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真実は必ずしも明らかにしない方が良い ①

すでに公開済みの「残酷な二つの真実」を読みやすいように真面目に校正しました。

この文章はNotionで書きました。これは間違いでした。Notionは文をブロックごとに管理するため、そのままコピーペーストすると、markdown形式で貼り付けられます。これを直すのが面倒で、そのままにしました。

しかしこの「真実は必ずしも明らかにしない方が良い」は、読みやすさを重視し、markdown形式をプレーンテキストに書き換えました。内容は「残酷な二つの真実」と同じですが、構成を変更したので、少し違ったものになっていると思います。

● ??

目を覚ますと部屋は暗く、何時なのか全くわからない。腕時計もよく見えず、スマートフォンも周囲には見当たらなかった。どうもおかしい。


ここはどこだろう?


どこにいるのだろう?


というのも、自室で眠っていて目覚めたのであれば目覚まし時計であるとか充電器、電気をつけるためのリモコン、その他大事なものなどの配置を大抵の人は把握している。しかしそれら全てを見つけることが出来ず、また、ベッドに普段は眠るのだが、どうも違う。全身に痛みがある。


天井を見上げているようだが、それすらも暗くてよく見えなかった。


なんとなく「知らない天井だ」と有名になりすぎた言葉を呟いてみた。7秒、数えた。その間、息を止めていた。誰も何も返事をしない。


少なくとも独りのようだ。


痛みに耐えつつ身体を起こし、周囲を手で探った。眼鏡さえあればどうにかなるという思いで探したが、どこにもなかった。それにしても何だろうこれは、木の板?と思われるものが自分の肩のあたりにある。目を凝らしてよく見てみた。木の板の上に布団があった。


ああ、そうか、わかった。ベッドから僕は何かしらの理由でもって落ちていて、そこで眠っていたのだな!なるほどなるほど、なあんだ、全然「知らない天井」なんかではなく「知っている天井」だったのか。とそこまでは良かったのだけど、ベッドの配置に違和感があった。


ベッドから落ちたのであれば左手側にベッドがあり、右手側は1メートルほどのフローリングとなっているはずだ。


ところが左手側にベッドがあるのは間違いないのだが、右手側が壁になっている。壁が移動するはずはない、ベッドが壁側に移動したと考えることが妥当?


そんなことはあり得ない。つまり思っている配置とは逆になっている。


あらあら、いよいよこれはおかしいね。とベッドの上によじ登り、ああ、そういうことかとすぐに理解した。


まず部屋にベッドをどのように配置しているかというと。


ベッドの上に仰向けになると、左手側が壁。ピッタリとベッドを壁にくっつけている。枕の上のほうもまた壁だ。そして右手側の壁には手を伸ばしても届かない。フローリングだからね。


ベッドから落ちて僕が眠っていた場所は一体どこだったのか。


そこはベッドから左手側、つまりベッドと壁との間だったのだ。


そしてベッドの配置に違和感があったのは、左手側にベッドがあり、右手側が壁になっているということだった。


そのような状況になるには?


簡単なことだった。実際にやってみたら良いよ。全くおすすめしないけど。


まず枕に足を乗っけて、その状態で眠る。すかさずベッドと壁との間に落ちる。そしてそのまま眠る。そうすると左手側にベッドがあり、右手側には壁があるはずだ。


謎がひとつ解けましたね!


いやぁよかったよかった。一件落着。


真実はいつもひとつ!


僕はどうやらそうやって、枕に足を乗っけて眠ったのだろう。阿呆なやつだな。


そして、部屋が少しずつ明るくなって来た。日が登り始めたようだ。ということは今は朝だ。眼鏡はどうしても見つからなかったので、スペアの眼鏡を探して掛けた。白縁の眼鏡だ。この眼鏡は度が強すぎる上に乱視を矯正するものがない、という眼科医の指示で、別の眼鏡を作ったのだった。


先ほど目が覚めたとき、自分がどこにいるのか混乱したが、それでも「知らない天井だ」などと独り言を呟くほどの余裕はあったのだけど、眼鏡をかけて世界がはっきり見えるようになると、目覚めた時よりも激しく混乱した。


