桑の花
「ねえ、あなたは一体誰なの?どうしてそんなにわたしのことを知ってるの?」
出会いは突然だったと思う。
いつも通り朝起きて、支度して、学校へ行って、授業を受けて、昼食を食べてまた授業。そしていつも通り帰路につこうした。
道の途中だった。ごく普通のありふれた景色。ビルがあって、コンビニがあって、色んな所で人が行き交う。その中で普段は見かけないものを目にした。行き交う人々は全く気にも留めないが。
まず黒くて長い髪の毛が目に入る、腰程度まであるだろうか。どうやら手入れされてないらしく、無造作に伸び散らかしていた。
その次に目に入ったのは制服、わたしが今来ている制服とよく似ていることから同じ学校に通っているのだろう。ただその制服はボロボロで、足跡のような汚れも着いていたりしている。
そして顔。無造作に伸びた髪の毛や、俯いているので分かりずらかったが目が虚ろで表情がとても暗い。
そして、私ととても顔が似ていた。
汚れの着いた制服や表情などで彼女に何があったか、想像は容易いだろう。
しかし、わたしは目の前に居る彼女のことを全く知らない。不登校ならば、わたしが知らないのも、髪の毛が乱れているのは理解できる。だが制服の汚れは落とす筈だろう
そんな違和感を感じながら見ていると、こちらの視線に気づいたのかわたしの方へ向かって一言こう発した。
「金木 凛ちゃん、だよね。」
小さい声だったが確実に聞こえた
金木 凛。それは確かにわたしの名前だった
ぎょっとしてどうして知っているの、と発言する前に彼女がまた言葉を発した。
「いじめられてるんだってね、大変だね。」
わたしは彼女の事を知らないのに、彼女は一方的にわたしのことを知っている。それに対して恐怖を感じ始めた。ねえ、あなたは一体誰なの?どうしてそんなにわたしのことを知ってるの?
すると彼女はハッとして
「ごめん、自己紹介をしていなかったね。私は岸。岸 涼音っていうの。」
聞いた事のない名前だった。
戸惑いすら感じはじめているのを涼音は感じたのか、少し顔を曇らせながらこんなことを話し始めた。
1年前からだったかな、今となってはもうあやふやなんだけど。家が貧乏だからって理由で虐められてるんだよね。親にも迷惑かけてられないと思ってずっと我慢して学校に行ってたの。
でも、4か月前にとうとう耐えきれなくなっちゃって。そこからずっと不登校で、学校行けてないんだ。
ごめんね、初対面なのにこんな暗い話しちゃって。と話を終わらせる涼音。制服がボロボロで汚れがあるのも、伸びきった髪の毛が乱れているのも、そういった理由だったんだ。
ねえ、涼音が良ければなんだけどわたしの家に来ない?髪の毛ボサボサだと色々と不便でしょ。
わたしでも何を言ってるか分からなかった。が涼音はわたしの思ってる以上に乗り気だった。目が輝いてる、先程の虚ろな感じは何処へ行ったんだかとも思ったが、元気が無いよりはある方が幾分か良い。
そういう風なことを考えながらわたしは涼音を連れて家まで帰った。




