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真・恋姫†無双 ~緑に染まる黒の傭兵~  作者: forbidden
拠点フェイズ5.益州にて其の三
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拠点フェイズ5.朱里、雛里

騎馬隊の調練をすると、気分爽快だ。

黒鉄に揺られながらそう思った。


自分の動きに合わせてついてくる全身を震わせる馬蹄の響き、戦を思わせる土煙──日々のデスクワークの鬱憤も晴れるというものだ。


午前の調練を終えてきたところだ。

今日は成都から離れた原野で騎馬隊の大きな調練を行った。

武器は持たずに、騎馬のみで敵を攪乱する調練だ。

相手も騎馬だ。

歩兵だと蹄にかけてしまう。


敵方の騎馬隊が予想できない動きと攻撃をして、敵がついてこれないようにする。

例えば、騎馬隊の方向転換が厳しい方向からの突撃。

これを敵が予想できないように突撃しなければならない。

あとは勢いで相手を圧倒する。

恋の騎馬隊なんかが特にすごい。

恋自身が先頭で突っ込んでくる騎馬隊は敵にいたら驚異と思うくらい、恐いものだった。

俺はだいたい前者でやる。

敵の予測のつかないところからの突撃。

要するに奇襲だ。

騎馬が扱いにくい林からの奇襲、入り組んだ岡の裏からの奇襲などだ。

無論、敵も奇襲をしてくる可能性はある。

だから敵の位置を逸早く把握しなければならない。

敵の位置を知り、敵の予測を上回った突撃をする。

敵の予測を上回るのは奇襲の基本だ。


「やっぱ恋がおると話にならん。恋の勘の鋭さは神懸かってるんやから」


霞も馬に揺られ、口を尖らせながら愚痴った。

恋は首を傾げている。


「本能的なものでしょ。諦めなよ。俺だって恋にも勝てないし、他のみんなに劣るよ」


「雛斗の遠慮癖が出たよ。雛斗の奇襲は恋以外には見破られなかったじゃねーか」


苦笑して言った俺に翠が呆れながら言った。


「たんぽぽなんて、雛斗相手だと手も足も出ないくらいだぜ」


「雛斗さんの奇襲は別格だよぉ。霞姉さまの奇襲だって厳しいのに」


蒲公英も霞と同じように口を尖らせる。


「せやけどたんぽぽの騎馬隊の速さは翠にも劣っとらんと思うで。流石、涼州の騎馬隊やな」


「えへへ。霞姉さまに誉められちゃった♪」


蒲公英が嬉しそうに言うけど、お世辞じゃなくてホントの話。

涼州の騎馬隊は話にならないほど速い。

俺や霞、恋の騎馬隊も劣ってはいないはずだけど、白蓮も含めた翠、蒲公英は馬と共に生きてきて、どうも速さではあちらに一日の長がある。


「ひ、雛斗さん。黒鉄さんは大丈夫でひょうか?」


後ろから噛んだあわあわした声が聞こえる。


「大丈夫だよ、雛里。黒鉄はそんなやわじゃないよ」


馬にまでさん付けする雛里に苦笑いする。

雛里は俺の背中に抱き付いて黒鉄に乗っていた。

今日の調練を見学しに来ていたのだ。

朱里は歩兵の調練を見に行ったと思う。


「雛里こそ大丈夫なの? うっかりして落ちないでね」


「だ、だいひょうぶれす」


馬の揺れに慣れていないのか、噛み噛みだけど。

まあ、舌を噛まないなら平気かな。


「軍師ちゃんも馬に乗れた方がええんとちゃう? 移動がめっちゃ楽になるで」


「そ、その時は雛斗さんにのせへもらいまさゅ」


舌足らずながら必死に言う。


「黒鉄が走ると舌噛むかもよ。乗り慣れてないと」


「が、がまんします!」


我慢でなんとかなる問題じゃないと思う。


「たんぽぽが教えてあげよっか? お姉さまたちだと血反吐吐くかもしれないよ」


「たんぽぽ、それどういうことだ!」


「だってお姉さまが馬の乗り方教えると容赦ないんだもん。たんぽぽの時だってそうだったじゃん」


まあ、翠はそういうイメージはあるね。

騎馬についてはこだわりありそうだからなぁ。


「……あの、雛斗ひゃん」


「ん?」


「お馬さんの乗り方、おひえてくれませんか?」


「あ~。……暇な時ね」


そう言うと雛里は俺に巻き付ける腕を強くした。

雛里が馬に乗るか……案外骨が折れそうだなぁ。

雛里が馬に乗る姿を想像して苦笑した。

たぶん、無理なような気がしたからだ。

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