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テンプレ主人公は偉大だった!?(プロト版)  作者: トクシマ・ザ・スダーチ
テンプレ主人公になっちゃった!?
61/62

心情吐露

おまたせしました。61話です。大分体調戻ってきました(`・ω・´)ゞ

「俺はスレイ・ベルフォード。なんかいろいろあって有名だったらしいけど最近記憶を失ってね、まぁ一口で言えば俺の悩み事ってのはそれが一番の原因なんだ」


 自己紹介もかねて俺はそう切り出した。すると少女はとても驚いたように目を丸くしている。


「……あなたが、ベルフォード家の麒麟児とうたわれていた方でしたか。……その、お聞きしていた性格とは差異が激しくて……今の今まで気づきませんでした」


 申し訳ありません、と付け加える少女に俺は苦笑で応じる。


「過去の自分とは随分キャラが違うらしいからなぁ。記憶喪失ってのはどうやらそういうもんらしい」


 異世界から意識だけが乗り移ったことを話そうかと一瞬考えたが、常識を備えている普通の人間にそんな荒唐無稽なことを言ったらいよいよ気が狂ったのかと疑われると考えてやめておいた。


 まぁ、今の精神状態は狂っていると言っても過言ではないのだが。とりあえず俺は記憶喪失という設定を前面に押し出して言葉を続けることにした。それが俺にとって楽な逃げ道であることを信じて。


「……そう、なんですか。……それであなたは悩んでいるんですね」

「そう、だな。俺は前の俺を覚えちゃいない。言ってみれば俺は別世界から名前と言語を与えられて社会に放り出されたような人間みたいなもんだ。そんな俺は『スレイ』の親しい人間、姉と幼馴染らしき(・・・)人に支えられて今日までやってこれた。って言ってもたった五日とちょっとくらいだが」

「……その、それは悪いことだったんですか?聞く限りではその親しい人たちに恩義を感じている風な言い方と表情でしたが」

「それはもう、感謝してるさ。彼女らがいなければ俺はとっくの昔に発狂してた自信があるぜ。まぁ、だが、それがいいことだったのかは俺にはわからないな。彼女らは俺が『スレイ』だから助けてくれただけで内面の俺はそのついでに助かっただけなんだよ。前の『スレイ』が持ってたものなんて一握りしか使えないけどな」

「そんなことは……思ってはいないと思いますよ?あなたの言うお二人は……たまに学内でお見かけしますがいつも元気そうですよ。……とてもそんなこと考えているようには見えません」

「そうだな。いや、彼女らを悪く言おうってわけじゃない。問題は俺さ。今の俺は前の『スレイ』のおこぼれを頂いているような状況だ。それが気に食わなくて拗ねてんだよ。昔の『スレイ』のことばかり見て俺のことは見ていないってな。もちろん彼女らにはそんな気はないんだろうが俺は時折そんなことを考えてるよ。被害妄想激しいだろ?そんな自分が大っ嫌いだ」

「……っ」


 歯ぎしりをする思いで自分をなじると思いのほかドスの効いた声が出てしまった。そのせいか少女からの合いの手のような応答は止まってしまい、辺りは夜にふさわしい静寂が訪れる。


「……ま、そんなどうしようもないことをいつも心の奥底で考えていたよ。そのくらいならまだよかったんだけどね。どうも俺は前の『スレイ』と違って荒事が苦手らしい」

「荒事……ですか?」


 仕切り直しとばかりに次の話題を出す。少女はやはり付き合いがいいのか俺の言葉に合いの手を入れてくれた。


「そうさ。昔の『スレイ』はそりゃもうすごかったって話だろ?次期剣聖とか呼ばれちゃったりしてさ。でも今の俺はその頃の剣の冴えなんてかけらも覚えちゃいない。素人同然なんだ。この前なんかろくに練習もしてないのに真剣振って足を盛大に斬ってな?……あれは痛かったなぁ。二度と経験したくない」

