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物語の終了、が

   44



 次の日。


 「なんで地の文と彼女の二人がいることが普通になってるのよ、地の文って普通一人じゃないの?」


 ……いいじゃんか美香。俺は別に気にしないぜ?


 …………私もあなたがいれば良い……。


 「わたしが気にするのよっ! なによ毎日毎日ラブラブオーラ撒き散らして……、本当に当て付けかっ?」


 ……そんなつもりはないぜ? 美香がそう思うってことは美香に問題があるってことだろ?


 「そ、そんな事無いわよっ!」


 ……あれー、どもってますぎゃぁ、おまえいきなり頬引っ張ってどうした?


 …………こっちの方見てて……。


 「だから当て付けだろ絶対……」


 [はいはい、本編始まるよー?]


 「悠哉さん、ありがとうございました……」


 日向子は『葛城探偵事務所』の前で、悠哉にそう挨拶した。


 昨日悠哉が帰って来て、日向子を襲う組織を壊滅させた報告と、依頼の達成を告げられたのだ。


 日向子だって何となくここを立ち去るのは嫌だが、悠哉には悠哉の、日向子には日向子のこれからの生活がある。


 一度、悠哉が取り戻してくれた自分の日常に帰らなければならない。


 「ヒナ、短い間だったけど楽しかったよ……。また会えたらまた話しよう?」


 悠哉の横に並んだ美香も、日向子にそう言って見送る準備をする。


 「日向子さん」


 そして最後に、悠哉が口を開いた。


 「これで依頼は完了です。日向子さんの日常が、長く続きますように」

 「はい……」


 日向子の目から、涙が溢れようとしていたが、日向子は頑張って堪える。


 涙の別れなど、悠哉に贈るには相応しくない。


 最高の別れは、笑って、笑顔で、ありがとうと言って別れることだ。


 そう思っても、日向子の目から流れる涙は止まりそうになかった。


 それでも、出来るだけの笑顔を作って、日向子は悠哉に告げる。


 「ありがとう、ございましたっ!」


 悠哉に背を向けて門に向かう日向子の背中を、悠哉はいつまでも眺めていた。


 ……これで日向子さんいなくなるのか……。寂しくなるザザッッ!


 [ザザッッー?]


 その凶弾は、被害者の胸を狂いなく撃ち抜く。

 [ちょっと地の文、何言ってるのー?]


 直後、彼方から飛来した弾丸が、日向子の胸を撃ち抜いた。


 「えっ……?」


 突然胸に受ける強い衝撃、湧き出てくる熱い感覚。


 日向子は何が起きたのかすら分からず、地面に倒れる。


 「ヒナッ!?」

 「日向子さんっっっ!?」


 薄れ行く日向子の意識の中、その声だけが耳に残っていた。

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