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テンプレ主人公は偉大だった!?(プロト版)  作者: トクシマ・ザ・スダーチ
テンプレ主人公になっちゃった!?
18/62

テンプレ主人公とその仲間たちの順応力は異常

18話です。

「うー、君はえっちだね。なんでずっと見てるのさ」

「そりゃ見るだろ!」

「そんなに力強く!?」

「見るだろ!ごちそうさまでした!」

「えっち!変態!」

「ありがとうございます!」

「なんでなじられて喜ぶのさー!」


 ようやく服装を整えた謎の美少女が顔を真っ赤にしている。まぁ最後まできっちり着替えを見られたらそうなるのも頷けるか。うむ、眼福でござった。


 完全なる男子生徒姿となった彼女は、なるほどかわいらしい顔をしているが一目で性別の区別はつかない。胸元が真っ平らなのも手伝って初見ならまず女性とは見破れない出で立ちとなっている。


 マジで胸どうなってんだ。スポブラでも着けてたらちょっとは膨らむだろ…。


 それはさておき、中性的な顔立ちに「僕」という一人称と言えばこの俺、鈴木康太郎ことスレイだ。彼の身体を間借りしているとはいえ俺も今はスレイの一部。ここは彼のためにもあのぺらっぺらな胸ぐらをひっつかんでガクガク揺さぶりながら「キャラ、被ってんだよ…!」とでも脅しをかけておくべきだろうか。


 もちろん冗談だが。いやー、一流のフェミニストを目指すこの俺っちがそんなマネしやせんってばさぁ。


「君、変なこと考えてない?」


 男装美少女がジト目で俺を見ている。やべぇ。サブカルでお馴染み、美少女の謎エスパーも完備か。導かれてるな俺。


「いんや全く」

「ほんとにー?」

「ほんとほんと」

「ならいいけど」


 男装女子はそう言いながら尚も訝しげな視線を送ってくるが気にしない。それよりもっと気にしなきゃならんことがある。


「で?なーんで女の子が男子寮に入寮してるんだってばよ」

 

 俺は勝手知ったるという具合に備え付けのベッドに座ってそう尋ねる。彼女は「てばよ?」などと呟いて小首をかしげるが気にしない。

 

「それは、ちょっと話すと長くなるけどいいかな」

「え、それってどれくらい長くなる?そういえば朝から飲まず食わずなんだが」


 実は意識が俺に切り替わってからは一口も何も食べていない。ひょっとしたら「スレイ」は朝食くらいはとったかもしれないがそれは知るよしもない。


 入学式が昼前に終わってそれからすぐさま決闘、会長に気絶させられて起きたら魔人化疑惑をかけられる、なんてこともあって既に陽は暮れかかっていたりする。俺ってばお腹ペコちゃんなのだ。


 魔人審問の件で精神も疲れていたが着替えイベントに遭遇してそんなのは吹っ飛んだ。我ながら現金な性格をしている。それともこれもスレイと混じり合った影響なのだろうか。


「ええ?じゃあ寮食堂行く?この時間なら人もまだいないだろうし」

「普通だったらまだ小腹が空くくらいだもんな。食堂でがっつりって人は確かに少ないか。じゃぁ、行ってみるか」

 

 俺たちは連れだって寮の食堂へと移動することにした。階段近くにあった寮内マップからその位置を読み取ると、ロビーの奥側に行ったところが食堂になっているらしかった。


 その作業過程で俺ってば言葉だけでなく、文字も読める系の主人公であることが発覚した。これは文字が書けるかどうかも実験だな。他の国の文字とかも試したいところである。


「なんでにやけてるの?」

「ん?にやけてた?」

「うん。ばっちり。…ひょっとしてさっきのこと思い出してた?」

「いや、そんなことは考えてなかったけど、一生忘れられない思い出にはなったな」

「忘れて!忘れてよ!もう!」


 男装女子はそう言ってプイッとそっぽを向く。こいつかわいいな!


 おいおい。テンプレ作品(笑)とか思ってたが体験するとなると見方変わっちまうな!


 いや、この男装女子に始まった話じゃないがこの世界の顔面偏差値のレベルおかしい。会長、ネーシャ、フィーネ、あとジャガイモさんはもちろんのこと、すれちがうモブすら鈴木康太郎のいた世界のレベルを大きく上回る。


 こう、感覚的には外国人と日本人の中間点で若干外国人寄りの顔立ちといえば伝わるだろうか。早い話キャラクターの完全三次元化だ。


 完璧なコスプレイヤー達がその辺を闊歩してると行って過言ではない。まぁ俺は魂とか人格以外は完全にスレイ・ベルフォードのコスプレなわけだが。中身の完成度低すぎィ!


