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真・恋姫†無双 ~緑に染まる黒の傭兵~  作者: forbidden
第十五章.黒龍が変動
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好敵手はいなくとも

「黒薙らしき者が建業に?」


秋蘭様の報告に華琳様が眉をひそめた。

私ももちろん眉間にしわが寄っているだろう。


会議中のことだった。

国政の報告を終えて軍事の報告を始めたところだ。

雍州や徐州の小競り合いの報告、冀州他の兵糧高などの報告を終えてからのことだ。


「三日ほど前、黒薙によく似た人物が建業の城の一部屋で軟禁されているそうです」


「確定した訳ではないのでしょう? 黒薙らしき者が呉にいたところで気にすることではない、と思いますが」


華琳様の怪訝な表情を見てか、凛が顔色を窺った。


「……蜀の様子は?」


「依然として変わらず。黒薙と黒永が出掛けたことくらいで特に変わったことはありません」


「お出掛け?」


沙和が首を傾げる。


「うむ。あまり詳しいことは聞けなかったが、黒薙一行は荊州に向かったようだ」


沙和に答える。


「荊州は呉の勢力圏ではないか。何が目的で荊州なんかに」


春蘭様もまったくわからない、といった様子だ。

自分にはわかる気がする。

黒薙と私は魏の勢力圏ど真ん中の洛陽で一度会っている。

恩師である廬植に会うために手掛かりを探しに自宅に帰った。

黒薙の家は魏の所有の建物として保護されている。

今回もそれと同じような用事なのかもしれない。


「凪はなにか知っていそうね」


華琳様が私を見止めて言った。


「黒薙が家の保護に関して礼を言っていた、と華琳様にお伝えしたのですが」


「そんなこともあったわね」


「その時、黒薙は恩師の廬植殿を訪ねに行く中途でした」


「今回もそれと同じ、と考えているのね」


「はい」


「せやけど、荊州に黒薙と親しい人がいるって聞いたことないけどなぁ」


真桜が私と華琳様の問答を聞いて言った。


「確かに黒薙と繋がりのある人なんて、あまり聞きませんからねー。黒薙の親戚を調べても何も出てこなかったくらいですからー」


珍しく起きている風が間延びした声で言った。

それは初耳だった。


「親戚がいない、ということは身元もわからないということか?」


「残念ながらー」


春蘭様の問いに風が即答する。

出身も、もしかしたら親すらわからないということか。


「今も蜀領にはいないのね」


「どうやらそのようです。黒薙が呉に捕らえられた、と考えてもその可能性を一概に否定することもできないかと」


「ふむ……」


華琳様が考え込む。


「黒薙がいないのでしたら、今が絶好の機。蜀の攻撃を提案します」


桂花が言う。

自分としては攻撃をしないで欲しかった。

黒薙と対峙したい、という思いが強い。

しかし、黒薙がいない今が好機というのも否定できない。


「私も賛成です。黒薙のいない元黒薙軍は中枢のない状態。また、黒薙の部隊を操れる者もそうそういません。実質、蜀の戦力は少なからず減少しています」


凛も言った。


「……風の意見を聞かせてもらえるかしら?」


少し考えてから華琳様が風を見た。

風は感情のわかりにくい表情を変えない。


「華琳様は黒薙とまた対峙したい、と考えていらっしゃると思います。しかし、覇道の前進を望むならやはり今が好機。……どちらとも言えません」


風が中途半端な答えを出した。

しかし、華琳様はまた考え込んだ。

これが今の華琳様の気持ちなのだろう。

漢中での戦、兵数で勝っていながら黒薙軍に遅れをとっていたのは周知の事実だ。

それは華琳様が一番よくわかっているはず。

再戦したい気持ちはよくわかった。

しかし、この機会を逃せば蜀の攻略は今よりさらに難しくなるかもしれない。


「……黒薙と再戦したい。私はそう思っていたのだけれど。だが、それも致し方なし」


ようやく目を開いた華琳様の目は鋭かった。


「この機会を逃さず、蜀攻略戦を敢行する」

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