一章 旅立ちの日にー3
日差しが弱くなってきたころ、父親と母親が戻ってきた。
なんでもあの清水の場所から少し山奥で竜が巣を作っており、水をせき止めてしまっていたそうだ。
明日ウォーリーが退治しに行くようで、明日中子供は家から、大人も村を囲う獣除けの柵から出ずに火もたかないようにと言われたそうだ。
そう言い終えると、そろそろ夕食時だから薪を運んでくるように言われた。
かまどに木を組むと父親がやってきて、*着火*と唱え種火を付けた。
妹がふぅふぅと火の勢いを強くしていく。
母親が干し野菜と塩漬け肉を細切れにし終えるころには、火は十分に強くなっていた。
まだかまだかと待っていると、さあできたわよと声がかかる。
スープ皿をかまどまで持って行き、スープを受け取る。
家族全員が食卓に着くと父親が固焼きパンをそれぞれにいきわたるように切って差し出した。
いつも通りパンをスープに浸すと、塩漬けキャベツをもりもりと食べる。
腸詰肉にたっぷりとマスタードを付けふた切れ食べると、パンとスープに取り掛かった。
最後にチーズをかじっているころには、少し暗くなってきていた。
食器を片付けるとみな寝室へと向かい、日が完全に落ちるころには深い眠りについた。
翌朝、目が覚めて顔を洗いに井戸へ行くと、村の人々が集まり始めているのが見えた。
何だろうと思って村の入り口あたりまで見に行くと、丁度ウォーリーを見送るところだった。
ウォーリーがちらりとこちらを見た後、右に目線をずらして何かを認識するとこういった。
「よぉ、リック坊にロブ坊!ちょうどいいところに来た。荷物持ちがほしい。二人ともついてきてくれ。」
ぼくらが人ごみから一歩前へ出て行くと、衆人の中から女性が女性が声を上げた。
「竜退治に子供を連れてゆくなんて!危険すぎるわ!大人を連れて行けばいいじゃないの!」
「ファタス様からのお告げ従い二人を連れて行くのだ。口を慎むように!」
ウォーリーが語気を強める。女性はすごすごと人ごみに紛れていった。
「それでは二人とも、この袋を持ってくれ。そんなに重いもんじゃぁない。」
おもむろに一抱えほどあるずた袋をそれぞれに渡す。
重さは赤子二人分だろうか。少し生臭い。
「それでは竜退治に出発だ。なあに、昼過ぎには帰れるし親に話は通してある。」
そういうと、ウォーリーは清水へ向かって歩き始めた。
僕とロブは袋を重そうに抱えてついていくことにした。
村の人々の送り声や祈る声が聞こえてくる。
その中でなぜか鮮明に聞こえた「大叔父様、村をお救いください」という村長の声が引っ掛かった。
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