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真・恋姫†無双 ~緑に染まる黒の傭兵~  作者: forbidden
第三章.反董卓連合と生きる誓い
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安息

「黒薙! 生きていたのか」


出会い頭、いきなりそう言われて苦笑した。


「なんとか生きながらえてますよ、公孫瓚殿」


息を潜め、ゆっくりした行軍だったが、なんとか公孫瓚殿のいる城までたどり着いた。

門番だろう兵が、俺の名前を聞いて驚いて城に走っていった。


すぐに門を通され、兵を黒永と陳宮に任せて霞と恋と共に公孫瓚殿のいる宮城に入った。

入城したのは今朝のことだ。


「お前が董卓軍にいたと聞いて、私は驚いたぞ。洛陽を脱出したものだとばかり思っていたからな」


「黒永にはそう進言されたのですが」


尚も苦笑いのまま、公孫瓚殿の言葉を返していく。


「それより本当に受け入れてくださるのですか? 公孫瓚殿」


「敬語なんて止めてくれ。白蓮でいい。お前は黄巾の乱の頃は私の副将だったんだ。お前が信頼できる奴だってよくわかってる」


「……ありがと、白蓮」


力なく笑った。

実はここ十日くらい、ずっと寝てない。

毎夜毎夜、見張りに加わっていたからだ。

前いた世界の友達はいつまで寝ないでいられるか、ていう実験したら一週間でぶっ倒れた、とか言ってたな。

記録更新してやった。

だから眠くてたまらない。


「紹介するよ。こっちが張遼、こっちが呂布だ」


「あんさんとはお初やな。張遼、字は文遠や。よろしゅうな」


「……呂布、奉先」


「あ、ああ。よろしく頼む。黒薙。お前、何者だよ?」


「なにがさ?」


「だって、あの張遼と呂布を連れてるって」


「親友だからな」


霞と恋に振り返ると二人共笑った。


「お前、桃香みたいな奴だな」


「なんでそう思ったか知らないけど、平原の太守が替わってたね。劉備はどうしたの?」


ここに来る前に間者に劉備の動向を探らせたら、平原にはいなかったという。

劉備の元へ行くことも、考えないではなかった。


「劉備は徐州の牧になったよ」


「徐州か。劉備も大きくなったな」


「私に並ばれたな、同じ州牧。私は大きくなれないままだ」


「白蓮、今土地があるだけでもましな時代だよ。天下の何人の将士が領土を持ててないと思う? 今の俺たちみたいにさ」


「そうだな。領土を持ってるだけでもまし、か」


「ところで、俺たちの関係だけど」


「臣下になってもらいたいとは思う。けど、今は客将という形でいて欲しい。私とは知己とはいえ、お前たちは元は董卓軍だったんだ。私の兵を説得しなきゃならない」


「その方が動きやすいよ」


「水と兵糧をすぐにわける。悪いけど、私の指定する場所に兵を移動させてくれ」


「わかった。すぐに」


「あ、待て! 黒薙と話をしたい」


「恋、霞。兵の移動、頼むよ。黒永にも伝えて」


「そら、ええけど」


「…………」


霞と恋が白蓮をちょっと見た。


「頼むよ」


「了解」


「……(コクッ)」


霞と恋が一回振り返り、俺を見てから部屋を出た。


「信頼されてるなぁ、黒薙」


「警戒してるのは許して欲しい。あとでちゃんと言うから」


「わかってる」


「それより、話って?」


とりあえず兵糧は確保できた。

後はみんな眠らせたい。

長いこと野営を続けて、気が休まることもなかった。


「まあ、ご飯でも食べながら話そう。この十数日、ほとんど食べてないだろう?」


「霞たちには?」


「もちろん同じ料理を出す」


「なら、いただきたい」


「お前はホントに部下思いだな」


「部下というより、友達だよ」


「そこが桃香たちと似てるよ」


苦笑しながら卓についた。

料理が運ばれてくる。

あまり豪華じゃなく質素で、しかし栄養がとれてそうな料理が白蓮らしい。

戦時中はこういう料理の方がいい。


「で、話って?」


「これからの私の方針だ」


「客将の俺にそれを話していいの?」


「黒薙だから話したい。私は信用している」


「それはどうも。信用してるなら、俺のことも真名で呼んでよ」


「わかった。雛斗、これから私はどうすればいい?」


「白蓮自身、どうするか考えないでもなかったんじゃないの? 白蓮はどう考えても、袁紹を見なければならない」


幽州を治めている白蓮は後方左右に敵はいない。

唯一、名門で大きい袁紹が南にいるのみだ。


「確かに、それは私もわかる。そこまでなんだ。今の私には桃香の諸葛亮や曹操の荀彧みたいな軍師がいない。雛斗は奇策を使って何度も倍いる敵を倒してきた。その知謀を借りて、その先を見たい」


「軍事しか頭にないんだけどね──袁紹が天下を狙っているとしたら、どう考えてもここを狙う」


「ああ。冀州から南下するために後顧の憂いを絶とうとするのが常套だ」


「今、攻められてもおかしくない。兵数は名家に集まる袁紹の方が多いし、顔良や文醜なんかの勇猛な将もいる」


「あっちは準備万端整ってる、てわけか」


「各地の城を今すぐ固めた方がいい。城さえ固めて落ちないようにしておけば、無視してこの本城に行こうとしても挟撃できる」


「わかった。今すぐ兵を城に分散させる」


「それともし、城も落ちて負けるのが必至になったときのために退路を探しておくべきだ」


「退路って」


「生きていける算段は立てておいた方が絶対いい。白蓮は武人だからそんなこと考えないかもしれないけど、死んで悲しむ人は何人もいるんだ。劉備は泣くだろうし、俺だって悲しい」


「わかった。それもすぐに手配する」


それからまだまだ話すことはあった。

兵の配置する数、兵糧の運びこむ量、兵や兵糧の集め方、馬の飼い葉、客将である俺たちとの合同調練。


話は方々に飛び、これから誰が大きくなるかという話もあった。

俺はもちろん、曹操を挙げた。

袁紹や孫策も強くなるだろうけど、真っ先に曹操が強くなると予想した。

予想というより、予感だ。


眠くてたまらない頭で話を続け、食事を終えてから俺たちに用意された館に入って、そのまま倒れるようにして寝た。

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