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テンプレ主人公は偉大だった!?(プロト版)  作者: トクシマ・ザ・スダーチ
テンプレ主人公になっちゃった!?
55/62

魔力纏衣

55話です。久々のゲリラ投稿ですね!

 ジャックの断れないタイプの恩の押し売りのおかげで熱の精霊・イアレットとの好感度をニュートラルまでとり戻した俺は精霊たちを送還してジャックから受け取ったノートの中身とにらめっこしていた。


 内容はハイセから聞いたものと大差ない基本的な知識から始まって、様々な応用方法などが列挙されていた。その方法によってどのような効果が得られるのかという実際のエピソード付きで解説されている。


「へぇ?魔力循環って傷の回復もできるのか。で、それの応用でトレーニング時に併用すると筋肉痛の期間が減る上に一回の効率が上がるのか」


 超回復による筋繊維の強化効率を魔力循環で上げているという認識でよさそうだな。ということはこの世界ではプロテインなしでもムッキムキのボディビルダーになれるかもしれないってことか。魔力循環やべぇ。


「ジャックから受け取ってたノート?魔術の勉強してるんだね」


 漏れ出た独り言に反応してニアが横合いからノートをのぞき込んでくる。女性特有の香りはしない。これは消臭の精霊が仕事をしているわけではなく、先の精霊との対話に参加していたアニがその辺認識を改ざんしているらしい。


 彼はすでに送還されてこの場にいないが精霊石からの恩恵で十分ニアを男子生徒に仕立て上げている。強い精霊なのかもしれない。


「ああ、せっかく俺のために用意してくれたらしいからな。読み込んでいるんだが、どうもとっかかりが掴めなくてね。つい応用のエピソードの方に目が言っちゃうのよ」

「ジャックはノートを作るのうまいんだね。で、とっかかりが掴めないっていうのはどういうことなんだい?」


 俺は思案顔でやたら綺麗な字で几帳面に書かれたノートの「実践するときのコツ」という項目を見やる。それを読み込んでいくと、「まずは魂から溢れる魔力を感じるべし」とある。


 さて、魂から溢れる魔力とはどう感じればよいのでしょうか?


 魔力のまの字もない現代日本から送られてきた俺にこれは難題ではないでしょうか?


 というわけでとっかかりがありません、という旨を「日本から送られてきた」とか都合の悪い部分を消去してニアに伝える。


「なるほどね。でもそれは多分簡単だよ。精霊を召喚できるってことはすでに自分の魔力に干渉できてるってことだからね。召喚するときに感じる普段の自分では感じていないような感覚が魔力だよ。それに指向性を与えるのが魔術さ」

「あー、そう言われてみれば精霊出してるときは言い知れぬ感覚があったような……?」


 あんまり意識してなかったけどそんな感覚がしてた気がしないでもないな。あの感覚をこう、体内から探してみればいいのか?


 俺はとりあえず今まで見分してきたテンプレ主人公たちの最初に魔力を感じるシーンを思い出しながら目をつぶる。ここってラノベの世界だから参考文献としてはあながち間違ったものじゃなさそうなんだよなぁ。


 そんな益体もないことを考えながら鈴木康太郎時代に感じなかった感覚のようなものを探る。


 すると不意に今までかみ合ってなかった歯車が嚙み合うかのような感覚を覚えた。さっきから感覚というあやふやな単語を連呼しているが本当にそういうものなので仕方ない。もうちょい主人公らしいボキャブラリーが欲しいところだよなぁ!?それはさておき、この魔力というやつは妙な感覚である。


「うわ、多分これ魔力を認識するのに成功したんだろうけど、妙な感覚だわ。」


 具体的に言うと違和感が凄い。なんか自分の体にもう一つ心臓があってそれが不意に鼓動を始めたかのような違和感。ぶっちゃけ気色悪い。


「ああ、最初に魔力を故意に認識した時はそうなるよね。僕も気持ち悪かったなぁ」

「もう一個心臓が増えたみたいな?」

「それそれ。だんだん慣れるんだけど最初は怖かったなぁ」


 ニアが気の毒そうに苦笑いする。ああ、誰でもあることなのかこれ。


 でもそれは俺もきっと魔術を使えるようになるという裏付けになりやしませんかね!?いや、異世界産の魂が入り込んだ身体だからひょとしてその辺に不具合が出たのかと思ったがこの世界産のニアが同じ症状になるなら間違いなさそうだね。


