やはりイケメン主人公は最強らしい?
ゲリラ投稿です!
21話です。
リンゴーン、リンゴーンという聞く人によればけたたましい音と共につんつん、と頬を枝か何かでつつかれるような感触。
何事か?と身体を起こすと、ニアがにこにこといたずらが成功した子どものような無邪気な顔をしていた。タイミングが良かったのか悪かったのか彼女の人差し指が起き上がった俺の頬に浅くめり込んでいた。
「おはよう、スレイ。ふふ、びっくりした?昨日僕を散々からかった罰なんだよ」
おはようございます。今朝、世界で最も幸せな朝を迎えたスレイ・ベルフォードこと鈴木康太郎です。こうして目が覚める、ということはどうやら昨日の出来事は特に俺の暴走した自意識が見せる幻覚でも何でもなかったってのが証明されちまいましたね。
まぁ夢の中で睡眠を取るとかわけのわからない状況のような可能性もあるわけだが。終わらない明晰夢とかだったら割と悪夢だ。
しかし本来は女子と一緒に寝るという素敵イベントだったはずなのに昨日はお互いに疲れが溜まっていたらしく特にドキドキハプニング(おそらく死語)もなく二人して熟睡してしまうとはこれは主人公的にどうなんですかねぇ?
やっぱりこうして接近したからにはなんぞラブでコメコメなことしとかないと沽券に関わると思うんですわ。だから今夜はどうなるかわかんねぇなぁ!?
まぁそれは置いといて。
「おはようニア。今日も可愛さがとどまるところを知らないな」
さすがテンプレラノベヒロイン。寝癖も完備。豚のツボを押さえた小憎らしい演出だ。昨日から全然テンション下がらんわ。
「も、もう!すぐそうやってからかう!僕は今男の子なんだよ!学園でそんなこと言ったら、えっと困るんだからね?わかってる?」
どうですかこのヒロイン力。テンプレラノベ(笑)とかもう言えませんよ。しかもこの子実体があって触れられる上に自分で考えて行動するんですよ。凄いでしょう。
とりあえずニアの頭をこね回すように撫でる。いやぁ、いけませんねぇこの感触。髪ふわっふわ。何時間でも愛でてられるわ。
「どうして頭を撫でるのさ!」
「いや寝癖がついてたみたいだったから」
「え、ほんと?ごめん。ありがと」
断言しよう。人生で一番幸せな朝であると。
「さっきの鐘の音、学園の中でも聴いたな。もしかして時報だったりする?」
「あぁ、忘れてるんだね。そうだよ。今さっきのは起床の鐘だね。一日の始まりを告げる鐘さ。次の次に鐘が鳴った時くらいにこの寮を出れば余裕を持って学園に行けるよ」
昨日学園まで往復して測ったのさ、とニアは得意げだ。かわE。
「なるほどね。それじゃあ、ぼちぼち支度しますか」
「うん。じゃあ着替えてくるね」
寝癖が直ったニアは「お着替え」してくると言ってトイレに籠もった。俺がトイレに籠もろうかと提案しようとしたがよく考えたら俺の任意のタイミングで出て行けるな、と思い直し断念した。彼女に窮屈な思いをさせるね。
まぁでもやっぱり隙あらばちょろっと覗きたくなるのが男のサガだよねぇ。スカートがヒラヒラするのを目で追いかけちゃったりするのは男にとってもう習性みたいなもんだから女子の皆々様には是非寛大な理解をして頂きたいところですな。
とりあえずトイレの扉を眺めてみるが特になんとかなりそうな都合のいいのぞき穴的なものはなかった。もちろんここまで一連の行動は冗談だが。
自重しろって?それは無理よ。思春期男子の身体を得て俺の、いやスレイのボディーが女体を求めているのだ。(なすりつけ)結局自制してるんだから許してくれるよなぁ!?というかそもそも俺もスレイもそう年齢変わらんわ。一番エロい時期だわ。
ちなみにこの世界のトイレ、元いた世界でもよく見た白い陶器製の水洗便所です。寮までの道すがらに溝もマンホールも見かけたので下水等はバッチリのようだ。
