エピローグ
54
一週間後。
「悠哉、今日でヒナの面会謝絶は終わるのよね?」
「そうだよ。おばさん経由の情報だから、間違いはないと思うけど」
悠哉と日向子は河崎医院に向かって歩いていた。
日向子は真奈美の手によって完璧に手術され、術後3日で目を覚ました。
しかし衰弱具合が大きかったため、日和見感染を防ぐためにももう二日面会謝絶が続けられたのだ。
今日はそれが解ける日。
美香は日向子のお見舞いに、悠哉はお見舞いと、依頼達成の報告に向かっている。
…………あなた……。
……ん、どうした?
…………ふふっ、名前を呼んでみただけ……。
……そうか? おかしな奴だな……。
…………うん。あなたの隣にいられるなら、おかしな奴で良い……。
「(聞こえない聞こえないい地の文はなにも言ってないわよ)」
[一週間ずっとこんな感じなんだよー。正直言って、よそでやってほしいよねー。]
「あなたはちょっとずけずけ言い過ぎじゃない?」
「美香がそれを言うー?」
日差しが柔らかく照っている。
悠哉は見えてきた河崎医院の建物を見て、目を細めた。
「悠哉」
「……どうした、美香さ……美香。美香がそんな風に優しく話し掛けてくるなんて、何か僕やったっけ? あ、家賃はもうちょっと待ってくださいっ!」
「なんでよっ! たぶんヒナから少し貰うでしょっっ! ……って違うわよっ! わたしが言いたいのは、ヒナはどんな風に悠哉を迎え入れるかな、って話よ」
……結果的にライバルを増やしちゃった美香さんは、どうするつもりなのかな……? クスクスぐはっっ!
…………あなたっ! 大丈夫、怪我してないっ!?
……怪我はしてるだろうけど、大丈夫さ。もう耐性は付いたからな。
…………よかった……。もしあなたが死んだら、あの女を殺して私も死ぬっ、みたいになってたかも……。
[ちょっとテンション高いね彼女さん]
「なによこれ、わたしがなにかするとあてつけになるみたいな構造、どうなってるのよーっ!」
美香の問いに、悠哉はあまり深く考えることなく答える。
「うーん、今までと同じじゃないかな?」
「違うわよ」
「えっ?」
悠哉の答えに、美香はちょっと不満そうな顔を悠哉に見せる。
「まぁ良いわ。すぐに分かることだしね」
美香の心では、笑顔でもう一度ありがとう、と言う日向子の顔が、今から想像できるのであった。