 となれば次のステップだな。「魔力を感じたらそれの操作を覚える。具体的には魔力循環と魔力纏衣の練習に入るが吉」とノートには記されている。


 なるほど操作か。なら修練所に行ってみるか。コーデリア先輩のように魔術に関して師事を仰げる人がいるかもしれんし。間違っても剣は握らないが。


「ニア、俺はちょっと修練所に行ってくるけど一緒に来るかい?」

「いいけど、この時間帯は武器の貸し出しが全部出回ってる頃だと思うよ?」

「いや、魔術の稽古でもしようかと思ってね」

「じゃあ男子寮と女子寮の間にある中庭とかでいいんじゃないかな。修練場はごった返してるしたまに武器も飛んできて危ないって聞いたよ」

「じゃあそこにするか」


 善は急げとばかりに俺たちは支度を整えると部屋から出た。鉄は熱いうちに叩くもんだしな。


        ☆☆☆


「まばらだけど人がいるね」


 件の中庭にやってきたニアは少ないながらにも周囲にいる学生らを見てそんなつぶやきを漏らす。


「まだ夕暮れ前だしな。俺たちみたいに修練所の人口密度を想像してここに出てきたのかもしれないぜ?」

「みんな考えることは一緒か」


 見れば自前の武器を振りまわしている生徒もちらほら見受けられる。なんんという軍学生の鑑。というかみんな魔物から生き延びるのに必死なのか。早く平和になればいいんですけどねぇ。


 ……あれ、ひょっとして俺が世界を平和にしなきゃダメなんですかね?俺ってば何を間違ったのか主人公してるし。……考えないようにしよう!


「えっと、魔術を練習するんだよね?僕はどれかっていうと魔力纏衣の方が得意だからそっちならアドバイスできるかな。言うほど得意でもないけどね」


 主人公の宿命を自覚しかけて思考を封鎖したところでニアがそんな頼もしいのかそうでないのか判断がつかないことを言ってくれる。


「お、じゃあお願いしようかな?えっと、魔力纏衣の方が武具や身体を硬化させる魔術、だったよな」

「正解だよ。応用だと触れられるものに干渉できるから味方に硬化をかけて防御力を上げることもできるよ」


 味方に防御バフをかけられるということか。集団行動をとることもこれから増えるだろうし覚えておいて損はなさそうだ。


「で、魔力纏衣ってどうやるの?」

「まず、さっき感じた魔力の大本、スレイの言う二つ目の心臓から流れる魔力を意識して、その魔力を外に押し出すような感じだよ。それが魔力放出だよ。まずはそこからだね」

「……わかるような、わからないような」

「僕も最初はわからなかったさ。練習あるのみだよ!」


 魔力放出は魔力纏衣の前段階で体表に魔力を発生させている状態を指すらしい。その放出状態にある魔力に体表を覆うように指向性を持たせると魔力纏衣となるとジャックのノートには書いてあった。


 とりあえず実践だ。ニアの言うようにまずは体内に流れる魔力を意識する。相変わらず鳩尾の上あたりにあると思われる第二の心臓に大いなる違和感を感じるが頑張る。というか、これが俺の魂なんですかね?魔力は魂から溢れているらしいし。


 その魂から溢れた魔力が契約精霊の糧となるわけだ。ということはこの流れをたどると精霊石に繋がっていたりするんだろうか?気になって俺は魔力の動きをたどるように意識を傾ける。


 すると右手の中指、イアレットの精霊石があしらわれた指輪の辺りで魔力が若干揺らいでいるのを感じる。これは精霊石に魔力が供給されているからそうなっているのだろうか。


 気になって俺は左手をポケットにつっこんでリッキーの精霊石に触れる。そして今さっきのように魔力の動きをたどるとやはり魔力の揺らぎを感じた。

 

 なるほど。自分の魔力の流れはこれで把握できた気がするな。……この揺らぎ、もとの流れに戻したらどうなるんだろう?揺らぎを修正して正しい循環になるようにイメージしてみる。


 すると揺らいでいた魔力は外れていたレールに戻るかのようにきれいに道を描いて循環を開始する。精霊石への魔力供給が途絶えて不具合が起こる可能性に思い至って「正しい循環にする」という意識を切ると元のような揺らぎのある魔力の流れになった。


 あれ、意外にイメージどおりに操作できるな。


 で、ここから魔力放出に繋ぐにはこの今感じている魔力を外に押し出すように操作すればできると。えっと、ここまでイメージで出来てたからいけるか?


