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真・恋姫†無双 ~緑に染まる黒の傭兵~  作者: forbidden
拠点フェイズ7.益州にて其の五
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拠点フェイズ7.星

「ふむ。やはり雛斗には素質がある」


星が岩を見て言う。

俺と星の前に星の背丈くらいの岩は真っ二つに割れている。

何か鋭利なものでえぐったような割れ方をしている。


「槍は難しいね。今作ってもらってる方を使えば綺麗にいくと思うよ」


黒龍槍の穂先を下ろして構えを解く。

曇天の昼下がり。

みんながよく鍛練で使う庭に、星と俺がいる。

天気がよくないからか、強めの風は少し肌寒く、でも鍛練の火照りを冷ますにはちょうどよい。


「あれは斬るのに特化しているからな。多人数が相手なら、氣を上手く使えば一気に対処できるだろうな」


自分の槍の柄尻を地につけて、腰に手をあてて岩を観察する。

星が言っているように、昼飯後の腹ごなしに氣の使い方を学んでいた。

星は跳躍や接近が上手い。

武器に氣を通しての突きも流石だけど、その氣による運動能力上昇は特にすごい。

今俺が跳躍や着地に氣を利用できるのは、星のおかげだった。


「頑丈に作ってもらうために時間はかかるけど」


「仕方あるまい。細く、薄いのだからな。主が使いやすいと言っていたが、やはり雛斗も同じ出身だからかな?」


「たぶんね。一刀も腕は悪くないんだから、誰かに鍛えてもらえばいいのに」


「まあ、あの方もお忙しい。雛斗と同じく、皆にとても好かれておいでだからな」


星が不意に空を見上げた。


「どうしたの? 雨?」


訊きつつ俺も空を仰ぐ。

俺の目元に冷たい水滴が落ちてきて、片目をつむった。

星も頬に指先で触れる。

するとホントにいきなり雨がざあっと降りだした。


「むう、こんなにすぐ強く降ってくるとは」


「そんなことより早く城に戻ろう。岩は雨があがってから片付ければいいよ」


しかめ面をする星の手を取る。

頷いて、星は手を引く俺の手を握り返す。

城から庭へ出る出入口に入る。

中はすぐに廊下になっているけど、何もせずに歩く訳にはいかない。

まだずぶ濡れとはいかないまでも結構濡れているから、掃除をする人に申し訳ない。


「侍女を呼ぼうか。体拭くものを持ってきてもらわないと」


黒い和服を脱いで白い小袖になる。

多少小袖も濡れている。


「しかし運良くこちらを通るものかな? 侍女が待機する部屋も遠い」


星は普段上に何も羽織らないから、脱ぎようもないか。


「でも廊下濡らすと掃除する人に悪いし、拭かないと風邪ひいちゃうよ」


言うと星が何か気づいたようにきょとんとして、すぐにやりと笑みを浮かべた。

槍を出入口近くの壁に立て掛け、星が身体を寄せてきた。


「ど、どうしたの?」


思わぬ行動にドキッとする。

星の腕が俺の体に絡み、空色の髪が小袖から覗く肌に触れて、水滴がつく。


「ん? 風邪をひいてしまうからな。身体をくっつけ合って、身体を温めていれば良いと思ってな」


言いつつ、星は小袖をちょっとはだけさせて俺の肌に頬を触れる。

雨の滴が肌に冷たい、でも星の妙に温かい頬に鼓動が早まる。


「星が濡れちゃうよ」


「既に濡れているのだ。今さら変わらないさ。それより雛斗、胸がどきんどきんと言っているぞ?」


悪戯っぽい笑みと頬を染めながら、一層体を密着させてくる。

それもあって俺も顔が熱くなってきた。


「……なにやってるのよ、あんたたちは」


背中に声が聞こえて肩が震える。


「え、詠」


腰に手をあてながら眉をひそめている詠が、いつの間にか俺たちの後ろにいた。


「庭に鍛練に出たのを思い出したから、様子を見に来てみれば」


「い、いやっ。これは」


「愛の営みを」


「星は黙ってて!」


なんてこと言おうとしてるんだ!

見ろ、詠もため息をつきたそうな顔をしてるじゃないか!


「ま、大体予想はつくけど。そういうことは皆がいない、来ない場所でやりなさいよ」


やっぱりため息をつく。


「ふむ、詠がそういうのならそうしようじゃないか。そうだな、雛斗?」


「さも、俺がそう思っていたように言わないでくれる!?」


「体を拭くものくらい持ってくるから、少し待ってなさい。ボクがいなくなるからって変なことしないでよね」


「そんな目で俺を見ないでくれ……」


───────────────────────


「あのさ、星」


「ん~?」


耳元で星が語尾を上げた嬉しそうな音をあげる。


「仕事の邪魔なんだけど」


筆を置いてため息をつく。

まだ小腹の空くおやつ時か。

あの後、詠の助けもあって体を拭いてから自室に戻って着替えた。

星も自身の部屋に戻って着替えたようだ。

鍛練をしていたとはいえ、今日は普通に仕事がある日。

雨もあがらないし、そのまま午前の残りの仕事に入った。

で、なんでか星が俺の部屋にやって来た。


「私が濡れたのは雛斗が鍛練を頼んできたせいだ。このくらいさせてもらわねば」


「確かにそうかもしれないけど」


仕事机につく俺の膝に座って、星が首元に頬を擦り付けてくる。

うう、ドキドキして止まないじゃない。

絶対俺の頬は赤いし、星はそれに気付いてそうしてる。


気を紛らわそうと再び筆を取る。


ぺろっ


「うわっ! な、舐めるな!」


仕事を邪魔するように星は俺の首を舐めてきた。


「鳥肌が立ったぞ。可愛いなぁヒナちゃんは」


「ヒナちゃんって言うな! そういうことは仕事終わってからにしてよ!」


「仕事が終わってから、だな?」


言ってからしまった、と口をつぐんだけど遅い。

それを見て星はにやりと笑った。


「約束だぞ。最近、ご無沙汰だったからな」


「……はぁ。そう回りくどいことしなくても、星は勝手に夜に来たりしてるくせに。それに、俺はそれを拒まないよ」


ため息をついてから思い直して、苦笑いした。

星のまだ少し濡れている頭に手を添えて、顔を寄せる。

驚いた表情をするけど、星もすぐに笑みを浮かべて首に腕を絡ませて唇を押し付けてきた。

舌が差し込まれようとした時、すぐに顔を引いた。

星がムッとした。


「雛斗、私はまだし足りないぞ」


「これ以上は後でね。したら抑え効かなくなるし」


「……むう、仕方ないな。約束はしたのだからな。夜を楽しみにしてるぞ」


それにまた苦笑して、星の頭を撫でた。

仕事を早く終えとかないとな。

星と愛し合うのは、俺も嫌じゃないから。

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