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テンプレ主人公は偉大だった!?(プロト版)  作者: トクシマ・ザ・スダーチ
テンプレ主人公になっちゃった!?
49/62

学園都市探索④

49話です!

 無情にも男の本懐を遂げることができなかった俺とドジャーは次こそは、と涙を飲んで立ち上がった。先ほどと同じようにニア、ネーシャ、フィーネについていく形で歩いている。


 しっかしこうして街に出て改めて思ったが、うちの面々は主人公に近しい間柄のキャラだからか街ゆく人々たちと比べて美少女具合が頭一つ抜きんでているな。


 とりあえず駅を出てから今この瞬間まで観察するに男性は8割、女性は6割ほど彼女らの方を振り返っている。カップルが同時に振り返るパターンまであって結構面白い。ふふ、その美少女たち俺の連れなんですわ!


「なぁ、ところで兄弟。その、あー、なんだ」


 そんな俺にドジャーが話しかけてきたがなんだか歯切れが悪い。こいつは唐竹を割ったような性格でこんな風に物事を言いよどむのは珍しいキャラのはずだ。


「どうした。膀胱が限界か?それとも便意か?どっちにしても手早くしてくれよ。ほれ、あのちょっと薄暗い感じの路地裏とかおすすめだぞ」

「ちげーよ!もしそうだったとしても普通にどっかの店で借りさせてもらうわ!」


 やっぱりらしくないな。普段と違ってツッコミキャラまで演じている。いや、俺の受け答えがそうさせた感もあるけど。


「じゃあ一体なんだ?まぁ言ってみ?こう見えて俺ってば昔から頼られるタイプよ?」

「お前、ついこの間から記憶喪失じゃねーか」

「ついこの間とか大昔じゃないか。まぁそういうのいいから言ってみ?」


 歩くドジャーの周りをぐるぐると妙なステップで周回しながら俺は聞いてみる。だんだんとドジャーが鬱陶しそうな顔になる。うん。自分でも鬱陶しいと思うわ。やめてあげないけどね?


 しばらくお互いに沈黙状態にあったが、観念したのか、それとも鬱陶しさの限界点に達したのかやがてドジャーは若干顔を赤らめながら話を切り出した。


「その、だな…あの3人の中でお前って個人的にお付き合いしてたりしないの?」


 ……はい、ストップ。シンキングターイム。この質問の方向性と意図を考えてみましょう。こいつ、よりにもよっていろんな解釈できる質問してきやがって!とりあえずざっと考えてこの質問で予測される方向性はこんな感じだ。


・3人の中の誰かにアプローチをかけたい。事前に候補から外す人物を聞きたい。

・方や姉、方や男(本来の性別はバレていないはず)という前提から鑑みるにフィーネにアプローチをかけたい。しかしそう考えると唯一俺が恋人関係である可能性があるため予防線を張ってきた。

・ここでイエスと俺が答えた場合、恋愛のテクニック講座や猥談に持ち込める。そのための繋ぎの話題。

・ドジャーから俺への大胆(きもち控えめ)な告白。


 こうして見れば考えなくても、二つ目と三つ目が最も理性的で納得がいくな。まぁ、ドジャーは俺が言うのもなんだが抜けている面もあるので一つ目の可能性もなきにしもあらず。


 四つ目の可能性は自分で考えておいてなんだが、考える必要ないな。考えたくもない。なんでこんなこと考えたんだ?ネーシャとフィーネにあてられたか?なにそれ怖い。腐のオーラって男でもあてられるもんなの!?


 いや、そんなことはどうでもいいんだ。一言ドジャーに聞き返せば俺の疑問も氷解する。ここまでの思考全然いらなかったね。


「ドジャー、そいつはどういう意味だ?ひょっとしてお前、フィーネに気でもあるのか?」


 そう俺が質問したところ真っ赤な顔で驚愕の表情で固まっているドジャーがいた。2だったか。こいつ、わかりやすいな。しかしフィーネか。まぁ入学式という耳目が集まる舞台で見ず知らずの生徒を助けるために権力者に啖呵を切った男前な女子だもんな。確かに魅力的である。


 あれ、そのアルゴリズムだとミッシェルがドジャーに惚れている可能性があるんだが……?入学式に急ぐ町中、衆人環視の中に堂々と現れる悪漢。そこに見ず知らずにもかかわらず悪漢の前に立ちふさがってくれる二枚目。しかも式で糾弾された時もかばってくれた。


 ……こいつ俺より主人公してる件について。これ、ラノベ的視点から見てミッシェルは多分ドジャーに惚れてますわ。


 そして今更気づいたが俺、主人公っぽいことほとんどできてねぇな!?俺ができてる主人公っぽいことって美少女たちと知り合うことと、顔を広めることくらいしかできてねぇ。


 でも、ただのちょっとメガネ萌えなオタクにラノベの主人公やってみ?って言われても結構な無茶ぶりですやん?むしろ一般人メンタルで今日まで良くやってきたと褒められてもいいと思うんすよ。


