白い男
「見てくれ兄弟よ、ここは東京、夢と現が行き交う場所。ここでは、大志を抱く人だけが生き残る。四谷の街広いだろう?新宿の夜は賑やかだろう!ここでは、一緒に不動産やらないか?」
カフェの一角で、唾を飛び出すほどの白い男と黙ったままの男は座ってる。
「わがL社に入れば、十万円の入社金が貰えて、さらに給料は30万スタートよ!高いぞ!」
「それは、ちょっと…俺はさ、金と不動産に興味ないんだ」
「なーーにをおっしゃる!この世は金よ!俺らの仲だ、高校からの付き合い、まだ信じてくれないか!」
…
「いや兄弟、本当にありがとな!このカフェ結構高いんだ。助かるよ!」
店員さんの不愛想の挨拶を聞きながら二人は店を出た。
「聞いてくれ兄弟、切実にわがL社に入社してほしい。わが社の給料高いよ。じゃないとわざわざあんたを呼ばないだろう!今夜は俺のワンルームに寝るといい。焦るな。もっとここを実感してみーーところで、一晩500円はいかがなのか」
…
「俺の上司もな、俺と一緒に賢い人間だ。聡明同士の間の会話、知ってるかな」
…
「俺と彼女別れたぞ。今度の夏休み俺のところ来てヤるつもりなのに。あの中一の小娘め、俺のことを遊んでやがって、結局歳近いの男を選んでやがって。俺が奴のpaypayに毎月2000円送ったのに。中一の娘がこんな大金使って何をする!俺はな、NTRされたんだと!ちくしょ!!」
…
「毎日朝早いな。俺出勤しないといけないんだ。留守番は頼むぞ!」
…
lineにて
「今は上野駅に向かってる。やっぱり不動産は興味ないし東京も好きじゃない。新幹線のチケットも予約した。さよなら。三日間ありがと」
「なーーにをおっしゃる兄弟よ!はよ予約を取り消せ!俺と東京で頑張れや!」
…
yahoo知恵袋にて
「東京のL社という不動産屋はご存じですか」
「知ってる知ってる!入社詐欺でさ、給料高い高いって言っても、実は全部うそ。給料は契約数につながってるんだ。しかも社員が入社紹介すればボーナスあり。ブラック詐欺会社はよくできたもんだ」