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白昼夢  作者: 男里 翔舞
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河合慎二(16)の場合 三木第一中学校前 0:57

 道路に停まった車が延々とカラフルな列を作っている。これが動いていれば、せめてエンジンでも掛かっていれば、いつもの景色と同じだという錯覚を抱いていたかもしれない。でも、実際は死んだ様にエンジンを止めたまま、帰って来るか分からない主を待ち続けていた。

 俺は家の物置から持ってきたバールを確認し、辺りに目を向けながら母校の前を自転車で通り過ぎた。バールは親父が仕事に使っていたものを借り出してきた物だが、恐らくそれを気にする者は、もういないだろう。バットは家に置いて来た。化け物になったとはいえ、母親を手に掛けた物をそのまま使う気にはなれなかったからだ。

 化け物に遭遇しても自転車ならすぐに逃げ切れる筈だ、一応そう考え目に付いた自分の自転車に飛び乗った俺だったが、今のところ誰とも遭遇する事もなく順調に道を進んでいた。もっとも、行くあてもなくさまよっていたというのが正しいけれど。

 誰かまともな奴がいてくれれば心強いが、今まで会った奴は皆化け物になっていた。しかもよりにもよって全員知り合いだ。人が居そうな場所に行ってみるのは大きな賭けになる。だけど……

 俺は知らず知らずのうちに市境の橋へと来ていた。市とはいえ狭い、半時間あれば横断出来る程に。

 しかし、そこに橋は無かった。崩れ去っている訳でもなく、封鎖されている訳でもない。まるで突然昇華して消えたかのように綺麗に無くなっているのだ。道路との境目に一台、白の軽自動車がアンバランスに乗っている。

 どうやら俺は市ごと隔離されたらしいと、非現実の様な光景をぼんやりと見つめながら漠然と考えた。

 妙な事が起きてももう驚かなくなっていた。さっきの母親の事件で何かが壊れたみたいに。

 川幅自体はそう広くないし、その気になれば渡り切れるほどの深さだ。しかし、何かがそれを思いとどめた。無理に渡ると、何かありそうだ。そんな気がしてならない。

 逃げられないなら、とことん付き合うしかないかもな。冗談めいた考えだったが、いずれにせよこのままじゃ進展は無い。どうしようかと考える間もなく、腹が鳴った。

 どうやら、体は休息が欲しいらしい。俺は自転車のペダルを踏み込み、フェリカモールへと向かった。腹ごしらえと探索――それが人なのか物なのかは分からないが――を兼ねて行うなら、あそこが一番だろう。

 まだあの時、俺は気付いていなかった。それがただの自分の愚かな判断ではなく、定められた道を歩いていただけだという事に。

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