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第6話 外交晩餐会事件 ― 各国の狂宴と、月影の女

晩餐会会場――煌びやかなシャンデリアの下、

ナタリーは入口で既に震えていた。


「な、なんか今日……いつもより視線が刺さってない……?」


ルチア議長が静かに言う。

「刺さってるよ。今日は各国の首脳が勢揃いだ。

 全員、君に会いたくて仕方がない連中だ。」


「こわい……」


ルチアはそっとナタリーの肩に手を置く。

けれど、そこへ――。


「ナタリー様ぁあああ!!!!!」

「こちらへッ!! 我が国特製の椅子を捧げます!」

「いや! まず我が国のVIP抱っこ席に!」


抱っこ席とは???


ナタリーの両側に各国のお偉いさんが殺到し、

彼女の取り合いが勃発した。


「ナタリー様には、砂糖菓子を!」

「ナタリーちゃん、こっちの椅子ふわふわだよ!」

「総攬者殿、我らの国章を刻んだ金フォークをお納め…!」


「いやフォークは一本あれば十分だよ!?

 ていうか抱っこ席ってなに!? やめてぇぇ!!」


ナタリーの悲鳴は宴の熱気にかき消される。


ルチアの目がスッと細くなった。

「……解散しろ。今すぐだ。」


“笑顔のまま圧を出す議長”に、各国の大人たちがビビって少し後退。

だが、すかさず別方向からレオンが滑り込む。


「ナタリー! この晩餐会のために"ナタリー専用子供プレート"作ったから食べて!」

「レオン、わたしもう11歳なんだけど!」

「うん、でも見た目が……ほら……」

「言わないで!!!」


ルチアがレオンの首根っこをつかんだ。

「レオン。君は後で話がある。」

「ひ、ひぃ……!」


晩餐会はそれでも止まらない。


各国の音楽隊はナタリーのためだけの曲を勝手に演奏し、

料理人たちはナタリーの好物(聞いたこともない)を次々差し出し、

しまいには外交書記が突然ナタリーの等身大パネルを持ちだした。


「ナタリー様の美の象徴として――」

「いらないいらないいらない!!」


完全にカオス。

ナタリーの精神はすでに限界に近かった。


そんな彼女の手を、ルチアがそっと握る。


「ナタリー。控室に行こう。これ以上は……つらいだろ?」


その声音だけは、会場中の喧騒とは別の温度を帯びていた。

ナタリーは胸をぎゅっと締めつけられるような気持ちで、うなずいた。


ルチアはナタリーを静かに抱き寄せ、

群がる各国代表を鋭い視線で押しのけながら退場した。


◆ そのころ、会場外――


夜のバルコニーに、ひとりの 女 が立っていた。


漆黒の外套。

長い髪が夜風で揺れ、月光の中で紫の瞳が妖しく光る。


「……ナタリー、あなたを…私は…。」


月が雲に隠れた瞬間、

彼女の姿も影と共に消えた。

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