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猫探しの儀  作者: ちりつも
1/1

プロローグ

「締め切った家の中で、猫が突然姿を消したんです」

「えぇっ!」


 詩織は、勢いよく立ち上がりながら、目を輝かせた。


「あっ、いや、失礼失礼……。うちの事務所、ほとんど依頼が来なくて……。来たとしても、『交番の場所がわからないー』とか、『ビラ配ってくれー』とか、『アイドルやってみないー?』とか。私のこと何だと思ってるんですか! 曲がりなりにも探偵ですよ!? た、ん、て、い!」

「は、はぁ……」


 グレーのパーカーを着た依頼主は、訝しげに詩織を見つめる。


「あっ、いや、失礼失礼……。それで、久しぶりに密室の謎というか、探偵っぽい依頼がきて、舞い上がっちゃって……。たはは……ふぅ……」


 詩織はゆっくりと座り直し、明るい茶色の前髪をささっと整える。


 依頼主は、腰にかかるほど長い黒髪を揺らしながら、居心地が悪そうに首を傾けている。


「ただの猫探しで申し訳ないです……」

「いやいやいやいや! 依頼主さんにとっては大事な猫ちゃん! しっかりばっちり探させていただきます! はい!」


 ……重苦しい空気が流れる。事務所が割と広い分、なおさらシュールな仕上がりになっている。気を利かせたのか、依頼主が沈黙を破った。


「ところで、探偵さんは一人でやってらっしゃるんですか?」


 詩織は腕を組みながら、思い出すように語り始める。


「ほんとはもう一人いたんですけどねぇ……。すぐそこに、書類がどっさり積み重なった机が一つあるでしょ? もともと、私はその人の助手をしていたんです。ただ……まぁ、いろいろありまして」

「あ、そうですか……」

「はい。あはは……」


 一時しのぎにもならない会話。お互い苦笑いのまま、視線だけはなぜか外すことができないようだ。


「……じゃあ早速、現場に向かいますか!」

「……そうですね」


 二人は、その場の雰囲気を払拭するように、無理やり張り付けたような笑顔で、姿勢よく立ち上がった。



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