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真・恋姫†無双 ~緑に染まる黒の傭兵~  作者: forbidden
第十一章.忠臣の誓い
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お留守番

俺と星が益州に戻ってまた一月経った。

曹操と孫策は想定通り、それぞれ西進、南下政策をとり勢力の盤石化を開始した。

こちらに目は向けてはいるだろうけど、体は向けられない今が期だ。

こちらも南中への侵攻を画策した。


「現在、曹操さんと孫策さんは、自分たちの勢力を広げることに腐心しています。これは来(きた)るべき決戦に備えてのことでしょう」


定例会議の席で朱里が今後の方針について、切り出した。

大陸の情勢は今、大きく三つに集結している。

群雄割拠の時代は袁紹や袁術を始め、まだ勢力はあった。

それが三つになった、つまり乱世も終結に近づいている。

曹魏、孫呉、そして蜀漢。

この三つの勢力のどれかが、天下を掴む。


「今、この時機にどれだけ多くの領土を手に入れられるか。その一点こそかわ勝敗の分かれ道かと」


「それで南征?」


朱里の言葉に桃香が訊いた。


「先の戦で分かった通り、精強な五胡と戦うには時間が足りない。かといって、北には曹操。東には孫策がいる。俺たちが領土を広げるなら南しかないからね」


俺は肩を竦めてみせた。


「でも、南にある南蛮って国のこと、鈴々は良く知らないのだ。どんなとこなのだー?」


「南蛮は暑く、密林が生い茂り、故に虫が多く生息する場所です。未開拓の地域と言っても良いかと」


隣に座る氷が言った。


「うぇ~……虫が多いって。そんなとこ行きたくないよぉ」


「なら行くな。おまえの分の功名、ワタシがもらっておいてやろう。貴様は成都で一人でブルブル震えておけば良い」


「……誰があんたなんかに譲るもんですか。胸ばっかデカイだけの筋肉バカにね」


「なにぃ!?」


「…………」


俺がちょっと蒲公英を見ると、蒲公英の表情がちょっと動いて開きかけた口をつぐんだ。

それを見て焔耶は訝しんだけど、俺の視線に気づいて焔耶も黙り込んだ。


「……雛斗、なんかしたん?」


「この前ちょっと怒った」


「雛斗も怒る時もあんやなぁ」


氷を挟んで座る霞が意外そうに言った。

急にいつものケンカを止めたことに皆は拍子抜けしたけど、すぐに一刀が場を仕切った。

一刀は俺が怒ったのを見たからね。


「とにかく南蛮の情報が少ないとは言え、南方の村が頻繁に襲われてる今、悠長に時を費やしてる場合じゃないと思う」


「お館様の仰る通りですな。近頃、南方の村々では桃香様に対する不満が出ていると聞く。……このままでは不味い」


一刀の言葉に桔梗が苦々しげに言った。


「民の不満を霧散させるために、南蛮を制圧せねばならんか……」


「しかし勝ち目はあるのでしょうか……?」


星の言葉を聞いてから紫苑が考えながら訊く。

相手の状態や状況が分からないため、どう動けば良いか事前には分からない。

情報不足は兵法に反している。


「敵勢の情報が不足している今、勝ち負けを予想することは出来ません。だけど……多分、大丈夫だと思います」


雛里が強気に言った。


「ああ。俺たちは強い。……曹操、孫策の次ぐらいにはね」


「まあ、慢心は良くないけどね。今考えられる事態に対してどれだけ準備ができるか、不覚の事態に対してどれだけ柔軟に対応できるか──そこが勝利の分かれ目になるかな」


一刀の言葉に続けて俺が言った。


「あ、雛斗さんには言ってなかったけど」


「なんでしょう?」


桃香が思い出したように言った。

なんだろ。


「今回の出陣、雛斗さんは出なくて良いからね」


「……え?」


思わず間抜けな声が漏れた。


「い、いやそうはいかない! 折角槍直してきてもらったのですから! 皆が出て俺が出ないのは」


「いい? 雛斗さん。雛斗さんは働き過ぎ。槍を直してもらって帰ってきてから一月、ずっと働き詰めだったじゃない」


「それは蜀のためを想って」


「そのくらい我々だって分かっている」


愛紗が俺の言葉を遮る。


「ただ前からずっと言っているが、雛斗は我々にとってなくてはならない存在。少しは息を抜いてもらわなければ、こちらの息が詰まってしまうではないか」


「けどもがっ!?」


何か言い返そうとしたけど後ろから誰かが口を塞がれた。


「それに、密林じゃ騎馬は活かせないだろ? だから私と蒲公英だって残るし」


「ぷはっ……す、翠」


後ろから口を塞いできたのは翠だった。

俺を呆れたような顔をして見下ろしている。


「え? たんぽぽそんなこと聞いてなもがぁ!?」


(アホぅ! ここは話合わしとき!)


蒲公英が何か言おうとして霞に口塞がれてる。

翠が今作ったのか、今の話。


「でも相手の数もわからないから、武将もそんなに割けないでしょ?」


「だからと言って、ここに誰かが居(お)らんと本城ががら空きになってしまうだろう? お主と翠に蒲公英。それと氷を置けば内政も軍事も回るだろう」


桔梗の締めの言葉に何も言えなくなる。

確かに残る人もいなければならない。

曹操と孫策がこちらに方向転換しない、とも限らない。


「……皆がそこまで言うなら留守番するけど」


「なぁに。我らもすぐに終えて戻ってくる。雛斗はのんびりしながら待っていてくれれば良い」


星がどこかホッとしたような笑みを浮かべていた。

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