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テンプレ主人公は偉大だった!?(プロト版)  作者: トクシマ・ザ・スダーチ
テンプレ主人公になっちゃった!?
31/62

王国病院へ

31話です。

 慌ただしくそれぞれの教室に戻り、地獄のような睡魔と戦いながらなんとか乗り越えた授業初日、その放課後がようやく訪れた。放課後。なんと甘美な響きであることか!


「やっと終わったって感じがするぜ」

「お疲れ様。スレイ」


 俺をニアが優しくねぎらってくれる。ニアってばマジ天使。今なら「実は男でした」ってカミングアウトされても多分余裕で受け入れられるわ。


 午後一番の授業は基礎体力実習という、いわゆる筋トレだった。憑依して一日経って大分スレイの身体の動きにも慣れてきたこともあり、スマートにトレーニングが出来たのだが、続く精霊化学という授業で心地よい疲労感に包まれて何度も瞼を落としそうになったが気合いで居眠りだけは避けた。もちろん授業内容は全く頭に入っていない。後でニアにノートを借りよう。


 それはともかくとして放課後である!学生が一日の内で一番ウキウキしちゃうタイムだよな!しかも隣には美少女(男装してるけど)!ウキウキも二倍!ウキウキウキウキだぜ!


 とはいえこれから買い食いに乗り出すわけでもない。会長からもらったもう一枚の紹介状を消化しに病院へと足を運ぶ予定なのだ。


 俺はもちろんとして学園都市に来たばかりのニアも地理に疎い。なので病院までの道のりを知っているネーシャと玄関で待ち合わせしているのだ。フィーネもついてくるかと思っていたが何やら用事が出来たらしく一緒には来れないらしかった。残念である。


 俺たちは既に靴に履き替えてネーシャ待ちの態勢である。そして程なくして待ち人は現れた。


「お待たせ!弟君、ニア君」

「今来たばっかりだぜねーちゃん」


 出会い頭に俺とネーシャはハグし合う。役得役得。やはり周囲の視線を感じるがそんなものこの姉パワーの前には無力!姉パワーとは何かって?説明しよう!無条件で甘えたくなるお姉さんキャラ特有のパワーのことなのだ!弟キャラは骨抜きになる代わりに役得を得られるというすんごいパワーである。


「また抱き合ってる…」


 ニアが所在なさげにやれやれとこっちを見ている。これはいけない。ニアが真っ当な男キャラなら論外だが、美少女でルームメイトな彼女を仲間外れにするのは俺の良しとするところではない。


「ニアも混ざるか?」

「うぇ!?」

「私もニア君ならウェルカムだよ!」

「うぇぇ!?あ、いや、その、え、遠慮しときます…」


 ちょっと興味あったみたいだが理性が勝ったか。いずれはもっとスキンシップの多い友好関係に仕上げたいものだ。


「そいつは残念だ。さて、ねーちゃん。そろそろ病院行こうか。案内を頼むよ」

「うん!お姉ちゃんにまっかせなさーい!」


 どちらからともなくハグを解除した俺たちは一路王国病院を目指して歩み始めるのだった。


        ☆☆☆


「こいつはたまげたぜ」


 目の前の機械的なオブジェを目にして思わず声が出た。


 病院までどれくらい歩くのかな、と考えていたのだがネーシャによるとどうやら学園から病院までの直通の汽車が出ているらしい。


 汽車ってあの汽車か?と訝しんだが百聞は一見にしかずと言うことで学園敷地内にあった駅にやってきた俺は前時代的なデザインではあるが確かな存在感を放つ汽車を目にしてアホみたいに目を剥いてるわけだ。


「弟君汽車初めてだっけ?あ、忘れてるのかな」

「いや、知識としては覚えているけど、びっくりした」


 その技術力に。これは今は馬車がまだ普及しているだけであってもう既に車は開発されていたりするのではないだろうか。や、でも地球でも車より先に汽車が出来たんじゃなかったか?ならこの発展は順当なのか?ちょっとその辺は定かではないが。


 話を戻すとどうやらこの汽車は実技実習中に重傷者が出た場合などの対応としての一手を担っているらしい。ライフラインを繋いでいるというのは理にかなった話で、学園側の本気度合いが窺える。というか普通に金かけ過ぎだろ。


「しかしあれだな。ひょっとしたら噂の学園都市を歩けると思ったんだけどな」

「いけないこともないけど遠回りになっちゃうよ弟君。寮の門限に間に合うかも怪しくなるから仕方ないの」

「そっか。まぁ週末にはみんなで出かけるわけだし、お楽しみにしておくのがいいんだろうな」

「週末が楽しみだね、スレイ」


 楽しそうに笑うニアを見て頬が緩むのを感じる。可愛いは正義だな。


「それじゃあ乗り込もうか」


 そうネーシャが言うと汽車に乗り込んで手近なボックス席の窓側に座る。それに倣って俺も乗り込んでネーシャの隣に座った。最後にニアが向かいの窓側に座って俺たちの搭乗は完了した。


 座り心地のいいフカフカのソファーが俺の身体を押し返すようにたわむ。貴族が座るからか?なに?貴族は快適に過ごせなきゃ死んじゃう生き物か何かなの?


