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テンプレ主人公は偉大だった!?(プロト版)  作者: トクシマ・ザ・スダーチ
テンプレ主人公になっちゃった!?
25/62

テンプレにおける情報屋は大体知りすぎている

25話です。

 ニアが俺の変な部分を見習う宣言をしたところでジャックが帰って来た。一仕事終えたかのように額に浮かんだ汗を黒いハンカチで拭っている。額はよく見ると少し赤らんでいる。


「本当になんなのだあの女は。何もないところで盛大につんのめるわ、それに吾輩を巻き込むわ、1組に放り込んだと思ったらいつの間にか後ろにいるわ……。何が『まだ1組につきませんですか』だ。もう着いたのに案内役の帰り道に着いてくるなどもう痴呆の域ではないか……」


 あの額の腫れたような痕はそのときのものか。ということは顔面転けしたのか…?会って数分だがこのすらっとした怪しい印象の男が顔から転倒する姿が想像できない。そんな彼が恐れる存在の遅刻少女ミッシェル。一体何者なんだ…。


「なんというか、そいつはお疲れだな、ジャック」

「あぁ、同志ベルフォード。あれは難物だぞ。本当に…む?お前はドジャー・バグナーだな?丁度いい。今後あれの対応はお前に一任する。忙しい吾輩は最早あれの相手をする暇がない」

「誰だお前?何の話をしている?」


 急に水を向けられたドジャーが疑問を口にする。


「そいつはジャック・ジェラード。2組の一員だ。昨日式でアミーゴといっしょに遅れてきた女子がいただろ?あの子の世話を任せたいんだそうだ」

「あー、あの子か」

「いや、世話はしなくてもいい。吾輩に近づけさせるな。あの今何をやっているのか自分でもいまいち見当がついていなさそうな女の他人に世話を焼かせる才能は天賦のものだ。吾輩でもあらがえん。それでは業務が滞るのでな」

「業務?」

「吾輩は学園の附属初等部の頃から情報屋をやっている。自称だがな。時間をとられる、それすなわちその時間で得られた情報を逃すということだ。その点に関してあの女は吾輩の天敵と言える」


 あー、テンプレ学園ものでほぼ必ずクラスにいる情報通キャラか。何かと便利に使われるポジションだな。なるほど、それでストーカーまがいのようなことをしているのか。


「貴様らも何か知りたいことができた時は遠慮なく吾輩に言うがいい。相応の支払いは覚悟してもらうがな」

「金でもとるのか?」

「それは客としてきた時に説明してやろう」


 俺の疑問にジャックはニヒルに笑って答える。もったいぶるじゃないの。


「時にベルフォード。貴様記憶を失っているというのは本当のことか?」

「耳が早いな。さすが情報屋」

「なるほど。どうして仕入れた前情報と悉く違った態度をとるのか疑問であったがそれなら納得がいくな。しかし興味深い。こうも人が変わるものなのか?」

「…ちなみに前の俺ってどんなやつだったの?なるべく詳しく教えて欲しいんだけど」

「ふむ。本来なら対価を要求するところであるが、初回サービスでタダで教えてやるとしよう」

「そいつはありがたいね」


 ちなみにスレイの所持金は金色の硬貨が3枚、銀色の硬貨が6枚、銅色の硬貨が8枚、が入っていた。事前に貨幣価値を聞いておいたとは言えどれだけのものが買えるかは市場を見たわけではないので今のところ定かではない。まぁでも結構持っている方ではあるはず。


「さて、記憶を失う以前の貴様の話であるが、東の国境の守護を任される対魔戦闘の筆頭、ベルフォード辺境伯家の次男が貴様である」


 ほうほう。うちってばお国から国防の任を担ってるのね。まぁ辺境伯ってつくくらいだしなぁ。


「家族構成は祖父母、父母、兄、姉、妹がそれぞれ一人ずつの8人家族。祖父母は別荘地で隠居、使用人は70名。全員に戦闘能力があり、有事には騎士として活躍する」


 軍事力もあるのか。しかしその戦力は多い方なのか?あまりミリタリーな分野は詳しくないからわからん。それにしても家族の情報がダダ漏れな件について。それともこの世界の情報統制ってこんなもんなのかな?