 とまぁ、思考が滅茶苦茶逸れたが今は悩める男子ドジャーのことである。


「ん、まぁ、その…入学式のあの件から気になってたっつーか、な?」

「そんなことだろうと思ったぜ」


 一瞬ホモ疑惑かけたことは心の中で謝っておくわ。すまんな。


「で、実際そこんとこどうなの?お前ら出合頭に焼きトウモロコシ半分こしちゃうし…もう俺って全く望みない感じなの?」

「いや、俺とフィーネはただの幼馴染だ。記憶を失う前に深い関係にあったかは俺には怖くて聞けてないが現状俺たちは付き合ってるとかそんなんじゃない」

「なんだその微妙に残尿感のある関係。最大限ポジティブに取ってもアプローチかけにくいんだが…?」


 そう言われてもな。まぁでも普段のフィーネの態度から推し量るにスレイと恋愛関係にはないだろう。メタ的な視点から言わせてもらえばハーレム推奨テンプレ俺TUEEE系作品の主人公に最初から彼女がいる、という個性は合わない。物語の構成的にも重すぎる。


 よってフィーネは記憶喪失以前のスレイと恋人関係にあった可能性は極めて低い。でも幼少期にお嫁さんになるフラグくらいは立てていそう。


「まぁ兄弟。俺とフィーネは付き合っていない。重要なのはその事実だけで過去のことは関係ない。だから押せ。他の誰かにアプローチをかけられる前にお前がフィーネの好感度を独占しろ。俺から言えるのはそんだけだ」


 恋愛事は結局好きになった方が負けだからな。お互い好きあっているなら話は早いがそうでないなら追いかける労力がいる。これは結構エネルギーを使う上に圧倒的に努力が実らないパターンが多い。好かれる方は気楽なもんだが。


「お、おう。いかにもモテてますってイケメンにそんな力強く言われるとそういうもんかとも思うが、いいのか?」

「いいも悪いもお前からフィーネに対する好意は止まらないだろ?そして俺が何を言おうともお前が止まる理由はない。恋愛で止まっていいのは成功するなり玉砕するなり最終通知が来てからだ」

「……すっげぇ百戦錬磨なセリフに聞こえるけど、さっきも言ったけどお前つい先日から記憶喪失だよな!?なんなのお前の言葉の端々からにじみ出る圧倒的経験値!」

「数日あればこのくらいの経験値は容易に貯まる。イケメンだからな」

「イケメンすげぇ!」


 イケメンは置いといて、伊達にスレイやドジャーより年上やっていないからな。実は厳密に言うとネーシャより俺は年上なんだけどね。いや、でも彼女ってば包容力というか甘やかし上手だからいつの間にか甘えちゃうなぁ。


 年上の威厳?そんなもんは犬に食わせとけ。男は顔と愛嬌ですよ?少なくともこの世界ではそうであるとスレイが体現している。やっぱイケメンすげぇ。


「なんかやる気出てきたわ!けど俺、どうしたらいい!?全く会話してないんだが!」

「まずは自己紹介からだな。そこからお互いの好きなものや趣味を聞き出して次につなげる。だがいいか、押せとは言ったががっつき過ぎはダメだ。積極性は大事だがそれが過密すぎると追いかけられる側は気疲れするからな」


 その辺は男でも女でも一緒だな。積極的になりすぎて余ったエネルギーが高じてストーカーやヤンデレが生まれる。あいつらの行動力と言ったら目を見張るものがあるからな……。もし被害を被りそうならば自衛の手段を用意するが吉。警察はあんまり当てになりません。

 

「なるほどな。でも気疲れしてるならチャンスじゃないのか?獲物を追い込むときはつかれるまで待つのが狩りの基本だって親戚の兄ちゃんが言ってたぞ」

「おバカ。そんな時に押したらウザがられるだけだろ。最悪疎遠になっていくパターンだぞそれ。恋愛と狩りは似通う部分があるかもしれんが全部一緒くたにするな」


 その悪印象を一気に好感度に変える手法は存在するがそんなレベルの高いことはドジャー向きではない。そう考えると神兄さまはほんまに神だったんやなって。


「いや、でも親戚の兄ちゃんは割とモテる方だし、来年には彼女を連れてくるって豪語してたし……」


 そうまで言ったのにも関わらずドジャーはそんな言い訳をする。なるほど、自称モテる親戚のシンパか。まぁ、年下に尊敬されたい欲求はわかるがこのままではドジャーの恋愛レベルが低迷したままになる恐れがある。


