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父が死んで初七日も過ぎた頃だった。
「可哀相に、可哀相に…こんな娘をもって宏は可哀相だ…」
祖父母が泣きながら口々に私に言い放った。
私は何も言い返さなかった。
だって私は人に恥じる様な生き方はしていない。と、言うより人の目などどうでもよい。
私は私だけを信じる。
早朝からひどく吹雪く、大雪の日だった。
何の前触れもなく、父が倒れた。「右半身が動かない、病院へ連れてってくれ。」
私が聞いた父の最後の言葉だった。
急いで妹を起こし、父の側についているように言った。
母と私は、車を出すため吹雪の中、必死で雪掻きをした。
なんとか道を開け、妹と私で父の両腕を担ぎ、車に運んだ。
ふと、思い出した。
この父の両腕に、私達二人姉妹は小さな頃よくぶら下がって遊んだ。
まさかその父を担ぐ事になるとは。
母は運転、妹が付き添い、私は留守番。
三人を見送った。午後3時、母と妹が帰ってきた。
「なんだかね、MRもCTにも異常は見当たらないんだけどね、一応入院して詳しく検査するんだって。」
入院用の荷物をまとめ、母と妹は、また病院に戻って行った。特に慌てる様子でもなかったので、私はまた留守番で家に残った。
父は普段から大変な大酒飲みだったので、私は
「どうせ酒が悪く回ったんだろ。」
そんな風に軽い考えで居た。
30分も経ってなかった。携帯が鳴る。妹からだ。泣いている。何を話しているのかわからない。
耳を澄ました。
「お父さんが急変した!早く来て!」
私が病院に着いた時、父の意識はもぅ無かった。呼吸器で息をしている。身体中、パイプだらけ。いくつもの点滴や機械に囲まれていた。