルール発動しちゃうわよ?」


 え? ブゴバベッッ!


 「わたしのこと五回以上ちゃん付けで読んだ奴は殴ることにしてるの。あ、殴ってから言うことじゃなかったかしら? 地の文が気絶したから新しい地の文を呼ばないとね。てな訳できりきり働け、元の地の文」


 ……分かりましたから殴る蹴るはもう勘弁してください……(本気の涙)。


 「葛城さん、さっきは何であれが爆弾だと分かったんですか?」


 爆弾の一件から数分後、三人は通報する事なく家を出発して美香の先導である場所へ向かっていた。


 ガラスが割れたとはいえ一部のガラスだけだが、狙われているというこの状況下でセキュリティが著しく低下したあの家に留まるという選択肢は有り得ない。


 警察に通報しなかったのは、既に日向子が被害に遭って、警察が対処できていない事からしても無駄だと判断したからだ。


 その道の途中で、日向子が悠哉に訊いた。……体中が痛ぇ……。きちんと治るかなぁ、骨が曲がったまま定着とかしないかなぁ?


 「なんて説明したら良いかなぁ……。まず、日向子さんの話から相手は直接暴力を厭わない存在だと考えられる。さらに、日向子さんが泊まった友達の家には、その日の内に何らかの干渉があった。でも昨日は標的が外出しないという理由で、何も干渉できなかった。だから今日の早い段階で干渉が来ることは予測できていたんだけど……。根拠を上げるとしたら、Tmazonにしては早い時間の配達、美香さ……美香の何か頼んだっけ、という言葉かな?」


 「なるほど……。すごいですね」

 「いや、こんな推測なんで誰でも出来る。実際美香さ……美香も僕の言葉でそこまで追いついていたし」


 とそこで、美香がかすかに怒気を含んだ声で言う。


 「ついたわよ」

 「ここは……?」


 日向子の疑問に、悠哉はしっかりと答えた。悠哉も一応知っている場所だったからだ。


 「瑠璃浜第四法人ビル。瑠璃浜賃貸が保有する法人向けビルの一つだよ。つまりは会社が借りているビルということさ」


 美香がどんどん進んで行くビルの中に、悠哉は迷い無く、日向子はこんな事を思いながら入って行った。


 (勝手に入っていいのかなぁ? 会社の人に怒られないの?)


 ……ホントだぜ、不法侵入で訴えられるぞきっと。


 結論から言うと、全然大丈夫だった。


 「かっ、葛城先生! 今日はどんな御用件で? 先生の頼みならなんでもやりますよ!」

 「る、瑠璃浜師匠! この前はありがとうございます、師匠に教えてもらったテクニックが役に立ちましたよっ!」


 次々と二人に浴びせられる感謝と歓迎の言葉に、日向子はびっくりして悠哉に小声で尋ねた。


 「葛城さん、どうしたんですかこんな怖い人達にこんな事言われるなんて……」


 ……ん、怖い? ってこわっ! 何この人達めちゃくちゃ怖いんだけど……。なに、マフィア? ヤクザ屋さん?


 「いや、この前簡単な依頼を受けたらこんな感じの扱いになっちゃったんだ。報酬をもらうような案件じゃなかったから何も貰わなかったんだけど、それでなぜかますます感謝されちゃったんだよ。僕にも不思議だよ」


 「結局、この人達は何なんですか? なんでこんなところに……」

 「ちょっと組長に会える? ちょっと頼みたいことがあるのよ」


 美香が組員に何かを言う中、再びの日向子の問いに悠屋はさも当然のように、軽い口調で答えた。


 「有限会社八草組。特森町風に言うなら、【ヤクザ】の専門家(エキスパート)が集まった会社かな?」

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