 そんな世界に放り込まれてみろ。多少のバッドイベントじゃあテンション下がる事なんてありませんぜ?鈴木康太郎時代なら自制していたあれこれ(乳揉み、着替えガン見)を抑えられないのは自明の理ってやつだ。あれだ。多分主人公補正というやつだ。乳ッ!揉まずにはいられないッ!ってやつだ。違うか。


 どうでも良いことを考えている間に食堂に到着した。予想どおり食堂には人影が少ない、というか調理師だけがせっせと仕込みをしている最中であった。


「らっしゃい。坊ちゃんらが今日の最初の客だよ。何にしようか?」


 顔に十字傷のある厳ついおっさんが腕を組んで真っ白な歯をみせて満面の笑みでカウンター越しに俺たちに話しかけてくる。正直怖い。どうでもいいけどここまでのおっさん全部キャラが濃い件について。ラノベの世界だから仕方ないよなぁ…。このおっさんも在隊期間とかあって十字傷のエピソードとかあるんだろうか。


「僕は軽めにサンドイッチでも貰おうかな。コーヒーもお願いします」

「俺はそうだな。なんか腹持ちの良いのをガッツリいきたいかな。メニューはお任せで」

「じゃあカツ丼定食がいいな。待ってろ。すぐ用意する」


 そう言うと十字傷のおっさんは大声でメニュー名を叫びながら厨房に引っ込んでいった。後から山びこのようにメニュー名を女性の声が復唱していた。


 異世界に来た気がしねぇな!?サンドイッチは周りの連中の顔立ちが西洋気味なのもあって許容できるがカツ丼があるのは驚いた。作者のその辺の設定ガバガバかよ。


 カウンターから覗ける限り厨房を見てみるとコンロみたいな物に大鍋をかけてグツグツ何かを煮込んでいる十字傷のおっさんがいた。


 コンロ、あるのか。改めて見ればこの世界の技術力は結構高い。部屋の照明はソケット電球だし、学園にはでかいモニターもあった。そういえばこの寮もマンション造りだし。もしかして日本よりも技術が上なんだろうか。あ、でもそれならコンロじゃなくてIHとかになるか。うーん、一度町に出てみないと判断つかないかもな。


「あ、料金はどこで払えばいいんだ?」

「寮食堂では寮生は無料だよ」

「マジか!それは知らなかったぜ」

「君って結構お坊ちゃんなの?寮食目当てで入寮する生徒も多いのに」

「世間知らずは今日死ぬほど味わったな。俺ってば赤子と変わらん」

「あはは。それは言いすぎなんじゃない?」


 いや、確かに赤子並、ってのは言い過ぎでもその辺の幼児より世間を知らない自覚あるわ。異世界よちよち歩きだわ。


「サンドイッチ盛り合わせとカツ丼定食、後コーヒーおまちどぉ!向こうの奥の席から詰めて座ってくんな」


 オーダーしてから3分待たずに品がそろってトレイに乗っけられてきた。仕事早い。やはり学食のようなローテーションを組んでいるのだろうか。


 トレイを受け取って男装女子と連れ立って指された席に向かい合うようにして座った。カツ丼の香りで強烈に食欲がわいてくる。


「先に食事にしよっか。食べながら喋ると僕、のどに詰まりそうになっちゃうんだ」


 彼女なりの気遣いなのだろうか。そんなに腹減った顔してただろうか。おっと、口の端が濡れてやがらぁ。じゅるじゅるうへへへ、危なく粗相をするところだったぜ。(手遅れ)


「じゃあお言葉に甘えて」


 とりあえずできたてでほっかほかのカツ丼を掻き込むように俺は食らいついた。独特の出汁がカツに染みこんでいて口の中にじゅわっと広がる。同じく出汁を吸った米もまた絶品である。米もどうやら世界を跨いでも同じようなものらしい。いつも食べているものと差異がないと感じる。強いていえば甘みが強い。


 スレイみたいな線の細いイケメンがカツ丼をガツ食いする状景って客観的にどう映るんだろうか。まぁ気にせず食べますが。マナー?自分記憶喪失なもんで。


 というか今気づいたけど和製食器多くない?得物は箸だしトレイの上はお椀がほとんどだし。定食の内容もカツ丼、味噌汁、刻みキャベツに唐揚げである。調理師のおっさん日本人説浮上。でも男装女子の食器はきっちり西洋物だ。


 やがて定食を食べ終わり、備え付けの束ナプキンから一枚拝借して口元を拭う。そのタイミングで男装女子が俺のトレイにお冷やの入ったコップを置いてくれる。こいつ、できる…!気遣いができる女性はポイント高いですよ。


「すごい食べっぷりだったね。女の子みたいな顔してるのに」

「それ、お前が言っちゃうの…?」


 男装女子にこんなセリフ言わせちゃうとか相当導かれてるぞ俺。


 彼女のトレイにはすっかり湯気の収まったコーヒーと手つかずのサンドイッチが二切れ残っていた。想定より量が多かったのだろうか。


「じゃぁ、えっと、そういえば自己紹介がまだだったね。僕はニア・セルリアン。内緒だけど一応貴族さ」

「俺はすず…じゃなくて、スレイ。スレイ・ベルフォード。しがない学生さ。よろしく。ニア」

「よろしくスレイ!ん?スレイ?スレイ・ベルフォード!?ベルフォード辺境伯家の神童!?摂理破壊の支配者!?理を穿つ者!?」


 どうやら思ったよりスレイの二つ名の数は多いらしい。これ将来絶対黒歴史確定なやつだぜ…。


次話は17時投稿です。

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