それはおいといて、俺も着替えるとしよう。正確な時間指定はなかったとは言え、あまりもたもたして幼なじみと姉を待たせるのも忍びない。こう、何事も五分前の精神を心がけたいところだよな。
昨日、ドジャーと別れて部屋に戻る最中に実家から送られてきているという日用品が入ったアタッシュケースをエバン寮長から受け取った。ケースの数は二つで、中には歯ブラシや櫛、学生服二着にその他諸々が入っていた。おそらく私服であろう服も数着入っている。
昨日はシャワーを浴びてケースに入っていた星柄のパジャマに着替えて寝た。ニアからかわいいとお墨付きを頂いた一品だ。まぁパジャマに対しての発言か、それを着こなすスレイがかわいいかは定かではないが。俺としては後者に一票投じたいところだ。
そういえばシャワーやら蛇口やらは現代日本の一般常識的な形状だったな。やはりこの世界の技術力水準は結構高そうだ。ちなみにこの部屋の風呂はユニットバスである。しかもこの学生寮、地下には大風呂があり、他の寮生と親睦を深めることができる場まである。
ちなみにニアの昨日のお着替えはシャワー後のまったりタイムだったらしくシャワー音にドキドキイベントはありませんでした。(血涙)
ぶっちゃけネット・ゲーム・テレビがない点以外は日本にいた頃の俺よりいい暮らしができるレベルである。なんだこの学園…。
そんなことを考えながら俺は着ていたパジャマを脱ぎ、アタッシュケースから取り出した制服に袖を通す。高校を卒業してまた学生服姿になろうとは思いもしなかったな。
そういえば俺も寝癖ついてたりしないだろうか。ニアに指摘しておいて自分が粗相するとかちょっとかっこわるいしな。俺は備え付けかニアが持ってきたかは定かではない姿見に自分の全貌を映す。
「……誰だこの美少年?」
透き通るような空色の瞳、少し伸びた亜麻色めいた艶のある髪、少しだけ垂れ気味の目元が母性をくすぐるようだ。顔の線は細く、それなりに着飾れば女性に見えるであろう線の細さを醸し出している。
姿見に映るそいつは当たり前だが俺の動きを寸分違わずに真似た動きをする。当然だが、そいつは俺だった。アニメのスレイを3次元化した姿と言った方がいいか。いずれにせよ鈴木康太郎の顔面偏差値を大きく上回ることは間違いない。
というか、この顔で俺ってば昨日からはっちゃけてんのか。でも確かに俺が女子ならこの顔で持ち上げられたりからかわれたりしたら惚れてしまうかも知れない。
原作どおり優柔不断な振る舞いをすれば母性をさらにくすぐり、俺のような魂が入っても見た目と雰囲気のギャップで女子はやられちまうわけか。やっぱイケメン最強じゃねぇか。顔面偏差値低ランカーに慈悲はないですか。そうですか。
顔面の格差社会にいずれ救いが訪れることを祈りながらパジャマのズボンも脱いで新しい物を穿こうとしたところでカチャ、と短い音がして戸が開く。
「着替えた……よ?」
もちろんニアである。既に支度を済ましてトイレから出てきたらしい。着替えるの早いな!よし、とりあえずあれだ。
「きゃあああ!ニアさんのえっち!すけっち!わんたっち!」
俺は露出度が上がっている下半身はそのままに胸を掻き抱く格好で羞恥に悶えるフリをする。こんな仕草もイケメンに映るのだろうか。もう少しイケメンらしく振る舞うべきだろうか。
「君にだけは言われたくないよ!?じ、事故だから!他意はないから!は、早くズボン穿いてよぉ…」
顔を真っ赤にしながら目を逸らす美少女。えぇなぁ!たまりませんなぁ!俺がイケメンだとかそんな話が如何に女子の愛らしさの前に無意味かがよくわかる。
しかし本当に朝からいじりがいのあるルームメイトである。
本日はここまでです。次話は明日も一話は投稿予定ですがちょっと予定が定かではありませんw
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