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真・恋姫†無双 ~緑に染まる黒の傭兵~  作者: forbidden
拠点フェイズ5.益州にて其の三
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拠点フェイズ5.霞

「ひ~な~と~」


間延びした声と共に扉が開いた。


「霞、扉叩くなり何なり断ってから部屋に入ってよ」


書簡から顔をそらさずに言った。


昼過ぎの俺の部屋だ。

今日も朝から晩までみっちり仕事が詰まっている。

昼飯食べたら休憩してすぐデスクワークだ。

対して霞は今日は休みだったと思う。


「別にええやん。ウチと雛斗の仲やろ~」


扉を閉めた音がしてから、背中に柔らかい感触と共に綺麗な腕が後ろから俺の首に回された。

霞の顔が俺の顔の真横にある。

思わずドキッとした。

そしてアルコールの匂いが鼻を突いた……って。


「霞……昼間っから酒?」


「えへへ、バレた~?」


横の顔を見ると既に出来上がっているらしく、頬は赤く染まっていた。


「そんなんより、ウチとイチャイチャしよ!」


「無理。今日は仕事」


完全に酔ってるね。


「ああん、雛斗のいけず~。そんなん言わんといてぇ」


霞が頬擦りしてきた。

霞の温かくて滑らかな頬が心地良い。

うぅ、ドキドキが止まらない……。


「あのねぇ……今日はやめてよ。裁かなきゃいけない書簡、沢山あるんだから。卓上のだけじゃなくて、卓の横にも」


頬が赤いと思うけど構わず言った。

説得力ないけど。


「ええやんええやん、ちょいと休憩せえ」


すると霞は俺の首を抱いたまま引きずり込み、無理矢理俺を寝台に倒れ込んだ。


「うぇっ。けほっけほっ!」


「ああ、すまん! ダイジョブか?」


霞が俺の首を擦った。

それが妙にくすぐったい──て言うか霞、顔近い近い!


「ん……雛斗の匂い、ええ匂いや。ドキドキしてくるわ」


「変なこと言わないでよ、霞。こんな真っ昼間から……」


霞につられて俺も心臓の鼓動が速まる。

霞が俺の胸に顔を寄せた。


「んん……はぁ……。雛斗の匂い、ウチ好きや。ドキドキするし、ホッとする」


「……霞こそ、すごい良い匂いがするよ」


「当たり前や。香水つけて来てんのやから」


ああダメだ、あてられた。

頭じゃ止めろと言ってるのに、もう身体が言うこと聞かない。


霞の柔らかい髪に鼻をつける。

嫌がる様子はない。

霞も俺の胸に頬擦りしてくる。

身体が火照ってくる。


「聞こえる……雛斗の心臓の音。めっちゃどっきんどっきん言ってる」


「霞のせいだよ……」


「その気になってくれた?」


「ならない方がおかしいよ」


霞の身体を抱く。

互いに互いを求め合う。

本能の赴くままに。


「なあ、雛斗。……ウチ、したい」


霞が俺を見上げてくる。

その儚げな表情に胸が締め付けられた。


「霞……」


「雛斗……」


互いに見つめ合って、真名を呼び合って、そして顔を近づけた。


コンコンッ


「「っ!?」」


霞と俺はばっと寝台から離れた。

流石霞だ。

あんな状況でも反応よく動けるなんて。


「雛斗、ちょっと良いか?」


この声は愛紗か。

霞と違ってノックしてかつ、すぐに部屋に入らないで断りを入れている。


「あ、うん。ちょっと待って」


「……愛紗ぁ、よくも邪魔してくれたなぁ」


頬がまだちょっと赤いまま俺は扉に向かい、霞は吐き捨てながら寝台の後ろに隠れた。


「すまない、雛斗。ちょっと相談したいことがあってな」


扉を開けるとちょっと書簡を抱えた愛紗が立っていた。


「良いよ。入って」


「邪魔をする」


(ほんま、邪魔しはる……)