「以前の一人称は僕。身長は166cm、体重58kg。年齢15歳。誕生日15月の20日」


 んん!?身体的プロフィールがばっちり知られている!?いや、でもスレイは有名人らしいしこのくらいは周知されている可能性はある。というか15月?この世界のカレンダーどうなってんの?


「ちょっと待ってもらえるか?悪いんだけど暦のこと教えてくれない?というか今日は何月の何日なの?」

「記憶喪失とはそういうことも忘れてしまうのだな。一週間が5日で一ヶ月が20日、一年が18ヶ月だ。今日は王国歴664年1月12日だ」


 つまり一年は360日か。地球と周期は大体同じってことでいいのかな?しかし一週間が5日とか誕生日が15月とかカルチャーギャップがすごいぜ。


「さて、話を戻すか。森羅万象の事象を砕く摂理破壊の精霊と熱を操る精霊を従えており、入学試験での実技成績一位という実力者。その実力からベルフォード辺境伯家の神童、摂理破壊の支配者、理を穿つ者等、総計13にもなる二つ名で畏怖されていた」


 二つ名多いわ!みんなの心に名を刻みすぎだろ!これまでのスレイは一体何をしていたんだ!?


「性格は穏やかで悪く言えば優柔不断であるが、自分が信じる正義が傷つけられるときは抜群の決断力を持って行動する。顔は線の細い中性的で整った顔立ちをしており、少し垂れ気味の目が母性をくすぐる。そんな貴様は当然モテモテであるが、朴念仁で奥手であるが故、女生徒からの過激なアプローチを受けることも多々あった。それを顔を赤らめるというように初な反応を見せるものなので女生徒どものそのアプローチも大胆となり、毎日ふしだら一歩手前の日々を送っていた」


 なんてうらやまけしからん日々を!「スレイ」は潜在的な俺の敵だった…?


「精霊術の行使だけでなく、剣術の腕も学生のレベルを超えており学園期待の新人だった。その後入学式前に校門をくぐったあたりで記憶は失われ、ある意味貴様の第二の人生が始まったというわけだな」


 これが最新の情報だな。一体どんな情報網を持っていればそんなことがわかるのか。


「好きな食べ物は鶏肉のロースト。甘いもの全般も許容範囲。好きな女性のタイプは公言してはいないが優しく、控えめな性格の女性だと吾輩は分析していた」


 なるほど。スレイの好みはそんな感じだったか。鳥もいいが肉類なら俺は豚が好みだな。俺も甘いものは得意だ。


 好みの女性のタイプは、そうさな。メガネが似合う女子かしら?似合っていれば性悪だろうが妙齢だろうが女児だろうがイケるぜ。前に祐司から「ストライクゾーン広すぎィ!?」と言われたことがあるがそんなことないよなぁ!?


「精通は4年前」


 ん!?せいつ…え、ちょっと!?


「湯浴みから上がったほこほこの姉の裸体に偶然遭遇したその夜のことであるな。なかなか貴様も業が深い。日々の自慰の回数も多かったようだな。まぁあれだけ同年代の女子からアプローチをかけられては仕方あるまいな。吾輩が知っているのはざっくりこれくらいだ。さらに詳しく聞きたいか?ここからは別料金になるぞ」

「お前こえぇよ!」


 なんでこんなに個人情報に詳しいの!?俺のこと好きなの!?


「せいつー…。じ、自慰…」

「ニア、そこ拾わなくていいから!」


 顔を赤くしながらニアがうつむく。こいつ初な反応するだけで実はむっつりなのでは。


「何、心配するな。基本骨子たるプロフィール以外、特に性格においては今の貴様との齟齬が激しいため無価値な情報となっている。とてもではないが売れる情報ではないな。信用に関わる」

「心配するよ!それ要は情報を更新して売れる情報なら売るってことじゃねーか!」

「本当に察しがいいなベルフォード。頭が荒れ地でもすくすく育つ植物のような女や取り巻く空間ごと時間の間隔が狂っているとしか思えない女に貴様の爪の垢を煎じて飲ませてやりたいところだ。おっと、お前の爪の垢なら一定層に需用があるな。指を貸せ。ほじくってやろう」

「業の深い層もいたもんだな!?あとほじくるとか想像するだけで痛い話しないでもらえますかね!」


 ジャック・ジェラード、確かにこいつは要注意人物だ…!



次話は明日。また8時投稿予定です。そろそろペース落ちるかもですw

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