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真・恋姫†無双 ~緑に染まる黒の傭兵~  作者: forbidden
拠点フェイズ1.北平にて
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拠点フェイズ1.霞

「うーん」


頭を掻きつつ、目の前の帳簿を見つめる。

時刻はまだ日が頂点に登りかけの昼前。

兵の調練がそろそろ終わる頃だ。

兵も昼食をとる。

兵の調練は黒永に任せた。

兵の動かし方にもっと慣れた方がいい。


「──誰だ?」


幕舎の入り口から気配を察して言った。


「さっすが雛斗やなぁ」


入り口から幕舎に入ってきた。

それを見て、俺はため息をついた。


「霞か。驚かさないでよ」


「驚かしたんやない。雛斗の腕試しや」


「そんな腕に信用ない? 俺」


「なんだかんだ、ウチと雛斗って打ち合いしたことないやん? 雛斗の腕前、正確に知らん」


「まあ、それもそうか」


俺もこの世界にきてから、一階の武人。

霞の他人の腕を試したい気持ちもわかる。

帳簿を横に置いて席を勧めた。

特に気にすることなく席に座るのは、霞らしい。


「水しか出せないけど」


「気にせんよ」


酒がめに入れた水を椀に注いで霞の前の卓に置いた。


「なにしてたん?」


霞が椀を傾けながら帳簿を指差す。


「いや、現存する武器の量を確かめてたんだけど。売る分も欲しいんだけど」


「高いときに売っ払って、安いときに買って増やすってことやな」


それに頷いた。

資金は少しでも欲しい。


「兵一人一人、武器一つ持つだけで精一杯の量なんだよね。兵糧は白蓮に優遇させてもらってるからいいんだけど。金は必要不可欠。これから客将を転々と続けていくにしろ、やっぱり欲しい」


「せやな。今、経費は?」


「経費というか、俺の小遣いならないよ。洛陽に置いてきた」


「ま、当然やな」


「客将、傭兵として戦って報酬をもらうしかないね。俺たちはほとんど戦うことしか知らない集団なんだから」


「やっぱ、傭兵か」


今度は霞がため息をついて、椀を置いた。


「公孫瓚からもらえるんか? 報酬。袁紹との兵力差は圧倒的やで。勝てな報酬もへったくれもないで」


「さあね。勝てるかどうか、そこまでは読めないよ。ただ、そのときはそのときで考えるよ」


「前向きやなぁ」


「俺は軍師じゃないからね。俺にできるのは、軍事と兵の統率。そして、戦うことだ」


「ウチはそうは思えへん。雛斗は確かに軍事しかできんかもしれん。けど、民政のことだってしっかり考えとるやん。それは、全体に目ぇ配ってるっちゅうことや。つまり、雛斗には君主になる資質があるっちゅうことや」


「俺が君主、ねぇ」


ちょっと考えてみて止めた。

ダメだ、俺に合わん。


「似合わないでしょ」


「そおか? 雛斗やったら似合う思うんやけど」


「えー」


「なんや? ウチの目ぇ疑うんか?」


「軍事しかできない人間が頂点に立つのはどうなのよ?」


あの破天荒な織田信長だって戦だけじゃなく、商業を活発にした民政の手腕を持ってる。

俺には軍事しかない。

盧植先生から教わって、多少は政を見ることもできるけど黒永ほどじゃない。


「雛斗には軍事ができる、民政はできん。雛斗はどないする?」


「黒永に任せる」


「そこや。それが君主の資質や。自分にできないことを、適材適所に他に任せる手腕と度量。これからどないするのか、先を見つめる目。そして、ウチらを惹き付ける魅力。君主として必要なものは、ちゃんと揃っとるやん」


「──適材適所はいいとして、先を見る目と魅力はあるの?」


「ある。ウチが断言する」


霞が胸張って言った。

しかし霞、綺麗な身体してるよな──待て、何を考えてる、俺。


「なら先を決めるため、霞の意見を聞きたいな。ご飯でも食べながら」


「おっ、さっすが我等が君主殿! 太っ腹やなぁ」


「いや、奢るなんて一言も」


───────────────────────


俺が暇を見つけて探した食事処に入った。

まあ、客将だから調練とか以外はずっと暇なんだけど。

拉麺だと相手見ながら喋れないけど、点心なら片手に点心持って食べながら喋られる。


「ああ、小遣いが──」


最近、同じこと言った気がする。


「男がそんなん気にするな」


男って、金使うよね。

こういうところで。


「洛陽に置いてきたゆうとったのに、持ってるやんか」


美味しそうに点心を頬張りながら霞が言った。


「ここに来てから店とかで働いて得た金だよ」


「──なんか、ゴメン」


「なにを今さら。そう言うんだったら美味しそうに食べてよ。奢ったこっちは悲しいままだよ」


「……やっぱ魅力あるなぁ、雛斗」


霞は微笑み、点心をまた頬張った。

俺もそれを見て笑ってから点心を食べた。

うん、美味しい。


「そういえば、これからのこと話すんやったな」


「ああ、そうだったね」


俺は口の中のものを飲み込んでから、お茶を飲んだ。


「今の俺たちは白蓮の客将、擁護を受けている。袁紹が攻めてくるからいつまでも続かない」


「兵力の他にも、文醜と顔良がおるからな。それに比べ、公孫瓚は優秀な武将も目を引くような奴もおらんし、軍師もおらん。兵力、将士──全体的に見て、戦力は圧倒的や」


「だから俺たちも危うい。白蓮から離れる後のことを考えないと」


「いつや?」


「白蓮を逃がしてから」


「随分後やないか。ウチらの逃げ場失うで」


「白蓮は生かしたい。恩も受けたし、私情だけど助けたい」


「ほんま、雛斗はウチらを惹き付けるなぁ」


「ありがと」


苦笑しながらお茶を飲んだ。

どうも最近、苦笑することが多い気がする。


「せやけど、それからどないするんや?」


「大まかに考えて、今度は大きな勢力に客将を乞おうと思ってる」


「大勢力は求めん、て雛斗言うてたやん」


「それは小勢力があるから。小勢力が少なくなってきたら、今度は大勢力同士がぶつかる。大勢力同士、やっぱり相手より兵や将士が欲しいはず。大勢力同士の戦いは長くかかると兵糧やその他諸々に経費がかかって、それだけで国は疲弊する。だから、一回の決戦に力を注ぐ。その一戦の絶対の勝利のために、相手より兵力が多くてもより兵や将士を求めえ勝率を上げるんだ」


「それでウチらも必要になる可能性がある、てことか。やっぱすごいな、雛斗。ウチが考えつかんこと考えとる」


「──ねねの立場が危ういですー」


「あっははははは!」


陳宮を真似して言ったら、霞が大笑いした。

霞にはこの方がよく似合う。


もっとちゃんとこれからのことを考えないとな。

霞や恋たちと一緒に生きていけるように。

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