パニックに陥り呼吸が乱れ、どこかに人がいるような気配を感じて、部屋を見回した。


誰かいるように感じるのはパニック発作の時にいつも感じるものだと知っているので、まずは呼吸を落ち着けることにした。死ぬかと思うくらい苦しい。僕の場合、これが2,3時間しないと回復しない。

しかし、これはどういう状況なのだろう。部屋が散らかっているのはいつものことだ、度を越えている散らかり具合だ。


そして気味が悪いことに、部屋にあるものの、あらゆる「ネジ」が外され、分解されていた。


そんなことある?マジで?

時計を見た。6時30分。


日付は……スマートフォンを手に取った。バッテリがなくなっており、電源が入らなくなっている。TypeCのUSBケーブルを見つけて、それをスマートフォンに差し込んだ。そして、1分くらいしたら電源を押す……しかし、苦しくてそのままベッドに倒れ込んだ。


● !!

倒れてから1時間くらいが経過した。呼吸は元に戻った。

スマートフォンの電源を入れる。日付を確認する。2022年7月17日。なるほど?……?


いや、しかし……昨日は7月12日、だったような気が……?


この事態は自分だけではどうにもならない。なので、まずは人に頼ることにした。


ふかがわゆみ。お付き合いをしている彼女、ということになっている。なので、Sheではない。GirlfriendもしくはPartnerだ。西暦2000年に生まれた子なので私の15歳年下だ。でも僕よりずっとしっかりしている。


彼女に電話しようと思い立った。

この状況を説明して何が起きているのか一緒に考えてほしかった。


LINEで通話ボタンを押す。朝早くにかけたのだけど、ちゃんと出てくれた。


僕は身の回りで起こっている異常事態について細かく説明をしたのだが、彼女はそれほど驚いたりしなかった。僕が言ったことに対してほんのちょっと間を空けて返答した。うん、とか、うんうん、とか。どうもそれも不自然でならない。もっと驚くべき異常事態だと思うのだけど。こういったことに彼女は慣れているのだろうか?

よくあることなのか?

あらゆるものの「ネジ」が外されるということはよくあることなのか?


「ねえ、こういう……その、色々なもののネジが外されて分解されるなんてのは異常事態だよね?でもさ、これってよく起こることなの?」

「全くといっていいほど起こらない出来事よ」

「そうなの?しかし、ふかがわゆみは、どうも平然としているように思える」

「それは……ちょっと前に、同じようなことがあったからよ」

「そうなのか、ふかがわゆみは色々な出来事に出くわして、日々成長しているんだね」

「それはそうね」


ひとまず、部屋には自分以外誰もいなくて玄関の鍵も閉まっていることを確認した。

状況を彼女に説明し、それを聞いてくれた。僕は異常な状況であることを認識しているが、少し安心したからか、急な眠気が襲ってきてそのまま眠ろうとベッドに横になった。パニックを起こしたあとなので、疲れ切っているのもある。


「今、7月17日の朝8時、だよね」


「そうね」


「あの子はえっと……」となにやらあらわれるが、そこから自身の呼吸についてのみ考えて「間もなく眠りにつくだろう」と、声に出して呟いた。考えてはいけないものだ。


「おやすみ」


「おやすみなさい」


● 2022年7月18日

僕は「うたた寝」ということができない。

乗り物の中だとか、何かをしながら眠るということがうまくできなかった。

であるから、例えば東京へ行く時に新幹線を利用するよりも高速バスを利用するほうがかなり安くなる。それはわかっていたが、夜間走る高速バスでは眠ることができないのですごくしんどい思いをすることがわかっている。新幹線を利用する以外に選択肢はなかった。


……一体僕は、何の話をしているのだろう。まあ、僕の特徴のうちのひとつを話したんだ。うん、こういう話がそれるみたいなこともまた特徴といえるのだろうけれどもね……。


さて、どうやら昨日眠りについて、まるまる1日経過していた。7月18日の7時。23時間眠ったようで、それはよく自分の身に起こる過眠だった。たまにあることで、それよりも逆に眠れない日のほうが圧倒的に多かった。睡眠導入剤を処方されていたが、それでも眠れない。重度の不眠症で、眠れない日は横になって目を瞑っても2・3時間意識があるので、その時間がもったいなく感じた。いっそのこと眠らないと決めて起きているほうが良い。