「そういえばネーシャさん、この汽車ってお金かからないんですか?」

「大丈夫だよニア君。この汽車に限らず学食以外の施設は学生証を持っていれば全部無料で利用できるよ」

「それはありがたいですね!」


 この学園設備整いすぎてちょっと怖いな。あれか。魔獣が攻めてきた時の拠点や避難所みたいな側面もあるのかもしれんね。

 

 ちなみに学生証は入学時にもらえるゼルヴィアス学園の校章が掘られたピンバッチである。これに専用の呪文を唱えると持ち主に向かって光が伸びるので本人確認が出来るのでらしい。すごい技術だ!?かなりファンタジーっぽいぞ!尚、昼飯はマグロ丼の模様。


「定時を迎えました。間もなく出発します」


 駅員さんが定時を告げると汽車が出発した。徐々にスピードが上がっていく。


「俺の記憶では初めて汽車に乗ったわけだけどこんなに快適なんだな」

「僕が乗ってきた馬車より数段良いソファだよ、これ。素材とかすごくお金かかってるんじゃないかな。…その辺の貴族の椅子より豪奢なんじゃ?」


 なんかニアさんが遠い目をしていらっしゃる。確かにこのソファは素朴で飾り気のない造りでありながら気品を感じさせるデザイン、そして思わず唸るこの機能美を感じさせる。かなりの一品に違いないと素人目にもわかるものだった。


「最新技術が集う中央だしね。ここ。たしか理事長さんがこだわり屋で退役までに貯めた私財に糸目をつけずに注ぎ込んでいるらしいよ」


 思い出すように言うネーシャ。いくら稼いだんだ理事長さん。というかそんなに儲かるもんなの?戦績によっては学園を経営するレベルまで稼げるもんなのか。ということは力に目覚める予定のスレイの経済的な未来は明るいな!こう、スレイの魅力で落ちない美少女は金をちらつかせてハーレム入りを促すスタイル。…夢が広がるな!


「そういえばその代理を生徒会長さんがしてるんでしたね。今理事長ってどこで何してるんですか?」

「なんでも他国の姉妹校に顔を出してるんだそうだよ。視察ってやつじゃないかな。遅くても3月には帰ってくるみたいだよ」


 ニアの何気ない疑問に補足まで加えて教えてくれるネーシャ。物知りである。やっぱりゼルヴィアス王国以外にも国あるんだね。というか他国まで経営の手を広げてるの?名も知らぬ理事長さんってば一人だけ権力インフレしてない?


 ちなみに路線は違うが周辺3ヶ国にも線路が引いてあるらしく、国際交流は意外にも迅速らしい。


 しかし3月か。今が1月の半ばだけど理事長が帰ってくるまでは会長は結構大変なんじゃないだろうか。気が向いたら何か手伝いに行ってみるのもいいかもしれない。


 そんな風に他愛もない話題を二転三転させていると御者の人が目的地の到着を知らせてくれた。いやー、女子と楽しくお話ししてると時間が経つのが早いね。


 汽車はゆっくり速度を落としながら王国病院前駅に着いた。その名の通り駅の裏手に目的地の王国病院がそびえている。傷病者を乗っけてくる駅の近くに病院があるのは理にかなってるな。


「私が先に降りるね」


 ネーシャが汽車から降りると同時に懐から取り出した学生証を駅員の人に渡す。それに倣って俺とニアも学生証を渡すと駅員の人は何事かぶつぶつ呟く。すると学生証から光の線が発生し、それぞれの胸元に繋がった。評判どおりの現象である。


「はい。本人確認は終了だよ。出かける前に時刻表を確認してね。門限はきっちり守るようにね」


 学生証をそれぞれに返して定型文的な注意をして駅員さんは汽車に乗り込んで去って行った。


「それじゃあ行こうか!」

「「はーい」」


 ネーシャの一声に俺とニアは同調する。まぁ気合いを入れたところで病院はちょっと歩いてすぐなんですがね。



また明日の0時に投稿します。…ぼちぼちさらに投稿頻度が落ちるかもです(;´・ω・)

本日仮面を巡る物語の終章にあたる三部作目のゲームが発売されることとは全く関係がありません。ありませんったらありません。

↑本日発売かと思ったら取り置き日が今日までだった件。

やだ、私ってば情弱杉内…?

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