翌日の朝
8
翌日。
昨日は頑張って面倒な描写したから今日は程々で良いよね?
「そんな訳ないわ。きちんとやらないとどうなるか分かってるわよね?」
ええと……、どうなるんでしょうか?
「描写しか出来なくなるまで殴ってあげるわ」
ごめんなさいっ! 描写しか出来ないなんて嫌だぁ、面倒だし詰まらないしっ! ごめんなさいちゃんとやりますからそれだけは許してください本当に……
「じゃあさっさとやる!」
了解ですっ!
悠哉と美香と日向子の三人は、一緒に朝食を食べていた。
昨夜日向子は二階、つまりは美香の家の客室で泊まったのだ。襲われる事を心配した日向子だが、今晩もう外に出ないから大丈夫と美香に言われて決めたようだ。
場所はもちろん美香のダイニングだ。
悠哉は朝食を振る舞えるだけのお金を持っていない。
洋風建築の中で純和風の朝食を食べながら、三人は話していた。
「……それで、今日は葛城さんどうするつもりなんですか?」
「悠哉でいいよ。……とりあえず、『鍵』が何かどうか調べたいね。それが分かれば向こうとの交渉が出来るかも知れないし」
悠哉は日向子に言葉に、即座に方針を返した。
「交渉!? 何を言ってるの悠哉、あいつらなんて潰して来れば良いのよ、悠哉なら出来るでしょ?」
「ええと、冗談ですよね?」
「悠哉なら、頑張れば小さな街くらいなら潰せるわよ?」
「うーんと、特森町くらいならいけるかな?」
……マジかよ。
「本当ですか?」
疑わしそうな日向子。そりゃそうだ、地の文のこっちでさえ知らないぞ?
しかし、その真偽がはっきりする前にその話は途切れる事となった。
ピンポーン、とインターホンが鳴る。
『宅配便ですー』
ダイニングの壁に埋め込まれた小さな端末から、リアルタイムの音声とやや不鮮明な映像が流れてくる。
「あれ? 何か頼んでいたかしら……。しかもまだ8時前よね? 早すぎるわ……」
美香はそう呟きながら美香宅の玄関へ向かう。外から見たら裏口にあたるのか? 悠哉が一階を借りているため、美香一家は裏口を玄関として使用している訳だ。
「…………」
悠哉は少し考えると、美香の後ろをついていった。
「なに、悠哉はわたしが宅配便も受け取れないと思ってるの? それともストーカー?」
やーいこのヘンターイ!
「地の文うるさい。悠哉……? っ!」
美香は返事の返って来ない悠哉を不思議に思って振り向くと、悠哉の表情に身を固くした。
そのいつもとは違う、言うなれば悠哉が探偵としての『スイッチ』を入れた時の表情。
「あの……、私も行っていいですか?」
知らない家で一人ぼっちになるのが心配なのだろう、日向子がそう申し出る。
「まあいいけど……」
美香は日向子にそう生返事して、もう一度玄関へ足を進めた。