目が覚めたあとに分解された物を改めて観察した。


大事なラズベリーパイも分解されており、その他にも服をかけるためのハンガーラックのキャスター部分のネジが外されていたり、電気ケトルも分解されてネジが周辺に転がっていた。そのせいで部屋の中は様々な物で散らかっていた。


失くなったものは特に思い当たらなくて、金も盗られていない。むしろよくわからないものが増えている。


スマホの携帯式充電器、1つしか持っていなかったと思うのだけど、知らない充電器が4つ置かれている。これは犯人が残した重要な手がかりだ。もしくはなんらかのメッセージかもしれない。


それにしても犯人はどうして「分解する」ということに固執しているのだろう?


人の物を分解することによって狼狽する姿を眺めて快感を覚えるようなヤツなのかもしれない。放火犯と似たような部分がある。


緊急性はないが、110番に連絡することにした。緊急性がない場合にどこに連絡すべきなのかがわからなかった。


電話をかけ、名前などの情報を説明し終わると、


「またあなたですね?」


と、斬新なジョークをオペレータが放った。


しかし「また」というのは本当に「また」という意味だった。実際に7月13日(5日前)に僕が110番へ通報し、警察官が僕の部屋を調べに来たらしい。


んなわけないわ、何も通報するようなことはないと言っても、揺るぎない真実として、7月13日、僕、こと、玄律暁(げんりつあき)のスマートフォンから110番通報して警察官2名が現地に向かった。ということを丁寧に説明してくれた。うそぉん、そぉん、なにしに来たん?

来たんか?

あれ、来たかなぁ?


「泥棒が入ったとか、ハッキングされたのかもしれないだとか、そういう話をしていたのに突然、君の名は?なんて真剣に言ったりして支離滅裂でした」

とのこと。やばいじゃんそれ。誰かがなりすまして通報したということだろう。しかしそのせいでそんな評価をされてしまった。


そりゃそうだ。そんな言動するヤツは危険な人物だと認識される。


「でも今日はちゃんとしております、先日のあなたとはまるで別人のような印象を受けます」


それはそうだろう。先日の僕は、別の誰かだ。


スマホの発信履歴を見た。


あっ、うわわあ、7月13日に110番してる。マジで?

マジだ。どうやって犯人はそんなこと出来たんだ?


結局、今日は警察官は来ないということになった。また「先日も言ったように今後は中原警察署へ直接お電話してください」


とのことだった。不安が募っていく。


◉ 考えをめぐらす

阿呆な頭だが、なんとなくひっかかったことがある。というのもこのような技術を僕は知っていて、それがひっかかったからだ。そこから考えてみる。


■ SIMスワップの可能性

あり得ることとして、SIMスワップ(SIMジャッキング)という非常に高度なハッキングを誰かが僕に対して仕掛けたという可能性。ソーシャルエンジニアリングだ。そのハッキングに必要な、なりすまし技術の延長線上で「110番通報する」ということは理論的に可能だ。SIMを完全に乗っ取るので容易に発信できる。


しかし、なりすまして110番通報した場合には足がつくリスクが高い。僕の端末ではないものからの発信となるので非常に重要な情報をキャリアに足跡として残す。


SIMスワップの標的となる人物はたいてい著名人だ。


資産を多く持っている人物のSIMを乗っ取り、本人になりすましてその資産を移動させることが主な目的であり、発信をするということは可能だけれども事例として見たことも聞いたこともない。重大な犯罪なので特に捕まるわけにはいかない。


今回、僕に対してSIMスワップを仕掛けるという大きなリスクを犯して得られるような資産や情報は絶対に無い。


だって生活保護者だぞ?天下の生活保護者だよ!


