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真・恋姫†無双 ~緑に染まる黒の傭兵~  作者: forbidden
第九章.臣従と蛮勇の族
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黒龍の拠り所

定期会議の日だ。

いつも通り、俺は書類を持って会議の部屋に入った。


「おはようございます。黒薙様」


いち早く俺に気づいた黒永が挨拶してきた。

すでに朱里や雛里などの軍師陣は席に着席している。

席は先に来た人から好きに座る。

俺はいつも、一刀や桃香を主席として正反対の端っこに座るけど。

左利きだから端っこに座らないとメモをとる時、右利きの人と肘がぶつかるからだ。


書類を眺めているうちに各面々が会議室に集まってきた。


「いよいよ、言うんやな」


霞が黒永を挟んで席に座った。

黒薙軍の将士も劉備軍の仕事を受け負うことが多くなってきた為、霞なども会議に参加するようになった。


「うん。霞たちには悪いと思うけど」


「ウチは雛斗と一緒にいれるんやったらなんでも良か」


霞、そんなこと真顔で言わないでよ。

恥ずかしいからさ。


やがて、全員が集まって会議が始まった。


「雛斗さん、軍事の報告をお願い」


内政関連の報告が終わって、軍事に回ってきた。

桃香の言葉に立ち上がる。


「はい。今実行中の徴兵計画ですが、予定通りの数は集められるでしょう。それぞれの配置の数は……」


すらすらと各将軍に配置する予定の数を挙げていく。


「……流石ね、雛斗さん。綺麗に均等に兵士の割り振りがなされているわ」


紫苑が感心したように言った。


「しかし翠、蒲公英の騎馬隊、そして霞、恋、俺の騎馬隊。これらは兵は揃えられますが、馬を買い揃えるのはまだ時間がかかりそうです。特に俺たち黒薙軍の騎馬の消耗が激しいことから費用もだいぶかかります」


曹操軍との対戦で二万だった軍が八千にまで減ったのだ。

元は恋が一万、俺と霞が五千ずつだったのを均等にするため俺が八千、恋と霞が六千ずつを率いるようにした。

その減った一万二千のうち半分は俺の部隊の兵だ。

騎馬も半分は失っている。


「騎馬は揃えたいところですが……財政的に厳しいかと思われます」


「できるだけのことはしますが、雛斗さんの言う通り難しいと思います」


俺の言葉に朱里が考える様子で答えた。


「馬自体を揃えることはできますが……」


「駿馬は揃えられない、か……」


朱里の濁した言葉の続きを呟いた。


「雛斗さんの部隊は特に奇襲や強襲に特化した部隊です。翠さんたちもそうですが、やはり機動力は高くしたいです」


「奇襲、強襲は速さと威力……突破力が不可欠です。できるだけ駿馬で揃えたいところです」


朱里と雛里の言う通り、奇襲や強襲は速さと威力が無ければならない。

相手に気付かれぬうちに敵陣を攻撃しなければならないからだ。

そして混乱を強める為の威力。

やはり馬は駿馬であって欲しい。


「馬の購入には俺が行こう。できるだけ値切れるように交渉してみる」


「私も行くよ。西涼の良い馬商人はだいたい知っている」


俺の意見に翠が言った。

西涼に住んでいた翠がいてくれれば心強い。


「わかりました。馬の目標数を後で提示してください。できるだけ予算を出せるようにします」


朱里はそう言ってまた考え始めた。

頭の中に予算案はあるのだろう。


「それと……桃香殿に、いや、劉備軍全員にお願いがあります」


「なにかな? 急に改まっちゃって」


桃香も首を傾げた。


「今や、黒薙軍は劉備軍の一部として見られています」


「それはそうであろう。桃香様たちが徐州にいた頃から客将として付き従ってきたわけだからな。そう見られても仕方あるまい」


桔梗が言った。


「傭兵として雇っていただいて、今は仕事も任せてくださる。もう客将という立場ではいられない、と考えました」


「雛斗……ということは……」


星が気づいたかのように目を見開いて俺を見た。

それに小さく頷いて見せた。


「桃香殿、一刀殿、そして劉備軍のみんなにお願いしたい。どうか、俺たち黒薙軍を劉備軍の末席に加えてくれませんか? 客将としてではなく、劉備軍の一臣下として」


それを言ったら黒薙軍の将士以外の全員が驚いた。


「え……ほんとに良いの、雛斗さん?」


桃香が目を見開いたまま訊いた。


「黒薙軍の将士全員も承知しています」


「……俺は歓迎するよ」


一刀が最初に言った。


「ご主人様の言う通りだ。雛斗たちは私たちにとって、今やなくてはならない存在になっている」


「鈴々もお兄ちゃんと愛紗に賛成なのだ!」


愛紗や鈴々も一刀に続く。


「無論だ。雛斗が我らの仲間になってくれる。これ以上望むものはありますまい」


「……仲間、か」


星の言葉に呟いた。

いつだったか、霞が言ってたな。

雛斗に似とるな、て……確かに似てるかもしれないね。

俺と劉備軍。


「みんな、反対なんてないよね? 雛斗さん、私たちの仲間になってくれるよね?」


臣下ではなく、仲間として。


「……もちろんです」


桃香たちの仲間に。

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