「……そ、それはその、ご愁傷さまです」

「ああ。おかげで剣を見ただけで膝が笑うようになったよ。これから先、剣を握って魔物とかいう物騒な連中と戦わされるってのに。というかなんで俺は軍学生なんかやってるんだ?白兵戦の授業で上顎割られるし、知らん間に買ってた恨みで殺されかけるし、次期剣聖の名をよこせとか言ってボコボコにされるし……。もっとこう、穏やかな……パン屋の従業員辺りがよかったぜ。痛い思いも苦しい思いも俺はごめんだ。……いや、どうせなら眼鏡屋の従業員がいいな。うん、それが正解だ」

「……なんで眼鏡屋?」


 話している間にちょっとだけ気が晴れたのか冗談を言う余裕が出てくる。大分まいってたはずなんだけどなぁ?それだけメガネ美人と会話するってのはカウンセリング効果があるってことか。学会で発表しないとな。あ、自覚できるくらいには調子戻ってきた。


 だが一度去来した心の寒さは戻らない。回復しない。テンションを上げてもこの心細さは戻らない。あの一人ぼっちの部屋で自覚してしまった、自覚しなおしてしまった孤独感は耐え難いものだった。


 そのことを思い出すと身体が芯から冷えるような錯覚に陥った。吐き気も伴って、膝から力が抜ける。俺はその場に倒れこみそうになる。


「……え!?あの、大丈夫ですか!?」


 それに気づいて少女は俺の脇に両手を入れて支える。突然のことで割と密着してしまっている身体からほのかな温かさを感じた。


 少しの間そうしていると足に力が戻った。俺は体勢を立て直して少女から離れた。


「その、ごめん」

「……びっくりしました。大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫、ではないかな。大丈夫ならここにはいないしね」

「……あの、そもそもどうしてこんなところにいたんですか?とりあえずとても疲れている、というのはわかったんですが」

「学園にいるのが怖くなったんだ。突発的に学園を飛び出そうと思うくらいには疲れてたってことだね」

「……やっぱり逃げようとしていたんですか」

「そこにある塀の隙間からな。まぁここからじゃ木にさえぎられて見えないけどな」

「塀の隙間、ですか……?」


 俺が塀の方に視線を向けてそう言うと、訝しんだ少女が俺の視線を追った。彼女は目を凝らしてみているがいまいち得心がいかない様子だった。メガネの度数が合っていないのかもしれない。


 でもあの塀の隙間は本当に巧妙に隠れているのだ。気づかないとしても無理はない。俺が見つけたのはかなり偶然だったか。


「ああ。生徒会もいろいろと忙しそうだけどこういう見落としには気を付けた方がいいよ」

「……後で確認しておきます。それで、この先の従軍する将来が嫌になって逃げたということになったんですか」

「そんな感じだ。きっかけは今日、俺が初めてこの世界で意識をもって初めて物理的に一人になったことさ。ぞっとするような孤独感やら苦痛から逃れたいっていう欲求とかがこう、心の中がぐちゃぐちゃになって、もう自分でもよくわからないわ。だから、飛び出そうとしたのかもな」


 苦笑気味にそう言った。時折声音が震えて情けない音になった。せっかく戻りかけたテンションもガタガタと落ちていく。


「……大変、だったみたいですね」

「ああ、疲れちまったよ」


 俺がそう呟くとまた辺りに静けさが戻った。どうせならこの静寂に飲み込まれて消えてしまいたいとさえ思った。


 今度はどちらも何の言葉も見つけ出せないのか、とても、少なくとも俺にとっては長い長い静寂が辺りを包みこんでいた。



病み上がりに書いてたんですが、なんでこんな暗い展開でうっちゃってたんだ私…。

うまくまとめられる気がしねえ…。はやくテンション高い康太郎が書きたい。


次話投稿は29日の0時予定です。余裕があったらゲリラ投稿していきます。(。-`ω-)


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