友の調査で分かった事実
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マッセカーメイト、通称MM。
反米を掲げるテロリスト集団であり、悠哉が探偵としての全能力を使って探っても、名前くらいしか入手できなかった謎の組織。
「巧、恐らく敵はマッセカーメイトだ」
『はいっ!?』
帰りの新幹線の中、悠哉は巧に電話した。
「マッセカーメイト。暴力的反米組織の……」
『それは分かってるっ! つうことは、俺が調べていたのはMMの日本拠点って事か? MMが日本で何してるんだよ、つうかそこを調べちゃった俺は大丈夫なのかっ?』
中山事件を知っている巧は自分も消されるのでは無いかと慌てるが、しかし悠哉は断言する。
「大丈夫だ巧」
『何がだよ』
「マッセカーメイトにはもう人を殺させない。する前に、僕が処分する」
『……この通話を盗聴されてたら真っ先に襲撃されそうだな、悠哉。』
「問題無い。この前戦った時で練度が分かっている。何人いようが障害になんてさせない」
『頼もしいこった。……それで、そっちはどうだった、『鍵』の正体は分かったか?』
「ヒントくらいは」
息を吐いて、巧は話題を向井宅の検証に切り替えた。
「マッセカーメイトは画像式のBMIを使って依頼人の父から無理矢理情報を抜き出そうとした。それが失敗したということは、実体の無いもの、つまりはパスワード辺りが『鍵』と言うことになるだろうな」
『BMI? 体重を身長の二乗で割る体格指数がどうかしたのか?』
……俺は20くらいだったかな? ちょっと痩せ気味って所か。
[大丈夫だよー、彼女さんー。わたしは地の文から離れられないけど、あなたから地の文を取ろうとは思っていないからー]
…………それなら……。…………(ブンブン)、でもいつも一緒にいるならダメ……。…………いつ気持ちが傾くか分からない……
「そっちじゃない、巧。馴染みは薄いか?」
『そもそも俺はお前みたいに全分野を網羅はしてねぇんだってば』
巧の溜息混じりの言葉を聞いて、悠哉は少し解説を加えた。
「ブレイン・マシン・インターフェイス、略してBMI。脳で思考したことを現実に出力する装置の総称だ。例としては、考えた通り動く義手とかだな」
『なるほど、そういうことか。脳内に浮かんだ映像を他人に可視化する機械を使ったということか。』
「ああ。問題は何のパスワードかということだ。日向子さん宅のPCとかではないだろう。それなら持ち帰って全て試せば良いだけだ。マッセカーメイトをもって一回で開錠したいところ、おそらくはセキュリティの強固な政府関係組織等のパスワードなんだろう」
『了解。向井父がなにか関係していないか、ということか。』
「ああ、依頼人の周囲を洗う依頼の方でなにか分からなかったか? 政府系の機密機関に勤めていた記録があったとか」
『向井父に直接関係している物は無かったな。間接的な関わりだと、一日で全て突き止めるのは難しいぞ』
……(怒)っ!
[地の文は彼女の頭をはたいたー]
…………なに? どうしたの……?
……お前は俺のお前への想いがその程度だと思ってるのかっ!? 俺が簡単にお前から心変わりするとっ!?
…………ぁっ! ……ごめんなさい、そういうつもりじゃ……。
……良いか、お前が疑うなら何度でも言ってやる、そう約束しただろうっ!? 俺はお前が好きだ、お前にああやって冷たくあしらわれてもあれだけ付き纏うくらい好きだっ!
[美香さんの気持ちがわかる気がするー]
…………(キュンッ)
「そうか、ありがとう。後で詳しい資料を受け取りに行く」
若干落胆した様子で電話を切ろうとした悠哉だったが、
『待てよ悠哉。』
巧はそれを引き止める。
「どうした?」
『父じゃないが、祖父でヒットしてる。大宮宗太郎、国会議員5年目にして『専門家の街』計画を評価されて内閣総理大臣に就任という異例のスピード出世した、疑惑の人ってやつだ。』




