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真・恋姫†無双 ~緑に染まる黒の傭兵~  作者: forbidden
第一章.先行の御遣い
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プロローグ

黄巾の乱直前です。

オリキャラプロフィールは後々書きます。


とりあえず一刀より前に時代入りです。

所詮、自己満小説ですので自分の好きなキャラしかハーレムしません。

こんな小説受け付けられない方は、バックすることをお願いします。


では、失礼します。

 ここに来てどのくらいが経つか。

 ふと、筆を止めてそんなことを考えた。

 竹簡に筆を走らせ、警備状況の報告書をすらすら書いていた。ここに来てから筆ばかり使っていて、もう慣れてしまった。シャーペンを使っていた昔が、懐かしい。

 改めて、時代と文明の差を感じる。今から千年以上後、ようやく日本にもシャーペンと呼ばれるものが使われる。ちなみに、日本でシャーペンが開発されたのは千九百年代始めだ。

 千年以上。とても気の遠くなる時間だ。実に十世紀である。そのうちの一世紀だって、自分が生きられるかわからない。こんな世界にいるなら、なおさらである。

 ぼんやりそんなことを考えて、筆を止めていることに気付き、再び筆を動かした。これを書き終えたら、今日の仕事は終わりだ。早く終わらせて、廬植先生のところに行く準備をしよう。時々、竹簡で便りをもらっているけど、ここ最近会ってない。

 廬植は学問の先生である。学問といっても、兵法などの軍学にほとんどの時間を費やした。『孫子』はもちろん、『六韜(りくとう)』、『呉氏』、『尉繚子(うつりょうし)』──既存している兵法書を全て読み終え、廬植と共に兵法を談義したりした。

 一度、廬植に伴われて名高い水鏡先生を訪ね、話し込んだこともある。水鏡(すいきょう)は号で、名は司馬徽(しばき)である。襄陽近辺に住み、学者の間では有名である。

 しばらく、廬植の下で学問に励み、盧植の推挙で洛陽に任官した。

 この時代の任官制度に、科挙という試験があるが、よほど頭が良くなければ受かることは叶わない。エリート中のエリートが、それで集められるため、倍率も高すぎる。他に地方の役所で登用されることもあるが、それも庶民の出では難しい。学問が無ければならないし、庶民には字の読み書きができない者も多く、それを習うには金が必要になる。自分のように、盧植先生などの高名な人に推挙されるなど、それなりの人の恩恵を受けないと任官すらできないほど、本当の出世道は厳しい時代だ。

 報告書を書き終え、従者を呼んだ。

 急いできたとも思えない静かな入室だというのに、信じられないほど早く来る。従者はこの時間、夕方は少し離れたところに設けた自室にいるはずだ。

 この館は大きくはない。むしろ、小さいほどである。従者も、今呼んだ一人しかいない。あとは、下働きの者が数人だけだ。


「報告書を届けて欲しい」


「すぐに」


 従者は、(うやうや)しく頭を下げた。結いた茶髪が、背中から脇に垂れる。

 従者は、黒永(くろえ)と言う。自分と同じほどの年齢のはずだ。それなのに、妙に大人びている。

 おとなしい娘で、従者にはちょうどいい。

 黒永は、自分の兵法書に対する意見をまとめた書物を見たら、急に俺に軍学の教えを乞うてきた。兼ねてから学問には興味があったのは、時々、部屋の兵法書を盗み見ているのを見かけて知っている。

 最近、軍学を話し合える相手がいなかったので試しに教えてみた。

 自身が軍学を教えることになると、どこか気恥ずかしかった。

 最初こそまったくわからなかったらしいが、ある日を境にいきなり理解を示した。

 なにかしら感じ取ったのだろう。兵の訓練にも似たことがあり、ずっと走らせる調練をしていると、気付けば、ある兵が他の兵より速く長く走ったりする。

 元々の才能だろう、と思った。それを開花させたに過ぎない。

 けれど、黒永はそうは思ってないらしく、『先生』と呼ぶまでになった。

 こそばゆい気持ちになった。

 いつも通りに呼ぶように言っている。こんな自分が先生なんて、他の高名な学者に申し訳ない。

 今では、駒勝負をできるようになっている。(まつりごと)の書も読んでいる。様々な学に通じるようになったが、まだ浅い気がする。政はかなりのところまでこなせると見ていた。

