第三十話 天然or大胆な綾瀬さんと始まるリレー
俺の出番は終わり、残るはリレーのみとなった。
どの団も点はほぼ並んでいてめちゃくちゃ良い勝負だ。
「おーい、翔太!」
「お、クラス1足の早い長谷川裕也君じゃあ〜ないですか」
「一つ間違ってることがある。『クラス1』じゃない。『学年1』だぜ?」
そういえば、裕也は陸上部に入っていて、一年にして既にレギュラー入りしている短距離走の選手だった。期待の新星だな(ハードル爆上げ)。
「じゃ、行ってくるわ!!!」
「おう、頑張ってな!」
なんかいつもよりこいつの背中が大きく見えるぜ—
「あの子めっちゃ可愛くね?声かけてこよっかな〜」
…………いつも通りだったわ。
暫くして綾瀬さんが、テント下に座っている俺の下に駆け寄ってきた。
「みなっち〜!今からだよ!!」
「そうだね。ってかなんで一回こっち来たの?さっきまで待機場所に居たのに」
「あ、見てたんだ〜」
「あ—」
ニヤニヤしてる…まあ可愛いから良いんだけど。顔がいい人って何しても許されそうだから良いよな。実際こうやって許しちゃってるし。
「それより、なんでこっち来たの?」
「んも〜、折角からかえるチャンスだったのに〜〜…まあいっか。それよりなんでこっちに来たか、でしょ?聞きたいのは」
「そうだけd—」
『ど』まで言い切る前に綾瀬さんが俺に抱きついてきた……いや抱きついた!?!?脳への反応が一瞬無くなったわ!でもなんでこんな急に!?しかも座ってるせいで頭をホールドされる様に抱きつかれたせいで……言いにくいが胸で窒息しそうなんですけど!いや力強すぎる!!全然離れてくれねぇ!!!
幸せだと思うじゃん?男性諸君よ。……ちょっとは幸せだが、普通に○ぬよ?
ちょっ、もう無理マジで走馬灯見えてきた。
全力で綾瀬さんの肩を叩く。
「あ、ごめんごめん」
「ぷはっ…マジで○ぬかと思った!!」
「本当ごめーん!でもみなっち成分補給できたから!!」
いや何その成分。あと俺汗かいてるから臭くなかったか心配なんですけど。あ、綾瀬さんの匂いはいい匂いでしたよ!(キモすぎ)なんで女の子ってみんないい匂いなんだろ、そういう星の元にでも生まれたんか?
「じゃ、そろそろ行くね!ありがと!!」
「う、うん。頑張ってね!」
「任せて!!」
…………ず〜っと父親の視線とカメラが気になるけど、まあいいや。
そんな一悶着がありつつ、リレーが始まる。
順に一年、二年、三年だ。
メンバーは男女共に三人の計六人だ。女子は100m,男子は200m全力疾走するからまあ大変だ。
全学年合わせて2700mも全力疾走するんだと。人類凄くね?(規模でか)
リレーは男女交互に走っていく。最初は一年男子からだ。
お、最初に裕也の出番か。本人には届かないくらいの声で応援してあげよう—
「このリレーで一位取ったら好きな人に告白するぜ!!!!」
うん、それを大声で言うと他の緑団のリレー走者にプレッシャーだからやめとけ?
そう思っていたが、周りの女子生徒は「私かな?!」「いやあたしだよ!」「い〜やあっしだね!」「いやこのあちきかもよ?」と言う声が聞こえる。なんでどんどん一人称癖強くなってんだよ。
まああいつイケメンだしな……女の尻さえ追わなければ。
そうして第一走者目がスタートする。




