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幼い女神の迷宮遊戯  作者: 悠戯
第一章『幼い女神の迷宮遊戯』
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06.幼い女神とプロの人


 都内某所のゲーム会社『ブイブイゲームス』を訪ねたウルとコスモス。

 副社長のタナカ氏から一通りの会社概要を聞いたところで、ようやく本日の来訪目的について切り出しました。



「一言で表すと、企画の持ち込みということになりますか。仮にも社長の私が言うのもおかしな話ですが」


「ほほう、持ち込みですか。もちろん社長のご提案とあらば最優先で進めさせていただきますが」



 開発のため大人数を長期間拘束する性質上ゆえでしょうか。

 漫画や小説の分野ではたまに耳にする作品の持ち込みという話は、ゲーム会社においては滅多にあることではありません。

 ましてや、まだ作品として形にすらなっていない企画だけの持ち込みなど、普通であれば適当に追い払われて終わりでしょう。持ち込んだのがその会社の社長であるなら、当然話は変わってきますが。



「では、話を始める前に社員の方々を呼んでいただけますかな。この際です、まとめて目の前で実演してしまうのがよろしいでしょうし」


「は、はあ、実演と申しますと……? コホンっ、では比較的スケジュールに余裕のあるチームを中心に声をかけて参りますので」



 タナカ氏はしきりに首を傾げていましたが、大恩あるコスモスの頼みを無碍にすることはできないのでしょう。よく分かっていないまま、会議室を出て開発部署の社員を呼びに行きました。

 ちなみに、まだ出番の来ないウルは出されたお茶菓子を食べ切ってしまったので、自前のポシェットから取り出した『明治』の果汁グミ(ぶどう味)をモリモリ食べています。



「社長、お待たせしました!」


「あれがウチの社長っすか? 日本語で大丈夫すかね?」


「噂には聞いてたけど、すごい美人……」


「そこのめっちゃグミ食べてる女の子は?」



 タナカ氏は二十分ほどで戻ってきました。

 一緒に会議室に入ってきたのは、二十代から三十代くらいの男女が二十名ほど。急な呼び出しにしては上出来でしょう。

 コスモスは業務関係を全てリモートで済ませてしまうため、滅多に会社に顔を出さない社長の顔をまだ見たことがなかった者も少なからずいるようです。

 別に存在を隠していたわけではないのですが、海外のファッションショー会場にでもいそうな銀髪銀眼の長身美女が自分達のボスだなどと言われても、実際に見るまでは実感が持てなかったのでしょう。



「みんな、知っている者もいると思うが改めてご紹介しよう。こちらが我が社の危機を救って下さったコスモス社長だ」


「やあやあ、どうも。ご紹介にあずかりました社長です。ちなみに、こちらのめっちゃグミ食べてるのがウル様です」


『もぐもぐ……よろしくお願いするの』



 これで自己紹介になっているのかは怪しいところですが、ともあれ顔合わせの第一段階は終了。続いて『ブイブイゲームス』側の面々も氏名と開発チーム内で何の業務を担当しているのか簡潔に伝えていきました。これでようやく本題に入れます。



「それで社長、企画の持ち込みということでしたが?」


「ええ。では、論より証拠。実際に体験してもらうのが良いでしょう。ウル様、お願いします」


『うん。じゃあ、昨日創ったやつをまだ残してあるから、そこのドアと繋げてみるの……どっこいしょっと。それじゃあ、ちょっとそこのドアから外を見て欲しいの』



 ゲーム会社の面々は何が何やらという感じで不思議そうにしていましたが、いくら子供とはいえ敏腕新社長が連れてきたのなら邪険にするわけにもいきません。ドア近くに座っていた男性が会議室のドアを開けると……。



「なっ、ななな、何じゃこりゃあ!?」


「そ、外!? どこ、ここ?」


「幻覚? 最近はあんま徹夜してないからしばらく見てなかったけど」



 そこに広がるのは昨日ウルが創ったゲームの中。

 見渡す限りの草原と、あとは街と洞窟が一個ずつの世界です。

 『ブイブイゲームス』の社員達は驚いて叫んだり、夢を疑って自分の頬を抓ってみたりと、様々なリアクションを披露してくれています。



「では、皆様こちらへ。大丈夫、危険はありませんので。というか、危険な生き物や自然環境を配置できるほど設定を練り切れなかっただけですが。この世界をブラッシュアップしていくか、それともまた新しく創るかはさておくとして。楽しく遊べるゲームにするべく、どうかプロの皆様のご意見をいただければと」




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