つまり、僕になりすまし110番通報をすることを目的としてSIMスワップするなんてことをする阿呆の極みみたいな人はいないと思う。いたとしたらどうしようもないキチガイ様か、僕が狼狽する姿を眺めて異常なほどの快感を覚えるようなキチガ……あれ?

やっぱもしかしてそれ目的?


つまり。


ぴかーん、って感じのヒラメキが走った。ロマサガの閃きシステムのように。


対象者の持ち物や家具を分解する。記憶にない110番通報をする。そういった状況を知り狼狽している僕の姿を眺めて異常な快感を得る変質者が犯人である。


そこに帰着。


そういう途方もない変質者がいる……得てして変質者ってのはそういうものだ。


■ SIMスワップの可能性は消えた

しかし、僕の**端末の発信履歴に110番通報をした痕跡が残っているということが「SIMスワップ」はされていないということを証明している。**7月13日に110番発信をしている履歴が確かにあるのだ。


しかもSIMスワップされていたとすると、彼女と通話することもできないはずである。


その線はないということだ。なあんだ。よかったよかったぁ。


いやいやよくない、振り出しに戻っただけだし、僕の端末に誰かが実際に触れて7月13日に110番通報をしたということが、ほぼ間違いないということが確定しつつあることから、より気持ち悪さが高まっている。


■ 何をあれこれしてるん?

そういう風にあれこれ考えたりして、いったい僕は何を阿呆な頭にひっかからせようとしているのか?

まずは部屋を片付けはじめたり、普通の生活が送れる状態に戻さなければならないのではないか?

そんな風に仰る方も多いかもしれない。

それは至極ご尤もです。まさにそのとおり。そう、なのですけれども、僕はそもそも普通の生活を送っていなかったのです。そのため、現実的な生活を送るというよりも、この耐え難い不快な状況を何とかしようと必死に考えているのです。


SIMスワップという突飛な可能性にまで思いを巡らせるほど、藁にもすがる思いだったのだ。誰かが実際に端末に手を触れて使用したという可能性を「否定」出来るような方法についてあれこれ考えをめぐらせているのだ。


気持ちの悪いできごとを否定したくなるのは当然じゃない?


自分の身に起きた曖昧で嫌な感じのできごとは、否定したくなる。


■ 犯罪に関わっている可能性

例えば悪い相手から、睡眠導入剤をカクテルに混ぜたものを知らぬうちに飲まされ、不本意に記憶のないことをされたりしたとする。そういったできごとは否定し、あるいは無かったこととしたい、というのが人間の正しい反応だろう(後でまた述べますが、健忘は何度か経験している)。


それはつまり「事実や真実」を知りたくないのだ。


けれども真実を明らかにしないといけないことが多い。近年は特に多くなってきている気もする。


例えばあなたが被害者で検察が起訴した場合は嫌な記憶に何度もアクセスすることになる。知りたくもないできごとを明らかにするという、自身の人間的な反応と、真逆のことをすることとなる。


しかし……まあ仮に、なんだけど……さっきから仮の話ばかりしているような気がするのだけど、続けますね。


刑事・民事いずれの場合でも当然ながら法廷は真実を明らかにするための場だ。なので、そのような時には検察官も弁護士も、そして裁判官も全員が、被害者に最大限の配慮をしながら、事実を明らかにする作業を進めていく。被害者は嫌な記憶を明らかにしていく。


そのようなプロセスに耐えられないと思ったら、そもそもそれは無かったことにする。それはおそらく、認知行動療法といった専門的アプローチが必要となるだろう。

最悪誰かに催眠をかけてもらうしかないのかもしれない。心理学の手法としての催眠。一生その耐え難いできごとを忘れ抜くにはそういった手法を用いるしかない。


■ 疲労困憊

そんな風にして、目の前で起こっている様々な現象ひとつひとつについて考えることはものすごく疲れるものだ。


その線を無意識に探しているから、その疲労感はそうなってみないと誰にもわからないだろう。


端から見ると、僕は何もしていないように見える。実際、目に見えて行っていることは特にない。しかし様々な線からひたすらに事実を覆す方法を考えているのだ。そして、疲労困憊する。


