第1話 いま
人はいつだって何かしらの分岐点で選択を迫られ、
一つの選択肢を選ぶ。
もう一つの選択肢はもう選べない。
その選択が間違っていたとしても・・・
「陣~。もうちょっとゆっくり歩いてよぉ!!」
少し後ろの方から少年のことを呼ぶ少女が一人走ってくる。
「まどか、お前もっと速く走れって!!遅刻するだろ。」
陣と呼ばれた少年は少女を待たずに
学校の遅刻を回避するために走っていた。
こうなったのは数十分前の出来事が原因にあった。
いつものようにまどかを起こしに行くと、
全然起きてはくれずそのまま10分、20分が過ぎていき、
半ば強引に起こした。しかしそこからのまどかは遅く気づけば、
あと20分で始業のベルが鳴る時間になってしまっていた。
いくら学校が近いからと言って、
遅刻しそうになっていたのでは元も子もない。
陣が後ろを見ると、まどかは追いつける様子もなく、
倒れそうになっていた。
はぁ。やれやれしょうがないな。と思いながら走ってきた道を戻り、
まどかの前でしゃがんだ。
「乗れ。なるべく早く」
陣のその言葉は何回。何十回目になるだろうかは
わからないほど繰り返していた。
まどかも最初こそ、すごく抵抗していたものの最近では、
普通に乗ってくれるようになってくれていた。顔を赤らめながらも。
「よし!それじゃあ、飛ばすからきっちり掴んどけよ」
鞄を持たせたまどかをきっちり背中に背負ったのを確認して陣は走った。
「はぁはぁ。まどか、お前、少し太ったんじゃないか。重かったぞ」
やっとのことで遅刻ギリギリで学校についたものの、
あまりの重さに息が上がってしまっていた。
「違うもん。私が重いんじゃなくて今日の鞄が重いんだよ。」
まどかはほっぺたを膨らませながらそんなことを言っていた。
「それじゃあ、まどか、また放課後な」
「あ、うん。わかったよ。後さっきもありがとう。
陣のおかげで遅刻せずにすんだよ」
別れ際にまどかからその言葉とともにとびっきりの笑顔をもらい、
一気に陣は元気が出て、自分の教室へと向かった。
「お~い、陣~。さっきの見てたぜ!!
お前ら本当に愛し合ってるよなぁ。はは」
教室につくや否や、陽平に陣がまどかをおんぶして登校してきたことを
指しているような感じで声をかけられた。
「はぁ?そんなことねぇよ。どっちかっていうと親子じゃね?
子供を背負って学校に行く父親みたいな」
陽平の冗談に対して、少し顔を赤くしながら答えた。しかし
「そんなこと言ってるけど。顔赤いぞ。
本当はそうなりたいとか思ってるんじゃないのかよ~」
陽平は陣の顔が赤くなっていることから、更なるからかいを入れてきた。
陣はこのままでは埒が明かないと考え、陽平の言葉を無視して、席に座った。
さっきの登校が疲れてしまったのか、
陣は1時間目が始まって10分ぐらいたったころぐらいから寝ていた。
寝ている間、俺はまたあの夢を見ていた。俺の家族がいなくなってしまった日の。