霞がそう思っていることだろう。


「そこの卓にでも書簡置いて」


「ありがとう」


普段仕事に使っている卓の隣にある、書簡を置く用の小さい卓に書簡を置いてから愛紗は書簡を一つ取った。


「なにか問題でもあった?」


書簡机について一人座るのも悪いと思って立ったまま愛紗の持つ書簡を覗き込んだ。

霞とはまた違う、甘い良い匂いがした。


「ああ、軍の再編案についてだが──」


───────────────────────


「悪いな雛斗。助かった」


相談を終えて愛紗が申し訳なさそうにしながら部屋を出た。

四つ、五つくらいの相談を受けたくらいだ。


「……霞、良いよ」


「…………」


「……霞?」


霞の返事がなく、首を捻った。

寝台に膝をつきながら寝台の後ろを覗き混む。


「うわっ!?」


いきなり霞が飛び出してきて、俺を寝台に仰向けに押し倒した。


「邪魔もんはいなくなった。やっと雛斗と二人きりや……」


霞が既に頬を赤くして言った。

酒のせいか──いや、それだけじゃない。


「ゴメンね」


「別に気にせえへんよ。雛斗はウチとイチャイチャするの、待ってくれてんやから」


「…………」


赤いまま笑みを浮かべる霞に思わず見とれてしまった。


「ほな、邪魔されたお預け……しよか」


霞の顔が近づく。

俺も目を閉じて霞を待った。


コンコンッ


「「!?」」


また霞が寝台から離れた。

押し倒されてた俺は一息遅れた。


「雛斗さん。ちょっとご相談が」


雛里の声だった。


「……なんや、今日はそう言う日なんか?」


霞から諦めるような呟きが聞こえた。

うん、寸止めってすっごい切なくなる。


「ちょっと待って」


霞が寝台の後ろに隠れるのを確認してから扉を開いた。


「申し訳ありません。朱里ちゃんたちと相談して欲しいことがあるんですけど、お時間はありますか?」


と、なると時間のかかる相談みたい。


「…………」


霞が無言で落ち込む様が見えるようだ。


「──わかった。場所はどこ? ちょっと書簡整理してから行くから」


「場所は──」


雛里が場所を言ってから頭を下げて部屋を出た。


「……ゴメン、霞」


「はぁ……謝ることあらへん」


霞が呆れたようなため息をしてから言った。


「霞、夜まで我慢してくれる? これじゃ切りがないし、俺の仕事が終わらなくなるから」


「……あんな寸止めしといてどんだけお預けすんねん。せやけど、しゃーないなぁ」


「ゴメンね」


───────────────────────


がちゃ


「ふぅ……疲れた」


タオル──この時代はタオルのこと、なんて言うんだろう──で頭をがしがし拭きつつ、俺の部屋に入った。

外はすっかり日が落ちて真っ暗だ。

霞が俺の部屋を出てから風呂に入るまで、ずっと仕事漬けだった。

雛里たちの内政に関する人員の相談、部屋に戻ってデスクワーク、街で華蝶仮面が現れ駆り出され、戻ってデスクワーク。

華蝶仮面──星だけど、馬鹿騒ぎは程々にして欲しい。

で、何とか今日のノルマを終えて風呂に入ってきた。


「霞はまだ来ないか……」


あれから別れた霞が気がかりだった。

霞には悪いことしたと思ってる。

霞も仕事はちゃんとこなして、非番の日は羽を伸ばしたいはず。

それで俺のところに来てくれるのは嬉しい。

俺も、その……霞とイチャイチャしたいし。

──俺も一刀のこと言えないな。


「疲れたし。……ちょっとだけ、横になるかな」


そう呟き、机にタオルを置いてから寝台に座って横になった。

あ、やばい……眠たくなってきた。


サッ


「っ!?」


ギシ


ドサッ


「うっ」


いきなり布の擦る音が聞こえ、反射的に転がって寝台の後ろに転げ落ちようとしたら両肩を押さえつけられた。


「へへ……待っとったでぇ」


目の前に霞がにやりと笑みを浮かべていた。


「し、霞……」


「流石は雛斗やな。ウチが出てくるのに気づいて、寝台の後ろに隠れようとするなんてな。せやけど、相手が悪かったなぁ」


霞が喉を鳴らすようにくっくっくっ、と笑う。


「霞には敵わないね……。俺が風呂に行った辺りから潜んでた訳ね」


「おろ、気づいとったん?」


「気づかなくてもそれくらいは分かるよ。ついでに言うと、風呂入ってきたね?」


「おっ、わかる?」


「うん。髪ちょっと濡れてるし、香水とは違う良い匂いがする……」


ちょっと意識しただけで頬が赤くなった。


「ウチかて身だしなみは綺麗に整える。そう言う雛斗やって、風呂入ったし……」


霞も意識したのか頬が赤くなる。

自然と心臓の鼓動が速くなった。


「霞、肩離してよ。俺……」


「わぁっとる。雛斗もお預けされとったもんな……」


霞が笑みを浮かべて俺の肩から手を離して、俺に倒れ込んだ。

ふわっと霞から清潔な良い匂いがした。

霞の柔らかく、熱い身体が密着する。


霞の背中に腕を回した。

霞も俺の首に腕を回してくる。


「……雛斗の胸、どっきんどっきんいっとる。ウチの胸に伝わってくる」


「霞こそ。俺にも伝わってるよ……」


霞の豊満な胸にも関わらず、心臓の鼓動が俺の胸に伝わった。


「すぅ……はぁ。……雛斗の髪、ええ匂いがする」


「霞もね。すぅ……はあ……」


互いに身体や体温だけでなく、匂いすらも求め合う。

明日も仕事あるのに……霞だって仕事があるはずだ。


「んむ……はむっ。ちゅ……」


「ん……んちゅ。んん……」


でも、構わない。

今夜は霞と一緒にいたい。

霞が求めてくれてるし、俺も霞を求めているから。

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