 ここはドジャーの今後のためにもその親戚のあんちゃんには悪いがバッサリいかせてもらうぜ。


「ドジャー、俺の顔を見ろ。お前の親戚のあんちゃんは俺よりもイケメンなのか」

「い、いやそれは、兄弟の方がイケメンだと、思うけど」

「そうだな。俺よりイケメンはそうはいまい。で、その親戚のあんちゃんは俺とお前が遭遇した時みたく数人の女子を侍らせてたか?」

「い、いや、そう言えば女子とこういうことがあった、と自慢はされたが隣に女性がいたことはない……」

「そうか。俺の場合は今日一日こういうことがあったと語るだけで女子とのエピソードになる。しかも後日隣に証人となる女子を交えることも可能、だ。さて、ドジャーよ。イケメンでそれなりに経験がある上に目の前に事実を用意できる俺とあったかどうかもわからないエピソードを語る二枚目のお前の親戚のあんちゃん、どっちのアドバイスに耳を傾けるべきかわかるかな?」

「え、はい。イケメンの、スレイの、方です」

「よろしい!そうと決まれば善は急げだ。それとなくねーちゃんとニアをフィーネから引き離して距離を開けるからお前はその間隙を突いてフィーネに話しかけろ」


 親戚から受けていた影響をある程度抜いたところで俺はそう進言するとドジャーが目を白黒させる。


「え、そんないきなり!?いや、ちょっと心の準備とか、もうちょっと待ってほしいんだけど……」

「お馬鹿。今この瞬間しり込みしている間にフィーネがナンパされてそれに靡いたらどうする?お前はそうなったら何か行動を起こせるのか?断言しよう。お前はそこから動けない。よしんば動けたとしてもナンパに靡いた女をかっさらうなんて高等テクは初心者のお前には推奨できないぜ?」

「そんな状況を想定した技巧が存在するのか!?」

「イケメンに不可能はない」

「イケメンすげぇ!」


 ドジャーの瞳が輝きを増す。さっきまでしり込みしていたのが打って変わってやる気に満ちている。これはもうひと押しですね!


「別にいきなり階段をすっ飛ばして告白しに行けって言ってるわけじゃないんだ。自信を持て。お前は普通にいい男だ。普通にいい男が普通の話題を持ってきたらフィーネは普通に返してくれるはずだ。奇をてらう必要はない。俺と最初に会ったときみたいな感じで友好的に明るく接することを心掛けろ。気負うな。まずは友達になることを心掛けろ。理解したな?なら急げ。お前に無駄にできる時間はないと思って行動しろ!」

「わかったぜ兄弟!俺、頑張るぜ!」

「よく言った!それじゃあ手筈どおりニアとねーちゃんを切り離してくるからフィーネが一人になったところでお前は攻めろ」


 言うが早いか俺は行動を開始する。先行して和気藹々と会話している3人の方へ足早に進む。フィーネのポジショニングが右端だったので左端のニアに話しかけて徐々に引き離していくとしよう。


「なぁニア。ちょっと協力してくれ」

「あ、スレイ。どうしたの?」


 ニアに先ほどまでのドジャーとの経緯とこれからの計画を掻い摘んで説明する。


「というわけで俺たちがドジャーを導いてやろうと思う」

「へぇー!ドジャーがフィーネちゃんに?そうなんだ!こう、なんだか我が事のようにドキドキわくわくするね!」


 こういうところを見ると年相応に少女してるよな。でも男子として振る舞うのはストレスを感じたりしないのだろうか?俺が逆の立場なら毎日冷や汗流すこと請け合いだが。……たまにに息抜きをさせてあげるのがいいかもしれんね。


「で、この今の状況からねーちゃんをフィーネから引き離すことができれば自然とドジャーが会話できる状況ができるわけだ」

「なるほど。じゃあネーシャさん呼んでくるね」


 その方法を今からいっしょに考えようと思ってたんだが言うが早いかニアはそのままネーシャに声をかけて何事もなくこちらのグループに引き込んだ。当然、フィーネは孤立している。


 あ、こんな簡単に引き離せたか。いや、勢い勇んでああは言ったものの全く引き離す方法考えてなかったんだよな。手間が一つ省けたわ。


「弟君。何か用?」

「ん、ああ。今まで回った屋台でどこが一番おいしかったか話し合いたかったんだ。ほら、妹ちゃんと食べ歩くとしてもこう、数が多くちゃすぐお腹がいっぱいになっちゃうじゃん?」

「なるほどね。うーん、私はねー」


 食べ歩き談議に花を咲かせ始めたところでドジャーが動いた。


「あ、挨拶がまだだったよな。俺はドジャー・バグナー。入学式ではその、助かった」

「気にしなくてもいいのに。あたしはフィーネ・ルナマルソー。よろしくね」


 簡単な自己紹介の後に二人は世間話を始めた。ちらちらとドジャーが目線をこちらに向けてくるのでサムズアップついでにフィーネに集中しろ、というジェスチャーを送る。


「弟君、どうかしたの?」

「いやいやなんでも?でさ、俺的には串焼きが最強だと思うのよ」


 頑張れ、ドジャー!



本日は間に合いました!(笑)

明日10月17日も0時投稿予定です!

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