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~To Me~  作者: hiro
4/5

~夜の章~

 

   ―WISH―



水面に揺らぐ

月光の粒

この手の中に

結ぶことは

叶わずに――。


ただ、孤舟を連れる

せせらぎに

この身を任せるほか

術を知らずに……



暗い渦の中

白雪の粉

呑まれる姿は

この身に同じ――。


ただ、ふりゆく先の

運命に

あらがい生きる

術を知らずに……



凍える月夜の

黒い海原に

 ひとり呟く

  願いの言の葉


雫となって

 漣に揺られ

 誰の瞳にも輝くことなく 




死にゆく感情

消えゆく体温


残るものは


疑心と拒絶



どうか、消えてしまわぬように


そう望んでも

薄れてゆく

胸の中に宿る星……



 遂には

左右も見失い

久遠の時を

波に預ける

定めでしょうか――?

 

 

 

 

 

  ―幼な夢―

 

息吹が宿った者たちは

浮雲のようにやがては


 流れて

  姿を変えて



たとえば

 夕日の緋色の輝きに

 無情の時を

 忘れた日々も


たとえば

 星が空翔る時を信じて

 待ちわび

 眠りについた日々も



今では 濃霧に埋もれ


行き着けぬキヲク――。

 

 

たとえば

 差し出された手の感触を

“愛”と疑わず

 呼べた瞬間も


たとえば

 暗い十字路の真ん中で

“夢”を揺るがず

 抱けた瞬間も


 今では 絡まり纏わり


 手繰れぬキヲク――。  

霞む景色 薄暗い雲

深海のように

光なき感情


鈍る視界 掠める冷風

少しずつ立ち消える

“夢”の鼓動……



おさな夢

忘れし者の末路は

ただ、


死へと向かうものなのですか――?

 



ただ、

“時”の水面を揺蕩い

ただ、

 命の輝きをすり減らし

ただ、

 風に曝されるのみですか……?


  それは、

“生きている”と

 いえますか――? 




木々の狭間 朧月よ

誰がために

輝き照らす?


指の隙間 漏れ出づる光

この中にも

その光があれば



おさな夢 思い出し

眠りつく日まで、


共に歩んでいけるのに――。


 


息吹が宿った者たちは

浮雲のようにやがては



 流れて

  姿を変えて



 


 

 

   一輪花

 

春霞のように

もやのかかった

記憶の彼方

 

手の届かない

もどかしい部分で

今も息づく物語

 

『道端の花は

 ただひとりきりでも

 風に抗い

 冷たい夜を越える』

 

――それを語ったのは

  母か 父か

  はたまた別の誰かか

 

せせらぎのように

穏やかな声を

 まだ覚えている…… 

 

 

 瞳の端に

ふと胸を張る

 一輪花……

 

 昨日の雨で

その花びらから

 なみだの雫……

 

 泣いていた――

人々に

忘れ去られたようなところで

   ひとり……

 

 

 

蕾がもがれそうな

吹き荒ぶ

激しい嵐の夜

 

根が凍えそうな

蒼白の底

閉ざされた記憶

 

 道端の花は

 その度に

 露でその頬を濡らし

 

そして陽を見つめる……

 

 

その瞬間の香りは

 虚無か 儚さか

 はたまた言葉の及ばない

“何か”か……

 

 

ただ、その瞬間の

生身の芳香を

  『いのち』と

呼ぶのだろう――

 

 

 麗らかな日より

香しく花ひらく

  一輪花……

 

 幾度も耐えた

久遠に思える

 星絶えた夜……

 

 

 問い掛けた……

人々に忘れ去られながらも

 強く根を張る理由を――

 

 

 

 

 

 そこには……

     あった

 

光の螺旋を


奈落の底で

 瞳に宿し


 手に入れた者だけが

呈することが出きる

  “希望”が――。 


 

 

 生きる為に

逞しく咲く

 一輪花……

 

 その『いのち』に

穏やかな胎動を

 見出す瞳……

 

 

 それこそが

生きとし生けるもの

全てが

 

 生きてゆく

 意味なのかもしれない――

 


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