侵攻 地の文
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……おーい、どこだー!?
そう叫びなら、地の文は社員寮の中を駆け回っていた。
……(どこに閉じ込められているか分からない。一番下から捜すしかないか……?)
そう判断した地の文は、エレベーターを捜す。
楽するためではない。
一番下の階が何階か調べるためだ。
確かに彼女がいる階層が隠されていては話にならないが、しかし地の文には策があった。
……俺があいつの事を見逃すなんて有り得ない。『誇張表現』、あいつが離れていても、同じ階にいれば存在ぐらいはわかるっ!
そうやって、万に一つも取りこぼす可能性を排除して最下階……地下5階に向かう。
もちろん階段だ。
……あいつを捜すのに、エレベーターなんか遅すぎるっ!
5段飛ばしで駆け降りる地下5階へ駆け降りる地の文。
エレベーターの横に掛けられた案内図には、地下5階:倉庫、地下:4~1階Cランク部屋、1階:食堂、エントランス、2~4階:Bランク部屋、5階:Aランク部屋、と書かれていた。
だんっ、という音を響かせて階段の踊り場から一気に飛び降りた地の文は、目の前にあった倉庫にありそうな金属製の扉を勢いよく開ける。
地の文の第一印象と違わず、そこは地下5階。倉庫フロアだ。
日の光も指さないため、完全な暗闇の中を地の文は手探りで照明のスイッチを押す。
既に地の文が『誇張』した一分は過ぎ去っている。じじっ、と音を立てて明るくなる倉庫の中へ、地の文は叫ぶ。
……どこだっ! ここにいるかっ!?
地の文の叫びに呼応するように、通路だけは確保されているがそこ以外のスペースでは雑多な倉庫で、ゆらりと影が立ち上る。
大宮宗太郎、ではない。
最初の一体が呼び水となったかのように、様々なところで人影……いや、地の文影が現れた。
その正体はもはや明確だ。
地の文。
この地の文と似て非なる存在になってしまった地の文達だ。
[ここ分かりにくいけど、地の文にとって地の文は、人間に人間って言ってるようなものなのー。だからどっちも地の文なんだよー?]
大切な者を奪われ、それを返してもらう見返として服従を選んだ者達。
……(あれは、俺だ。)
地の文は思う。
……あれは、謎の力がいなくて、更には悠哉すら知らなかった俺だ。
だから、分かる。
相手には、戦う理由など無い。
後に引けない理由があるだけだ。
決して交わることのない、ベクトルが180度違う相手の多数対この地の文一人。
普通なら、この地の文には勝つことの出来ない戦い。
だが。
……俺は、ここを切り抜ける。あいつを助けるんだぁああああああああああああああああああああああっっ!
相手も分かっているはずだ。体験したはずだ。
どんな事をしてでも、どんな手を使ってでも、大切な人を助けると、誓ったことを。
………? 君、なんでだ? なんで地の文に地の文が……?
相手の地の文が何かに気付いたように呟いた、その直後に。
地の文は、地の文らしく一言呟いた。
……謎の力、頼んだっ!
[他力本願だよねほんとー]
……謎の力が助けてくれるって言ったんだろっ?
謎の力の言葉と呼応するように、人影達は強烈な重圧に突然襲われ地に強制的に伏せられる。
謎の力はこう言った。
『私がそうするって思えば現象は勝手について来るよー』
と。
よって、地の文に関する行動は、すべて謎の力によってコントロールされる。なにをしようがなにを考えようが、地の文に関して謎の力の意志は優先される。
地の文の行動を束縛する謎の力の力を借りて、大宮宗太郎が集めた、世界を自分の思い通りに回すための地の文の一人に、この地の文は訊く。
……あいつはどこにいる?
………知らない。……別に今更大宮への義理を果たしているんじゃない。俺だって本当はそっち側に行きたかった、でもその方法が無かった。それだけの話だ。だから知ってたら既にお前になってるよ。……良いことを教えてやる。俺達地の文は、地上に上がることを禁止されていた。地上の階層にあいつらがいるんだと、俺達は推測している。
重圧の中、立ち上がれない名前も知らない地の文は、そう言って苦々しげに笑う。
……ありがとう。
………良いか坊主、俺達をこうやって跳ね退けたってことは、お前に俺達の望みを托すって事だからな? 絶対に大宮をなんとかしろよ?
その地の文の言葉に、この地の文は頭を振った。
……いや。俺がやるのは、あいつを助けることだけだ。大宮の事なんてどうでも良い。
………おいっ!
……でも、あいつを助ける道の障害として大宮がいるなら、俺は絶対に大宮を吹っ飛ばす。
………分かった。
地に伏せる地の文は、さっきとは打って変わった笑顔で告げる。
……それで良い。さっさとお前の大切な奴、助けに行ってこいっ!
……言われ無くても。
その言葉を最後に、この地の文は振り返って地上階目指して走りはじめた。




