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真・恋姫†無双 ~緑に染まる黒の傭兵~  作者: forbidden
拠点フェイズ3.益州にて
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拠点フェイズ3.愛紗

「ん、んん~……はぁ……」


大きく伸びをして息を吐いた。

背中の草が柔らかい。


昼を過ぎた頃だ。

昼御飯も食べ終え、城の庭に来ていた。

今日は日柄も良く、木陰の木漏れ日が身体に当たって温かい。


今日、俺は仕事は休みだった。

一刀のお目付けなどの多くの仕事を持つ愛紗。

そのうちの軍事の仕事の大半を俺が請け負っている。

本来なら俺は客将で仕事は調練と街や城の警備くらいだ。

愛紗に少しでも楽をさせてあげて、と桃香と一刀に頼まれ俺は軍事の仕事を無理矢理もぎ取った。

愛紗は最初こそ抗っていたけど、俺が強く言うと諦めて俺に仕事を預けてくれた。

その時の愛紗はちょっとホッとしたような顔をしていた。


今の劉備軍は益州を制したことにより、大勢力になった。

それだけ仕事も増える。

軍事も然り。

軍備の増強と内政の充実。

この相反する二つを上手く折り合っていかなきゃいけないから、かなり複雑で難しくなる。


だから桃香と一刀に休みをもらえて嬉しかった。

ここ最近、一日丸々休みという機会はなかった。


「はぁ……こういう休みは嬉しいな。今日はゆっくり昼寝をさせてもらおう……」



そう一人言を呟き、軍略書をそばに置いて目をつむった。


───────────────────────


「雛斗の奴、どこに行ったんだ?」


城壁の日の眩しさに目を細めながら呟いた。

私は雛斗を探していた。

雛斗の部隊の騎馬の供給のめどがたったから、その報告を桃香様に頼まれたのだが……何故か雛斗は部屋にいなかった。

確か今日は調練はないはずだから幕舎にはいないと思うのだが……。


「愛紗さまではありませんか」


不意に後ろから声をかけられて振り向いた。


「亞莎か。なんだ、ここに来て」


声をかけたのは亞莎だった。


「私はちょっと休憩に空気を吸いに来たんです。愛紗さまは?」


「私は雛斗を探してるんだ。雛斗に騎馬の増強のめどがたった、て伝えにな」


「それは雛斗さまも喜ばれると思います。雛斗さまは確か今日は一日中休みだったと思われますが」


「なに? 珍しいな」


雛斗はいつも、昼御飯以外は自分の部屋か幕舎で仕事か調練に立ち会ってる姿しか見ない。


「桃香さまと一刀さまが雛斗さまを気遣ってのことです。雛斗さまは御自身の部隊の調練と軍事のお仕事もあって、一日休みなんてほとんどありませんでしたから」


桃香様も益州の主になられたのだから、軍事の仕事も増える。

それをほとんど一身で受ける雛斗が大変なのは雛斗が劉備軍に来るまで仕事を受け持っていた私には良くわかった。

雛斗には本当に助けられている。


「じゃあ雛斗は街か?」


「私にはわかりませんが、黒永さまならご存知なのでは? 雛斗さまと一番長く一緒にいらっしゃるのですから。黒永さまは御自身の部屋で仕事をしていらっしゃいますよ」


確かに、雛斗のことを一番知ってるのは黒永だろう。

雛斗が洛陽にいた頃からずっと一緒にいるのだからな。


「わかった。仕事の邪魔することになるが、ちょっと訊いてみることにしよう。ありがとう、亞莎」


「いえ。お仕事、頑張ってください」


───────────────────────


「……本当にいたな」


ちょっとあきれて私は呟いた。


(「黒薙様ですか。今日は休みですからね。どこか静かで緑に囲まれた場所で、くつろいでいらっしゃるのではないかと」


「静かで緑に囲まれた場所?」


「はい。お庭などは探されましたか?」)


と、いうわけで庭に来てみたら本当にいた。

雛斗は庭の木の下に仰向けに寝転がっていた。


「……寝て、いるのか?」


足音をたてないよう、ゆっくり近寄った。


「……すー……すー」


「ふふっ。気持ち良さそうに寝ているな」


自然に笑みが出た。

雛斗は隙を見せない上、仕事の関係であまりこういう姿を見たことがない。

雛斗も若い男子なのだ。

若いのに軍事の頂点の仕事を受けているばかりに、少し超然とした雰囲気がある。

ちょっと曹操に似た覇気だ。

しかし、本当の雛斗はびっくりするほど優しくて純粋だ。


「……お前には、本当に助けられている。雛斗」


そばに座って呟いた。

風で雛斗の前髪が揺れた。

手で雛斗の前髪を元に戻してやった……て!


「な、何をやっているのだ私は?」


何故か自然な感じで雛斗に触れてしまった。

まるで桃香様の髪を直すように……何故だ?


「……ん」


「っ!?」


不意に雛斗が唸った。


「……ん、んん……すー」


「は……はぁ」


雛斗がこちら側に寝返りをうった。

ただ日の光が顔に当たって嫌だっただけのようだ。

それがわかって詰まらせた息と共にホッと胸を撫で下ろした。


しかし、こうじっくりと見ると雛斗は可愛い顔立ちをしている。

整っていて、ご主人様とは違うちょっと幼い顔立ち。

これでも傭兵軍団の大将で、曹操軍と差がある兵力で追い払った名将中の名将なのだ。


雛斗のそばには軍略書が置かれていた。

休みでも軍略書を傍らに置くのを忘れない。

雛斗に本当の休みなんてないのではないか?

そう思えてならなかった。


「……朱里や雛里と同じで、陰ながら頑張っているのだな。雛斗は」


そう呟いてから立ち上がった。

騎馬隊増強の報告なら後でもいい。

今は少しでも雛斗に、本当に休んでもらいたかった。

できることなら、その機会を私自身で作ってやりたかった。

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