拠点フェイズ1.黒永
∴名前
姓 黒 (くろ)
名 永 (え)
字 ? (?)
真名 氷 (ひょう)
∴武力(MAX6)
騎 2
槍 3
弓 3
∴陣形
偃月陣 騎0 槍4 弓0
衝軛陣 騎4 槍0 弓0
雁行陣 騎0 槍1 弓3
四段陣 騎1 槍2 弓1
∴奥義
(Lv?名前 コスト 説明)
Lv1三段攻め 5
~精練された傭兵軍の強力な三段攻撃。
効果~迎撃
Lv2ほつれ直し 10
~細かなことまで気を配ることで兵たちが安心し、力を尽くす。
効果~自兵+、自攻+
Lv3偽城の計 15
~騙された敵軍に火矢を浴びせ、士気を激減させる。
効果~射撃、敵兵-、敵攻-
詳細:
黒薙の従者。
実は女性。
洛陽郊外の生まれで両親を病で早くに亡くし、出稼ぎに洛陽に。
従者の募集に応じ、黒薙に仕える。
家事から炊事までそつなくこなす。
何か学を学びたいと思い、黒薙に軍学を教わる。
それから仕事の合間を縫って学にのめり込み、政や国政、商学まで広く学び、政務は大抵の仕事をこなせる。
黒薙と暮らしていくうちに尊敬の念、そして好意を抱くようになったが、それを理解できないでいる。
名前は黒薙にもらった。
容姿はくせのない長い茶髪を首筋辺りで黒い紐で縛り、瞳の黒いちょっと鋭い目をしている。
服装は黒薙に合わせて袖の長い浴衣のような黒い士官服を着る。
少々胸が小さい。
そのためちょっと好青年に見える。
性格はおとなしくて静か。
黒薙に忠誠を誓っていて関羽に似ている。
しかし、黒薙自身隙があまりない為か、怒ることがまったくない。
従者であるため目立つ武器を持てない。
その為、袖に短刀を隠し持っている。
黒薙率いる兵士以上に鍛えられている為、大抵の兵や暗殺者には勝てる。
戦場では剣を使う。
民政などの事務が得意で、洛陽では黒薙の事務仕事をよく手伝った。
「いやぁ、流石やな雛斗~」
兵をまとめていると、霞が笑いながらこちらに歩いてきた。
鏃を砂をつめた袋にした矢、矛を同じく砂をつめた袋にした槍の演習用の武器。
それらを使った原野での軍事演習。
先程やってたのはそれだ。
黒薙軍が二つに分かれて時々やる。
実戦に近くて重宝している。
「しかし、陣を動かすのが速いなぁ」
「俺が兵の中央にいて陣の中心になるようにして、後は部隊長と兵全体に並び方を徹底してるだけだよ」
とはいっても、俺は大体先頭に立って突っ込むけど。
流石に調練の時はそれでは練兵にならないから、先頭で槍を振るうことはしない。
「兵全体に徹底か。その徹底ぶりがすごいんやな。勉強させてもろたわ」
ふむふむと頷きながら霞が言った。
今は城に戻ってきていて、兵舎にいた。
兵たちは昼近くの陽射しを避けて、囲い壁の日陰に思い思いに休んでいる。
霞は俺たちの調練の見学だ。
恋はどっかに行き、陳宮が兵の調練、白蓮は政務に追われ、黒永は俺の調練に加わっていた。
恋が調練やれよと思うけど、まあ恋だしと思って止めた。
「黒薙様。午後はいかがなさいますか?」
兵の様子を見ていた黒永が、水の入った竹筒を差し出しながら訊く。
黒永と俺で兵を半分に分けて調練をした。
黒永は粘って抵抗したものの、俺に突き崩されていた。
陣形を変え過ぎなのだと思う。
陣形を変えている間は兵は無防備だし、何度も変えればうんざりして士気も下がる。
黒永は負けたというのに、けろりとしている。
それでも、夜に兵法書なんかを読みふけるだろう。
その勤勉なところは、読んでは体で覚えてきた俺にはすごいと思う。
面倒臭がり屋だと、自分でわかっていた。
だから、学問も盧植先生の下で習った。
人に指図されでもしなければ、たぶん自分はだらける。
生真面目な黒永にも助けられている。
黒永の竹筒を受け取った。
「今日の調練は終わり。明日は部隊長に調練を任せる。半日ね」
「わかりました。そう、伝えてまいります」
黒永が兵たちの方に歩いていく。
背を向ける時に、結いた長い茶髪が舞った。
「献身的な従者やなぁ」
「俺にはもったいないぐらいだよ」
「雛斗だから尽くすんよ、あれは。兵の動かし方はちょいガチガチやけど、あれは経験が足らんだけやな」
やっぱり見るところは見てる。
あの調練で黒永の軍人としての資質を見抜いている。
「雛斗の側にいればあれは強うなるんちゃう? 従者としては完璧やな。ウチもあんなかわいい従者が欲しいなー」
苦笑して霞に返事した。
俺が空にしたはずの椀に手を伸ばしたら、いつの間にか茶が入っていたりする。