 軍学も、通常の軍なら動かせるかもしれないけど、調練を繰り返した軍だと反応が速すぎて扱いきれないだろう。

 それでも従者にしては、能力があって有り余るほどだ。自分には勿体無いとも思う。


「しかし、洛陽は気楽なものですね。軍の調練を見ていて思うものです」


 書簡を使いに頼んだのだろう、黒永が戻ってきて言った。


「都の雰囲気と、軍団指揮官の気持ちがそうさせているんだろうね。戦乱から長く遠ざかると、そんなもんなんじゃない」


 都周りは呑気なものだった。特に宮中がそうだ。

 宮中は外の民の声など知らずといった具合に賄賂が絶えず横行してるし、霊帝周りの官宦が好き勝手やっている。

 これだから周りも感染して、薄汚い都になってしまっている。

 それは大商人が多く、栄えてはいるけれど。


「ましなのは曹操殿の軍くらいのものです。約五千というところですか」


 曹操孟徳。

 その名を聞いて姿が、すっと浮かび上がった。

 確かに彼女の軍は、誰の目から見ても精強だ。まだ名は広くは知られていないが、俺には天下に向けて虎視眈々と機会を待っているようにしか見えなかった。

 発する雰囲気が他人を圧倒するのだ。目には自立の意志が強く見える。

 彼女は近いうちに、陳留の太守となるらしい。


「ところで、間者の数はどうなっているの? 金は、多くは払えないけど」


 聞き流して、逆に訊いた。


「五人が限界です」


 そんなところか、と頷いた。

 それも秘密裏に有志を募ってだろう。知り合いを当たったのもあると思う。


「どこへ探りを入れます?」


「とりあえず、冀州付近」


「わかりました」


 不穏な空気がある。それも大きな雲のような。なにかが起きる、と予感のようなものがあった。

 三国志はよく知らない。呂布や曹操、劉備などを知っているくらいのものだ。孫堅なんて、知らなかった当時は次女の孫権と名前が被って、聞き分けられなかったほどだ。

 けれど、ここに来てどういう世界かわかったとき、まず最初に山の寺に住み込んだ。

 まずは生きられる住処を得た。そして身体を鍛えた。

 戦乱の時代、一番食べていけるのはやはり軍だ。せめて一部隊の隊長になれるように鍛えた。

 元から、剣道を習ってもいた。少し特殊ではあるが。

 それから、廬植先生の下で軍学を学んだ。そこでこの国を知り、どういう世界かを知った上で仕官した。

 三国志の世界を知らないなら、まずは知るべきだった。


「これからどうするおつもりですか?」


「これから?」


「いつまでも、ここにいるおつもりではないでしょう」


 確かにここで腐っていくつもりはなかった。し、警備だけする人間でいるつもりもない。

 黒永もいるし、部下にはいい暮らしをさせてやりたい──それでも名声を得たいわけでも、私腹をこやしたいわけでもない。

 自分を頼りにしている人に不自由をさせたくないだけだ。

 小さいより大きい方がいいことは確かだ。

 官位が上がれば率いる兵数も増え、数いる武将たちを指揮することもできる。

 今上にいる指揮官よりも、兵を操る技術が上手い自信はある。


「今はまだね。俺は曹操よりも小さく、名声もない」


「大きな功績を得てから?」


「名声がなければ兵も集まらないよ。まずは機会が欲しい」


「そのための下準備ですか? 冀州は」


「まあ、そんなところかな。早めに頼むよ。曹操辺りが既に間者を送ってるだろうし」


「御意」


 黒永が部屋を去る。

 やはり、不思議に足音が聞こえない。布の擦る音だけだ。

 しばらく、その静かな音に耳を傾けて椅子にもたれかかっていた。

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[気になる点] 後漢の任官制度は郷挙里選では?
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