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真・恋姫†無双 ~緑に染まる黒の傭兵~  作者: forbidden
第二十章.赤壁の戦い
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黒龍、帰還

周瑜が何を考えているのか、黒永にはまったくわからなかった。

漢中の山は曇りで、厚着をしなければとてもではないが体が動かないくらい寒い。

私や呂布、張遼を始めとした元黒薙配下は漢中の守備に当たっていた。

本当なら曹操の南下に少しでも将を、呂布などは特に送り込んだ方がよいが、長安からも攻撃を仕掛けてこないとも限らない。

主たる将のいない今、漢中を突破されたら成都までに大きな障害はほとんどないと言ってもいい。

ここに人は必要だった。


今は北風の時期だ。

だというのに、蜀呉連合は長江を挟んで南に陣取ったという。

水軍のことは黒永にはわからないが、帆を使うのだから風上に立つことは重要なのは陸戦でも同じのため、それくらいはわかる。

それを諸葛亮と龐統も許したというのか。

兵数で不利だというのに、地の利を活かさずに勝てる見込みがあるのだろうか。


「黒永様、孟達将軍の部隊の一万がこちらに向かってきております」


黒い軽鎧の隊長格の兵が宮城の執務室に報告しにきた。

漢中にいる三万の兵のうち、一万五千は黒薙の直轄兵だ。

曹操との漢中戦からだいぶ戻りつつあるが、元の二万には達していない。

残り半数は調練の済んでいない新兵である。

訓練された兵は、もっぱら柴桑にて曹操と対峙している。


「孟達の? 上庸の守備をしなければならないのに、なぜ」


江陵に残された曹仁に対しての牽制、王平のいる永安を援護できる位置に上庸はある。

また、漢中と隣合わせでもある。

孟達に動く必要は、今はないはずである。


「とにかく、孟達に問い質してください。それと、周囲に放った斥候はまだ戻ってきて居ませんか?」


「もう戻ってくるはずです。砦に詰めている兵から報告は来ています」


「伝令!」


早速、兵が駆け込んできた。

顔は強張っており、只事ではないことがあったらしい。


「魏の大軍が迫ってきております! 張の旗、張郃のものだと思われます! 恐らく、その数八万!」


「っ……全武将を集めてください! 砦にいる張遼と呂布にも戦闘態勢を!」


「はっ!」


「黒永様。孟達将軍は如何しましょう?」


「……ひとまず、定軍山に入ってもらいましょう。こちらは今は、三万。しかも、半分は新兵です。少しでも数が欲しいところです」


二人の兵がそれぞれ駆け去り、自身もすぐに評定の間に向かう。

将も新しく昇進したばかり。

しかし、黒薙が審査して選りすぐった人材でもある。

漢中の防衛力を駆使すれば、守りきれるはずだ。


「長安の張郃が八万の大軍でこちらに迫ってきています。張嶷は呂布、馬忠は張遼の砦へ向かい、その指揮に従ってください。私は孟達と共に定軍山に付きます。よく、将軍のことを聞くように」


この二人の将を、黒薙は高く評価していた。

定軍山は左右の砦に挟まれている。

先の蜀魏の戦いでも示されているが、防御力は高い。

定軍山よりは砦の方に指揮できる数を増やした方がいい。

二人が砦へ向かい、孟達の部隊が入城した。

定軍山に新兵の一万五千がいたから、これで二万五千になる。

屈強な黒兵は砦に回した。

あとは斥候を放ち、情報を掴みながら待つだけだ。

兵力差は約五万。

だが、山が与えてくれる力を加算すれば耐えられる。


「で、伝令!」


黒永の麾下の兵が慌てた様子で駆け込んできた。


「孟達将軍の兵が、城門を占拠しました! 将軍の謀叛にございます!」


「なっ……この期に? まさか、最初から魏と通じてっ。あなたは麾下の兵を集めてください! 二十名ですが、それで孟達を抑えます!」


思わず漏れた言葉を切り、すぐに頭を切り替える。

今は首謀者を抑えて反乱部隊を沈静化させなければ。

今いる新兵一万五千は混乱していて当てにならないだろう。

定軍山の城門ががら空きでは魏軍に入られてしまうし、それでは両砦と連携が取れない。

城門に向かう途中、こちらに差し向けたのであろう緑の兵装の蜀兵が三十人以上が襲いかかってくる。

しかし練度が違った。

黒薙兵はあの呂布と張遼、黒薙にしごき上げられてきたのだ。

自分とて、怪我が治ってからも鍛錬を欠かさなかった。


「二人一組で迎撃!」


それぞれが組になって一人が敵の刃を受けて、そこを一人が斬る。

これだけで十人は削れる。

同数になれば、あとは制圧するだけだった。


「漢中が奪られれば、成都まで壁はない……それだけはなんとしてでも阻止しなければ!」


じゃないと、後を任せたと言ってくれた雛斗様に顔向けできない。

既に百人は倒して、ようやく城門が見えてきた。

しかし、行く手をまた三十ほどが阻む。


「黒薙流、居合……『黒閃(くろせん)』」


ぼそっとした呟きが聞こえ、その声色に何も考えられなくなり、次に気付いた時には目の前の三十人が胴から真っ二つになって崩れ落ちた。


「これでは、遅かったと言われても仕方ないね。星と霞には、殴られる覚悟をしとかないと」


久しぶりに聴いたからか、胸がどきどきして止まない。

季節が変わるくらいしか、会っていない期間はないはず。

それでも私にとっては長すぎました。


「黒薙流。なんとか扱えているみたいだ。これなら実践範囲内だ」


「雛斗様……」


小さくしか呟いていないはずだというのに、黒の人はこちらに気付いてくれた。

頭に布を被っていてもわかる。


「ごめん、遅れたね。氷。ただいま」

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