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守りたかったこの時間  作者: アキラ
5/8

第5話 懐かしい時

「陣~。もう朝よ~。早く起きなさ~い!!」

遠くから陣を呼ぶ声が聞こえた。しかしその声はまどかのものではなかった。


しかし陣はその声の主を知っていた。

それは3年前から聞きたくても聞けなかった母親の声だった。

まさか、そんなはずは。と思いながらも陣は

さっきまで見ていた夢を思い出し、飛び起きた。

そして周りを見回した。そこは3年前に陣がバンドを見に行く前の部屋だった。


本当に俺は戻ってきたのか。火事の起きる前に。

陣が考えていると、いきなりドアが開き

「あら?陣起きているんじゃない。ってえっ!?

なんで陣泣いているの?もしかして何か苦しいの??」

陣の部屋に入ってきた母親は陣が起きたかを確認するために入ってきたのだが、

陣がなぜか涙を流していたので、驚いて陣のそばに寄って行った。


瞬間、陣が思わず母親を抱きしめて「また会えてよかったよ、母さん」と言ってしまった。

母親は何か悪い夢でも見ていたのだろうと思い、陣を抱きしめ返した。

「大丈夫よ。陣。私はずっとあなたのそばにいるからね。これからもずっとね。」

その言葉にただただ陣は頷いていた。

数分も経っていなかったものの陣にとっては数十分に感じられた抱擁の後、

陣はパッと抱きしめるのをやめた。


「母さん、ありがとう。もう大丈夫だよ。悪い夢を見ていたみたいだから」

すると母親は安心したのか、そっと陣から体を離していった

「それならよかったわ。早く準備して下に来なさい。ご飯できているからね。」

こんな母親からの朝の会話をされたのも3年振りだったため、それだけで嬉しくなった。


母親が部屋から出て行った後、陣は服を着替えてダイニングへと向かった。

ダイニングテーブルには母親の料理が並べられ、椅子には父親が座っていた。

陣は久しぶりの家族との食事を幸せに感じながら、家族での他愛無い話を重ねた。


ご飯を食べ終わった後、父親は自分の部屋へと戻っていたため、

陣は素早くご飯を食べ終わると、父親の部屋へと向かった。

佐伯さんのことを知るために

父親の部屋の前に立ち、ドアをコンコンとたたき「今って大丈夫?父さん」と声をかけた。

すぐに部屋から「入っていいぞ」という声がかかったため、陣は部屋へと入っていった

父親は陣が入ってきたのを確認すると、口を開いた。

「それでどうした?お前とは最近話していなかったが、何か聞きたいことでもあるのか?

もしかして彼女ができたとかじゃないだろうなぁ。ははは」

冗談交じりにそんなことを言ってくる父親に対して陣は思い切って尋ねてみることにした。

「あのさ、父さん。佐伯信二さんって父さんの兄弟なの?」


すると父さんの顔がどんどん青ざめていった。

「ど、どうして陣、お前が信二のことを知っているんだ?

このことは母さんには伝えたのか?」

心底驚いている父親は陣にそんなことを問いかけてきた。


陣はどう言えばいいのか考えた。

(未来から来たから知っているんだと言うか、

いやでもよく見るタイムスリップの物語では

こういうことは言ったらいけないんじゃなかったか。どうしようか)

少しの間考えた末に陣は知った経緯について、嘘をつくことに決意した。

「この間、おじいちゃんの家に行ったときに偶然知ったんだけど、なかなか父さんに聞くことができなかったんだ。ごめん。後母さんには言っていないから安心して。」

すると父親は安心したのか冷静さを取り戻したようだった。

「そうか。母さんに言っていないのであれば、それでいい。

まあ、知った経緯がどうだとしてもこのことは母さんには言わないでくれ。お願いだ。」

陣は頷いていたものの、そんなにも隠し通さなくてはいけないことなのか

と不思議でならなかったが、その事を父親に聞く気にはなれなかった。

「まあ、それでお前の質問にはきっちり答えていなかったな。

そうだよ。俺と信二は兄弟だ。まあ、普通の兄弟とは少し違うかもしれないが、

俺はあいつのことを大切に思っているし、

今でも時々母さんの目を盗んでは会っているんだよ。内心冷や冷やしてはいるがな。」

父親の話を聞いて、やっと陣は佐伯さんは本当に父さんの兄弟だったんだな。

ということを確信できた。

そこまで考えていて、陣はふと佐伯さんには気になってはいたけど聞けずにいたことを思い出し、父親に聞いてみることにした。


「それで父さんと佐伯さんはどっちがお兄さんなの?」

すると父さんは少しの沈黙の後、答えてくれた。

「それがな。わかっていないんだよ。親父もそのことについては教えてくれなかった。

だから俺はあいつのことを兄でもあり弟でもあると思って接してきたよ。

まあ、どっちかというと友達みたいだったけどな。

あいつもそう思ってくれていると思うんだ。」

その言葉に対して、陣は佐伯さんの家で過ごした3年間を思い出して納得した。


話も済んだので、陣は自分の部屋へと戻ることにした。

部屋を出る間際に父さんは何かを言おうとしていたが、結局何も言われなかった。


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