表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真・恋姫†無双 ~緑に染まる黒の傭兵~  作者: forbidden
第二十章.赤壁の戦い
157/160

赤壁の後

 孫策と周瑜が幕舎に入ってきた。

 二人共、苦々しい顔をしている。孫策なんかは唇を噛んでいる。


「呉郡、会稽を奪われたわ。本拠の建業の目と鼻の先よ」


「許貢の一派によるものだと判明しました。袁術もそれに加わっているとのこと」


「あいつら……生かしておいてあげたのに。私の手で首を刎ねてあげるわ」


 周瑜は比較的自己を保っているようだが、孫策は怒りに拳が震えていた。

 時刻は既に遅い。

 赤壁の戦いと呼ばれることになる大戦の数日後だ。

 曹操はなんとか夷陵に逃げ延び、夷陵に将を残して襄陽で態勢を整えている。悪運の強いことだ。今回の大事件も含めて──いや、これは曹操にとっても危機だ。

 北郷たちは兵を夷陵に進めたが、少し戻って柴桑に軍を置き、緊急会議を開いていた。


「まさか、三国すべてで謀反を起こさせるとはな。しかも、我々が大戦で本拠を留守にしている絶好の期──それを見抜くとは、流石孔明殿。いや、龐統殿もかな?」


「いや、周瑜さん。これは黒薙が教えてくれたんだ」


「雛斗が?」


「雪蓮!」


 孫策が思わずといった風に唇をまた噛んだ。

 周瑜は頭を押さえている。


「なんで、真名を……?」


「孫策さん、どういうことだ?」


「……会いに来てくれたのです。黒薙殿が浪人になった時です。我々呉が、蜀と手を結ぶようにと勧めてくださったのです」


 孫策がぷいと横を向いたのに、周瑜が話してくれた。

 蜀呉同盟は黒永と諸葛亮、龐統が強く勧めていたのだが、知らないところで黒薙が動いていたのか。


「そうだったんですか──とにかく、黒薙さんが漢中に戻ってきたんです。それで伝令が来たんです」


「漢中の隣に位置する上庸の太守だった孟達が寝返って、漢中を奪おうとしたんだけど、これを黒薙が止めたんだ。同時に攻撃を仕掛けてきた司馬懿の軍も撃退した。この一連の戦と謀叛の予想と一緒に報告してきたんだ」


 劉備に続けて事情を話す。


「孟達の寝返りと謀叛を同時に、さらに蜀の最大の砦とも言える漢中への攻撃──鮮やか過ぎる。司馬懿、恐ろしい策士だ」


「曹操は襄陽、私たちが柴桑に駐軍。三国それぞれで謀叛。大戦で呉も蜀も魏も弱ってるしね」


 周瑜と孫策が唸る。

 詳細はまだわからないが、成都・呉郡・会稽・長安・北平は占拠されている。北平は魏の主要都市のひとつである鄴に近く、鄴に兵は少ない。騎馬民族も味方につけて鄴は陥落すると、諸葛亮を始めとした蜀の首脳陣は分析している。

 それから長安にいる司馬懿は北平の鍾会と連携して、蚕のように魏の領土を蝕んでいくだろう。

 謀叛した袁紹、袁術一派は兵がどれほどのものか、まだわからない。


「劉備殿。今、一番危ないのは蜀です。この大戦で兵は少ない。司馬懿の本拠である長安からまた南下し、さらに成都からも兵が出て挟み撃ちを受けたら、いくら黒薙殿でも」


 そうだ。山を挟んでいて険しい道のりであるが、長安から蜀の領土を攻撃することはできるのだ。

 蜀領での救いは、黒薙が漢中に戻ってきたこと。しかし、一刀が記憶している限り、漢中周辺の兵を集めたとしても、四万いるかどうか。それを周囲に分配したとしたら、二万か。

 長安に兵がどのくらいいたかは正確には覚えていないが、曹操のことだから同時攻略も考えられないでもない。守備も兼ねて五万から八万は下らないか。

 最悪、二万対八万。

 隣の劉備の肩が震えるのがわかった。


「冥琳。私たちは、今、なにをすべきかしら?」


 その低い声に一刀も震えた。

 孫策は先程よりも強い怒り、背筋も凍るような鋭い眼をしている。

 黒薙の危機に、ここまで感情を露わにしている。


「漢中は天然の要害だ。一度撃退してるし、それに、黒薙の他に呂布も張遼もいる。そう簡単には負けないはずだ。それより、どうにかして俺たちの帰る場所を取り戻す方が重要だろ」


「北郷殿の言う通りだ、雪蓮。我々も、合肥に兵がいるとはいえ、足元を救われかねない」


「──そうね。でも、曹操がどう動くのかわからないわね」


 確かにそうだ。

 領土を取り戻そう、共闘しようと手を差し伸べても、曹操は先の戦いでかなり傷を負った。

 誰からそんな傷を負わされたのか──蜀と呉だ。

 そんな敵の手を取るだろうか。


「──雛斗さんなら、きっと」


 俯いていた劉備が呟き、意を決して頭を上げた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