俺の行動は黒永の頭に入っているのだろう。
そう考えると、なんだかむず痒い気がする。
悪い気分じゃない。
「調練終わんのやったら、今から昼飯一緒に行こっ」
霞がそう誘ってきた。
お誘いは嬉しいけど。
「ゴメン。この演習のあと、いつも黒永に兵法指南をせがまれるんだ。だから、また今度頼むよ」
「そか、残念やな~」
その言葉を背に、街に足を繰り出した。
指南と言っても、先の調練の指摘をするだけだ。
白蓮は軍事だけでなく政もできるらしい。
盧植門下なのだから、できて当たり前か。
とはいえ、人並みにだ。
白蓮が自身で言っていたように、彼女には軍師がいない。
文官がいないわけではない。
諸葛亮や龐統、曹操の荀彧みたいな優秀な部下はいない。
その分、白蓮が手を回しているのだろう。
その努力が実ってか、街には活気があった。
「白蓮も大変だな」
そう呟きながら一つの店に入った。
黒永と探して約束した場所だ。
点心が美味しい店だ。
「いらっしゃい、黒薙様」
人の良さそうな女性が俺を笑顔で迎えた。
董卓軍にいたという事実があるにも関わらず、こうした対応を受けるのは「公孫瓚様のご友人に悪い方はいませんよ」ということらしい。
確かに劉備とか趙雲とか、いい人ばかりだけど。
「お一人ですか?」
「いや、従者も来る」
「黒薙様と黒永様は仲が大変よろしく、何よりでございます」
そんなことを言われて席に案内された。
お茶をもらって待っていると、それほど待たずに黒永がやってきた。
演習とは違い、腰に剣はない。
ただ、袖の中に短刀を隠し持っている。
腕は悪くない。
強すぎる、というわけではないけど。
「お待たせして申し訳ありません」
「いいよ。全然待たなかったし」
失礼します、と言ってから卓を挟んで俺の前の席に座った。
すぐにさっきの女将がやってきた。
「ご注文は?」
「点心を二つ。あと酒を頼むよ」
「黒薙様、昼間からお酒は」
「仕事がないんだから、たまにはいいでしょ」
「点心二つ、お酒を一つですね」
そう復唱してから女将は調理場に戻った。
「洛陽では控えていらしたのに」
「今は客将で仕事はもらえないからね」
いつ離れるかわからない客将に民政とか重要な仕事を任せる、というのは愚行だ。
白蓮は俺のことを信じられないわけではないだろうけど、仕事を客将に任せているという事実が街の人に知られたら、街の人は不安になるだろう。
客将は完全な配下、というわけではない。
「あまり、お過ごしになりませんように」
「わかってるよ」
苦笑しながらお茶をすすった。
少し待って、点心二つと酒が用意された。
黒永が徳利を両手で持って俺の盃になみなみと酒を注ぐ。
この動作で頭をひねる人、黒永は女だ。
胸がちょっと小さくて、なかなか整った顔立ちのせいか好青年に見えてしまう。
けど、女。
「こうして酌をしてもらうのは洛陽以来だな。黒永も盃を取れよ。酌をしよう」
「──では、一杯いただきます」
しょうがない、という風に黒永は盃を持った。
盃は俺が持っているのと黒永ので二つあった。
女将が見越していたらしい。
「なかなか平和な世は訪れないな。白蓮には悪いけど、それも世の将士が私腹のため、名誉のため、そして我が我がと天下を狙って次々に各地で台頭するからだ」
「人間というのは、欲で動きますから。生理の欲にしろ、名誉にしろ。互いの欲がぶつかり合う。それが今の乱世です」
曹操にしろ、白蓮にしろ、劉備にしろみんな自身の思惑があって乱世に立っている。
俺はどうかな──何を目指すか。
「ところで黒薙様。先ほどの調練ですが」
黒永はどう考えているのか。
たぶん、俺の意志に従うと言うだろう。
「ああ。陣形を変え過ぎだね。調練を多く積んだ精鋭ならまだしも──」
人々の意志が混ざり合った混沌とした世界。
でも、その中でも民は生きている。
俺も生きている。
今日は黒永の兵法指南、明日はどういう調練をするか考え、白蓮から離れた後の行き先を考え──。
俺の周りはこんなで、この中で生きている。
この生き方は、どこに向かっているのか。
目標、というものを持つべきかもしれない。
これは黒永や霞、恋、陳宮との考えとは別にだ。
「なるほど。もっと兵たちの身になって考えるべきですね」
でも、今は黒永との暮らしを楽しもう。
乱世で、いつ黒永と離れるかわからない。
そこで後悔しないよう、今は黒永と共にいよう。
本当は華奢な女の子のために。