2人の対戦、または資料
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「せやぁっ!」
……食らえっ!
美香と地の文、二人の拳が交錯する。
……『誇張表現』。美香の一撃は地の文にあまりダメージを与えなかった。
「っ!」
地の文の、命中を重視して威力を放棄した拳を甘んじて受け、そのかわり自分は強めに殴った攻撃をあっさりと受けられて、美香はかすかに動揺する。
そこへ、更に。
……『曖昧表現』。だがある程度はダメージが通ったのか、体がぐらっとよろめいた。……美香の。
「うっ!」
まるで拳の後から威力が伝播したかのように、美香の体にダメージが走り地の文の言葉通りに体がよろめく。威力なんてほとんど無かった一撃に、『曖昧表現』であとから有効性を付け加えたのだ。
「なかなかやるわね……」
……美香、これで人間が地の文に勝てない理由が分かっただろう?
「ううん? まだ終わってないんだから、勝てないと確定した訳じゃないよ?」
……じゃぁ決着をつけるか、美香っ!
再び二人は地面を蹴り出し、その両者の距離を縮める。
互いの拳が互いに……
[はいカットー。なんでこんな所でやってるのーっ!?]
37
「巧、調査結果もらいに来たぞ」
「あいよ。頼まれた分二つ、あと八草組の分も預かってるぞ。一緒に持ってけ」
座頭巧 向井日向子身辺調査結果
【名前】大宮宗太郎
【関係】祖父
【結果】元内閣総理大臣。国会議員になってからたった5年で党の代表となり、内閣総理大臣になったことからかなり後ろめたいことをやっていたと予想される。総理大臣任期終了後議員自体を引退。現在自ら携わった『専門家の街』特森町の電子化行政のメンテナンスを国から委託されている『特森エレクトロニック』の管理職として一部署を任されている。
性格はかなり冷酷で、元敵対議員の娘と結婚するなど感情面さえ目的のために切り捨てられる性格。
弟あり。建築会社を営む娘と結婚。
【名前】向井岳明
【関係】父
【結果】小さな電気工務店に勤務。仕事に関して特筆すること無し。
20年前優梨と結婚するために両親の元を離れ、事実上向井家に籍を入れた形になる。
性格はかなり優しい。職場でもよく妻と娘に関して惚気話をして同僚を困らせた家族を大切にする男。
過去に情報系の大会で入賞経験あり、小さな頃から電子機械に興味があったらしい。
兄弟なし。
【名前】向井優梨
【関係】母
【結果】専業主婦。
サービス系の企業に勤める父と同じ会社に勤めていた母、いわゆる職場婚の夫婦の間に生まれる。
学歴に特筆すること無し。
20年前、旧姓大宮岳明と結婚。3年後、長女向井日向子を出産。その後子育てに専念して今に至る。
姉が一人あり。未婚。デザイン系会社に正社員として勤務中。