プロ棋士が次の一手を考え抜くようなことに近いと思う。


◉ 真実は必ずしも明らかにせずとも良い

真実を明らかにするということ、そのプロセスはかなりの苦痛であることから、忘れてしまったほうが良い場合が多い。世の中の多くの人はそうやって生きている。うまいこと、もうそれはそれは器用に綺麗さっぱりと忘れることが出来るのだ。寝れば忘れる。それはまるでRAMのようであり、シャットダウンすれば、記憶は一切残りません。


ところがそれがうまくできない人もいる。そんな人は真っ先に精神を病む。真っ先に、というのは、いずれ誰もが精神を病むという意味合いで使用している。


今回のできごとについては絶対に忘れてはならない。


明らかにしないといけないことだとなんとなく思う。それほどまでに、あり得ないことが目の前で起きている。そして、僕は多くのことについて忘れていると思われる。


疲れた、とベッドに伏せる。ベッドに伏せるといつも悲しいフレーズを思い出す。


あの子は死んだ。取り返しがつかない。


これは悪いクセで、ベッドに伏せるということが、そのフレーズを思い出すという行動に結びついている。これでいつも鬱屈とする。


「あの子は死んだ」で僕の頭の中を検索すると、その中で重大な「あの子」についての結果は4件ヒットした。


……あれ?

4件?


4件目は誰だ?


……………………これが最も重要なことだった。


スマートフォンを操作して、あの子の名前を探す。見つからない。あの子と約束をした予定についてやりとりをしたLINEのトークを探した。見つからない。どうして忘れていた?


もしかして、あの子が死んだということは事実ではないのでは?


◉ 4件目の「あの子」を思い出す

すぐに、ふかがわゆみにLINE通話をする。出てくれた。


神島亜佑美(かしまあゆみ)。あの子のことを何故か忘れていたけれども思い出した。どうして忘れていたのか不可解だ、ちょっとそれはあり得ないと思わん?」

「そうね、ついこの前の出来事だから忘れるはずがないよね」

「そうよな、でも連絡先が消えているし、LINEでのトークを削除してしまったようなんだ」

「……、そうなのね」

「ねえ、他にもおかしいと思っていることがあるんだけどさ」

「……、なあに?」

「そのな、ふかがわゆみ。君の、その間、だよ。なにかしながら僕と話をしているよね?」

「……、さすがの第六感的直感の持ち主だけあるね」

「そうだろう、そして、その間で君がしていることは……ぼくのきろくをしている?」

「そうだよ」

「……すっごいね、僕の第六感的直感は今日も冴えてるねぇ……えっ、えっ、なんで記録とってるの?」

「……、それは内緒」

「ええー……そうなのね。じゃあ重要なことを聞くよ」

「うん」

「かしまあゆみは、死んだのだよね?」

「うん、そうだよ、律暁さんの友人のかしまあゆみさんは先月末に死亡したのよ」

「……やっぱりそうだよね。どうして僕、そんな大事なことを忘れていたんだ……」

「……お願いだからこれ以上、自分を責めたりしないで」

「自分を責めたり?」

「うん」

「していないつもりだけども」

「しているの、しているから、今回のようなことが起こっているの」

「そっか……ふかがわゆみが僕のことを気にかけてくれていて良かった。記録をとってくれていてよかった。全部知っているんだね」

「外から観察した律暁さんのことについてはね」

「よし、じゃあさ、どうして僕がこういう異常事態に陥ったのか、順を追って説明をしてもらっていいかな?」


彼女はしばらく黙っていた。考えているようだった。


「んん……とね、今日はダメ。明日以降に話すよ」


「ええっ……そうなの?そうなのか、うん、そうと決めたら絶対に譲らない、ふかがわゆみの言う事だから、そのとおりにするよ」

「うん、そうしてください」

「ああ、それとね、ここ1週間くらいかな?ほとんど記憶がないんだ。まあたぶん過眠を繰り返していたからだと思うんだけど、それにしてもおかしな感じがする」

「……、うん、わかった、ゆっくり休んでね」

「うん、そうするよ」

「おやすみなさい」

「おやすみ」

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