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真・恋姫†無双 ~緑に染まる黒の傭兵~  作者: forbidden
第二十章.赤壁の戦い
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拭えぬ悪寒

後に赤壁の戦いと言われることになる戦闘の様子を探り、しばらくは硬直状態になるだろうと予想し、合肥から許都、そしてまた長安に戻ってきた。

先に鄴と長安を調べ、こうして魏の主要都市を巡った。

俺の勘の確証になる情報は得られていない。

気のせいなのだろうか。

しかし、胸のうちのもやもやは収まらない。

赤壁は雪蓮と冥琳、一刀に任せて置けばなんとかなると思う。

とにかく、俺はこの嫌な予感を払拭させたい。

氷にも言われたけど、俺の勘はわりと当たる方だった。


そういえば、と昼食後の茶を飲みながら思い出す。

司馬懿と茶を飲んだのはここだったか。

曹操は徐州や合肥方面に満寵、荊州北部に曹仁、そしてここ長安に張郃を都督として置いている。

自身は南下し、今大船団を率いて揚州を飲み込まんとしている。

大戦を自らの手で勝利を掴もうとする曹操らしい。

清々しいほど、覇道を自分の足で進んでいる。


「司馬懿は張郃とは知己か、友人くらいには友好なのか」


ぶつぶつとフードの下、黒いマフラーに呟く。

司馬懿は張郃を呼び捨てにしていた。

その場に本人がいないからといって、他人の目もあるのに。

それに、曹操に似た戦慄を感じた。

曹操よりは冷たい感じがする鋭さ。


「……郭嘉の線かと思っていたけど、もしかすると」


胸騒ぎが大きくなってきた。

そんな気がした。

勘が、胸を掻き乱してくる。

それに追われるように席を立った。


「司馬懿、仲達。長安を徹底的に洗った方がいいかもしれない」


店主に飯代を払い、司馬懿の館を探した。

幸い、司馬懿の小さな姿をすぐに見つけられた。

気付かれぬよう距離を取って後ろを付いていく。

ちょうど非番だったのか、自宅と思しき館に入っていった。

訪いも入れなかったので、たぶん間違いない。

司馬懿の館の塀と隣の塀の、人眼の付かないところから侵入し、草木を辿って玄関の位置を覚えて、そこから司馬懿の部屋を手繰って窓を確認していく。

すると木を登らないと見えない、少し高めの窓からフードを頭にかぶった司馬懿が見えた。

どうやら自室のようである。

フードの付いた水色の上着を椅子に掛け、そのまま服を脱いでいく。

思わず目を見張り、慌てて下の枝に目をやった。

やばい、軟そうな白い肌を見てしまった。

いや、下着までだからぎりぎり──いや、アウトだよ変態。

その後もちらちらと枝葉の合間から、早く着替えが終わらないかと赤い顔で待っていると、着替え終えてから窓からは見えない卓に座るのが見えた。

しばらく仕事をしているらしい背中を監視していると、従者の身なりをした男が部屋に入ってきた。


「……俺の間者と、似たようなのを雇っているのか」


ほんとに小さく呟いていると、竹簡を交換して男が去った。

木を降りてその後をなんとか追う。

城を出て、天水を伝う道を付いていく。

予感がほとんど当たっていると確信しながらも、確たる証拠を掴むために追跡を続ける。

やがて、漢中に差し掛かったところで確定したと、夜中にその従者なりの男を背中から斬りつけた。

男が意思をなくした人形のように倒れ込み、そのはずみで首が胴から離れた。

人気のない山道からさらに道から外れ、血の付いた土を払って目立たなくしてから茂みに隠した首のない男の懐を探る。

死体あさりなんて、死後がどうなるか知れている。

まあ、これでみんなの危機を回避できたら安いもんか。

数日前に司馬懿に託された竹簡を探り当て、内容を確認する。


「孟達。やっぱり信用ならなかった」


呟いて、竹簡を干し肉や飲み水を入れてある、それほど大きくない袋に入れる。


「……どうしてだろう。胸騒ぎがなくならない」


夜空を見上げて、自身の胸に耳を澄ませる。

まだ何かあるのか。

これで止められたのではないのか。


「とにかく、漢中に向かうか。蜀の本隊がで払っている今、奴らにとってはまたとない好機と見るはず」


血の付いていない黒い刀を確認してから紙幣一枚を男の傍らに、落ちていた重石を乗せて数秒黙祷してから歩き出した。

司馬懿、お前の思い通りにはさせない。

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