 再度意識して流れている魔力を体表の外へと押し出すようにイメージをすると、何かが身体から発露されているような感覚に陥る。魔力を体外へと押し出しているので魔力が流れている感覚は少ない。


「すごいよスレイ!魔力放出ができてる!そのまま身体を覆うように操作すれば魔力纏衣の完成だよ!」


 うおお、マジか。じゃああと一歩じゃねぇか。というかなんか俺から可視化できるオーラが出てやがる!?これが魔力ってやつなのか!こ、これは流れに乗って体得しないと!集中集中!


 奇跡のような集中力が途切れるのを恐れて俺はニアの賛辞に言葉を返すでなく、何度も頷くだけで返事をする。


 ニアに言われるままに漏れ出ている魔力が身体を覆うようにイメージすると、またしても歯車がかみ合うような感覚、中庭に出る前に部屋でやった魔力を認識した時のような感覚が身体に走る。途端に身体を覆う魔力がすべて俺の意識下にあるように指向性をもった。


 あ、ひょっとしてこれ、スレイの身体が思い出してんのか!?そうだとすればやたら体得が早いのも理解できる。でなきゃこの前まで魔力のない世界の住民やってた俺があっさり体得できるわけがないしな。


 あるいは俺がその辺に関して天才だったり?ないない。一番ないわ。俺は自他ともに認める普通のにわかオタクですよ。多少、メガネに関しては造詣が深いだけの。


「スレイ!魔力纏衣できてるよ!?記憶を失ってから初チャレンジでこれはすごいんじゃないかな!」

「おおお、やったのかニア!?なんか初めての感覚すぎてこれができてる状態なのかわかんないけど!」


 指導役を買って出ていたニアができてると言うのならきっとできているのだろう。俺にはなんとなくしか実感はないが。……本当に硬くなってるの?俺。


「危ない!避けてくれ!」


 魔力纏衣が成功しているのか若干疑問に思っていた俺の耳に不意に注意を促す叫びが聞こえた。何事かと思い振り向くと、実戦用の直剣が俺の腹部に向けて飛んできていた。そしてそれはどう考えても避けられるタイミングではなかった。


 見ればさっきまで熱心に素振りをしていた生徒が汗まみれの心底焦った表情で俺の方を見ていた。あー、汗で滑ったか何かで剣がすっぽ抜けたか何かですね?わかります。


 というか避けろと言われた時点で飛びのくなりしろよ俺!?まぁでも即死以外はハイセが何とかしてくれるし、とりあえず心臓だけは守るか。というかまた剣か。ほんと嫌い。


 若干割と大きな怪我に慣れた感のある俺は冷静にそんなことを考えながらとっさに腕を曲げて心臓の位置を護る構えをとる。飛んできた剣は俺の腹に当たった。軌道がずれて胸に当たる心配をしたが杞憂に終わった。


 もっと言えばハイセのお世話になるという考えすらも杞憂に終わった。


 腹部に当たったはずの直剣は硬質なものに阻まれたかのようにキンッという甲高くも短い音を残して地面に落ちた。


「スレイ、大丈夫!?」

「あ、ああ。何故か大丈夫だ。普通にまたハイセのお世話になるかと思ったんだけど」


 ニアが心配してくれたが俺には傷一つついてなかった。若干学生服がほつれている程度か。


 ……ひょっとして魔力纏衣のおかげ?え、マジで?結構な勢いで飛んできた剣をはじき返す防御力あんの?そりゃ必須技術とか言われるわけだわ。そりゃ模擬戦の白兵戦で使用を禁止させられるわ。訓練にならないもの。


 魔力纏衣すげぇ!?これだけで弱めの魔獣には勝てるかも!?いや、油断は禁物だな。まだまだ精進せねば。


 あと、フラグになるようなことは考えるのよそう……。この主人公体質、割とすぐにフラグ回収する体質にあるっぽいし。





またしてもブックマーク登録一件増えました!そして文章とストーリー評価まで!?

一層励みにして頑張ります!

次は10月23日の0時頃に投稿予定です!(`・ω・´)ゞ

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