1.漆黒の傭兵
黒髪、黒の瞳に黒のジャケットを羽織った――――全身黒尽くめの青年が目の前にいた。
私は何が起こったのか理解できなかった。
確か、目の前には魔物であるオークが居て、手に持った棍棒が私目掛けて振り下ろされた筈だ。
死んだ。私の命運は此処で尽きたと思い、眼を閉じた。
そして、眼を開くと異国の剣を持った青年が其処に居た。
「オォォォォォォォォォォォォッ!!」
オークが雄叫びを上げるが、青年は怯みもしない。
青年は何十倍と大きいオークに向け、握っていた剣を向ける。
青年は一言も声を発さずに地を蹴った。
オークの間合いに入るまで一瞬。
「オォォ?」
オークは気の抜けた声を上げた。
青年は剣を振り下ろす。
斬線は三日月に、蒼い軌跡を残す。
パン。と、青年が剣を腰にある鞘に収める。
瞬間、オークが凍りついた。
パラパラと空気中の凍りついた水分が舞う。
それは月明かりでキラキラと煌いた。
その光景は幻想的で私は思わず息を呑んだ。
「オーーーーイ、大丈夫か?」
「え?」
青年の呼びかけにハッと私は我に帰った。
■
「ノエル様ッ!!」
俺がオークに襲われていた少女を助けて数分。
少女の名前と思われる言葉を叫んで走ってきたのは女騎士だった。
その女騎士は俺を見るなり、剣を抜き・・・・・・
「覚悟ォォォォッ!!」
と、叫んで斬りかかって来やがった。
慌てて横へ飛び退き、講義する。
「ふざけるなッ!! 何で俺が襲われる!?」
「黙れぇ!! ノエル様の命を狙う者・・・・・・覚悟ッ!!」
何やら途轍もない勘違いをされている様だ。
と、少女が俺の目の前に立った。
「アリア!! 彼は私の命の恩人です!!」
その言葉を聞くと女騎士は眼を見開き、剣を納めた。
俺は「フゥ」と嘆息し、安堵する。
「いきなり斬りかかって来るとは、ビックリしたぞ」
「・・・・・・申し訳ありません」
女騎士は申し訳無さそうに頭を下げる。
一緒に助けた少女も頭を下げた。
「本当に済みません」
「いや、別に死んでないから二人とも頭を上げてくれ・・・・・・なっ?」
二人の女性に頭を下げられると、此方の方が申し訳ない気に為ってしまう。
俺は慌てて頭を上げるように催促する。
しかし、それだと女騎士の気が済まないらしい。
挙句の果てには土下座までし始めた。
「本当に申し訳ない。ノエル様の命の恩人を斬ろうとした私など――――」
「頼む。土下座しないで、御願いだからさ? あの、何? ごめんなさい」
別に悪くもないのに謝ってしまう俺。
何か場がカオスとなって来たので、「女騎士へ土下座をやめるように言ってくれ」と、少女に頼む。
少女の言葉で女騎士は土下座を止めた。
そんなこんなで現在、少女と女騎士二人の馬車の中にいる。
「私はノエル=ソル=アーシェルです。そして、彼女が――――」
「アリア=キルアだ。アーシェル家に仕える魔法騎士だ」
二人はそう自己紹介した。
ならばと、俺も自己紹介しようと思う。
「俺は如月奏夜だ。って、何だその顔?」
ノエルの顔が何やら疑問有りみたいな顔になっている。勿論、アリアもだ。
「いえ、キサラギソウヤって名前なんですか?」
「ウム。草の名前か?」
ノエルの疑問は分かるが、アリアの「草の名前か?」には多少なりとも傷ついた。
俺は如月草ではない。
つーか、如月草って何!?
「あ~~~~、ソウヤ=キサラギって言ったら分かるか?」
「なるほど、ソウヤが名で、キサラギが家名か」
と、アリアが納得した顔をする。
俺は頷くと言葉を紡ぐ。
「まぁ、そうだな。ちなみに俺は旅をしながら傭兵をしている」
「だから、あんなに強かったのですね」
ノエルは納得したかの様な表情をした。
それを見て俺は思わず苦笑した。
まぁ、そう思って貰う方が俺にとっても都合が良いのだが・・・・・・
はじめまして、作者の春月です。
この物語は旅の傭兵・如月奏夜の物語になる予定です。
主にバトルになるかもしれません。が、恋愛要素も入れていきたいと思っています。
文才が無いかも知れませんが、温かい眼で見守っていただけたら幸いです。
これから宜しくお願いします。
誤字脱字、感想などなどありましたらコメントを御願いします。