仲直りの旅
「雛斗さん、今のうちに槍を直してきてもらったら?」
定例の会議で桃香がいつも通りにこにこしながら言った。
五胡を撃退して氷たちへの救援も無事に成功して一月が経つ。
西方と南方の蛮賊に警戒しつつ、内政に力を入れていた。
曹操、孫策共に勢力の強化を図ってそれぞれ西進、南下を画策しているようだ。
こちらに手を出す気配は今のところない。
「確かに曹操と孫策が侵攻する様子が見えない今、行くのはちょうど良いとは思いますが」
「仕事なら私たちに任せてください。徴兵は今のところありませんし、あとは私たちでも判断できますから」
雛里もにこっと笑いながら言う。
「──まあ、武器がないと皆と本気で打ち合えないしね。お言葉に甘えようかな」
武器ないと本職の戦で本調子出ないし。
「折角だから星ちゃんと行ってきたら?」
「えっ……!」
桃香の言葉にちょっと俯いていた星が顔を上げた。
槍がないのは、星と打ち合った時に破損してしまったからだ。
だから最近の星は元気がなかった。
「それが良いな。雛斗は今本気出せない訳だし、星がお供なら心配ない」
一刀も桃香に同意した。
きっと皆星のことを気にかけていたんだろう。
書く言う俺も気になっていた。
「……恋も行きたい」
「阿呆! 恋はウチと雛斗の部隊の調練を受け持つんや! 雛斗のいない間のな」
恋の呟きに霞が慌てて諫めた。
俺と星の二人きりにしよう、て言う魂胆は見え見えだけど今はありがたい。
「頼むよ恋。俺の部隊をよく知ってる将軍の一人なんだから」
「……雛斗がそう言うなら、やる」
俺の言葉で恋が引き下がってくれた。
「じゃあ決まりだね♪」
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黒鉄の傍らに立った。
会議のあった翌朝だ。
星も白馬を連れている。
城門の前に皆がお出迎えしてくれた。
「星、雛斗をよろしく頼むぞ」
「……任せておけ。雛斗には指一本触れさせんさ」
まだ覇気がないけど、愛紗にそう返した。
「雛斗、お土産頼むで」
「……まあ、なんかあったら探してくるよ」
霞に苦笑した。
「じゃ、行ってくるよ」
「いってらっしゃい♪」
桃香はいつもにこにこしてるね。
それを見て、また苦笑して俺は黒鉄に乗った。
武器を直せば、星は元気になるはずだ。
でも、俺はその前に武器のことは気にしてないと言うことを伝えたい。
この旅の中で。
目指すは幽州。
廬植先生の元だ。




