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『ひざのくに』年代記

文化祭〜〜わたくしのこえを羽ばたかせて〜〜【1000字。空行含め1100字】

作者: 鴉野 兄貴

 天使のようなお言葉とお母様は辿々しくも優しくおっしゃっていました。

 つばさを羽ばたかせ、雨粒のように踊る音楽だと。



 彼女はことばを話せないのでわたくしたちのため後より勉強してくれたのです。

 だから彼女は人より余分に抱きしめてくれます。



 お父様はかなり話せるほうですが、時々笑ってしまう間違いをなさいます。

 王宮勤めの殿方は皆貴公子なのに『貴公子』と呼ばれるらしい上兄様とお優しい下兄様はまことお話上手で素敵です。


 年の少し離れた弟と妹たちはそれなりに。

 特に弟はわたくしと話すのが大好きなので妹が妬き、わたくしは楽しい幼少時を過ごしてきました。



 風が吹いてわたくしの頬を撫で天を仰げば、雲が羽ばたく我が『ひざのくに』。

 花薫文字が生み出すものがたりをくちびるで愛で、餅蕎麦の花を育み、古書が紙魚の夢を喰みわたくしは育ちました。



 今日は文化祭。

 わたくしたちの歌を聴いてくださいな。



 皆で喉を震わせユニゾン揃えて手を叩き足で床を楽しく雨粒の如く。

 聴衆の狂人を見る目に掴みはばっちりでございます。



 手を叩き脚を震わせ歌うのです。

 もう聴衆のお声はわかりかねますわ。

 ことばを覚えてからきてくださいな。


 学友が手足を止めて皆様のことばで注意を引く、皆様のおもては侮蔑に嫌悪にそして。


 わたくしも楽器を叩きます。


 鈴の震えこの音楽。

 わたくしこの掌で感じておりますわ。

 皆様の喜び、わたくしも微笑んでしまいますわ。


 隣の学友は脚で語りつつ手を叩き、首を回して語ります。

 そは神を冒涜する歌詞なのですが、たぶん教会の方が多い聴衆のみなさんにはわかりかねるでしょうね。


 彼女はみなさんの言葉でも歌っているそうですが、とても良い声で讃美の歌詞を記すらしいのです。


 ほらみなさまのお顔も変わってきましてよ。

 神さまわたくし膝を叩いて恋の矢をあなたに捧げますわ。


 友柄と手を叩き指をひらめかせ、天使の羽ばたきを歌いますわ。

 花と花。草とお香の薫文字はみなさまわかりかねるでしょうが、香りくらいはわかるでしょ。


 ひざと背骨で背丈を揃え指先でつばさを歌えば、わたくしどももみなさんが喜び叫ぶ香りを感じてましてよ。


 手首足首の鈴を皆で揃え踊れば、華やかな香り床弾むターン。


 あらあなた様。演技中に乱入ですか。

 婚約発表にしては少し演出が過ぎましてよ。



 あゝ神様ありがとうございます。

 おおかみよなんじいとたかうなり。



 ーーProgram No.04 『聾唖者たちの讃美歌』参加者の日記より抜粋ーー

参考資料

映画『天使にラブソングを』

書籍『少数言語としての手話』『ゴリラ裁判の日』『ゾミア 脱国家の世界史』『バキ外伝 拳刃』『RPGマスターになる本』所収付録TRPG『ラウラ・マァの守護者』『合本俳句歳時記第五版(角川)』『デフ・ヴォイス』

論文

日本における手話歌の通史

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasl/30/2/30_2/_pdf/-char/ja

ポッドキャスト

ゆる言語学ラジオ

※主人公は手話で『話せる』ので聾唖ではなく、聾者と呼ぶべきでしょうが、プログラムを書いた方と主人公たちとの意見は異なります。

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