第二十六話 体育祭第二種目『綱引き』
ふぅ…第一関門突破だな……いやこれが関門だったら全部登竜門みたいな感じだけど。("全部"登竜門とかいうパワーワード)
「あの…」
「あ、さっきの」
「あ、ありがとうございました!」
いやなんでー?普通そのセリフは俺が言うはずなんだけど…
「えっと、何が?」
「あ!え、えっと…その……い、色々です!!」
いやなんの情報も出てこん!「何食べたい?」「なんでもいい」くらい情報ない会話なにこれ!?
「あ、そろそろ『綱引き』始まりますよ。早く行きましょ」
「え?あ、あぁ…」
そっちが引き止めたんだけどな?とは言えないチキンな俺であった。だって名前も知らない人にツッコミて!ハードル高いから!!(←言い訳乙)
はぁ、綱引きな〜。手痛くなるからあんまやりたくないだよこれ。しかも体幹弱弱のワイにとっては体持ってかれたらすぐ引きずられるという無様な絵面になるし。(経験者は語る)
最初は赤vs緑
その後は青vs黄、負けた団同士、勝った団同士と言う順だ。
結局やる回数が変わらないなら勝ちに越したことはないし、頑張ろう。
「まずは赤団vs緑団でーす!」
放送部の高らかな声がグラウンド中に響き渡る。
「頑張るか」
そう独り言を呟き、密かに士気を高める。
「いちについて…よーい、パーン!」
だからそのスターターピストルうるせー!
今日二回目の同じツッコミを心の中で済ませながら綱を引く。
赤は運動部の割合が多いイメージ。対して緑はガタイが良い人が多い感じがする。どっちが勝ってもおかしくなさそうなくらい良い勝負してる。
1人でも欠けたら負けるんじゃね?みたいな緊張感がより感じられて、ちょっと楽しい。
結果的に緑団の勝利であった。
皆が「やったー!」とか「ぃいょっしゃー!」とか言ってるけど、これ一回戦だよ?まあ嬉しいっちゃ嬉しいけど。
続いての青vs黄は…圧倒的に黄が強かった。
いやでも、青と黄混ぜたら緑になって、俺らは緑、相手は青が欠けて緑になり損ねた黄。これは勝てますね(超謎理論)
負けた団同士は赤の勝利だった。こっちも結構良い勝負してたな。接戦の戦いって見てて楽しいよね。
そうこうしているうちに俺たちの番になる。
これ終わったら昼飯だし頑張ろ、とモチベも上げつつ定位置に着く。
「これに勝てば優勝に大きく近づく大事な一戦でーす!どちらも頑張ってください!!……はあ、大島さん今日もかっこいい、勝った時の笑顔が見たいから緑に勝ってもらいたい………」
入ってるよ声が!しかもめちゃくちゃ私情入れるやん!!放送は中立でいてくれよ!
俺の少し前にいる注目の的、大島剛太。彼なりのファンサービス(?)で放送先にウインクしていた。それを見たさっきの放送部は言葉を失っていた…いや放送が言葉失うなや。
「いちについて…よーい、パーン!」
毎回毎回スターターピストルうるs—
と、一回戦目は緑団の勝利。
二回目は黄団の勝利となり、1:1でサドンデスとなった。もう手が赤くなるくらいまでやってるんすけど…まだやんの?もう○ぬて。
と、三回戦目はみんなの体力も減ってきたのか、だいぶ拮抗している。みんなが息を切らしながら綱を引く。マジできつい……はよ終わってくれ〜。
「そこまで!」
終わった…ここまで来ると、もう勝敗とかあんま気にせんわ。
「勝敗はギリッギリ黄の勝ちです!」
いや、ギリッギリなら気にするわ。あとちょっと頑張ってればなー、いや、結構全力出したしいいか。
みんなの
「マジかー!」とか「あとちょっとだったの〜!?」とかどこか悔しげな言葉がちらほら聞こえて来る。まあ分からんくはない、"あとちょい"って言われると気になるよね。
「あとちょっとだったのにー!!」
「わ、綾瀬さん!……悔しいの?」
「そりゃもちろん!出来ることは全力で!だよ!!」
頰をぷっくりさせてる綾瀬さん可愛いですね!!!待ち受けにしたい!(過去最高にキモイことは弁えている)
「これから約1時間は昼休憩に入ります」
「お!やっとお昼ご飯食べれる!!」
「お腹空いてたの?」
「う…まあ、ちょっとね?"腹が減っては戦ができぬ"っていうし!」
あ、お腹空いてるのバレて照れてる。その勢いで誤魔化そうとする綾瀬さんも良い!(お前誰だよ綾瀬さん推しみたいになってんぞ)
「あ!じゃあさじゃあさ、みなっちも屋上で食べない?」
「え?一緒に??綾瀬さんが良いなら全然いいけど」
「ありがと!じゃ、先行ってるね!!」
そそくさとその場を去る綾瀬さん。ん?なんかあった………って後ろで俺を睨んでる"あの女子"がいた。
いや怖い怖い。何これ?遂に俺モテ期到来してんの?(自惚れんな陰キャが)
人生には三回のモテ期があるらしいぜ!
ぱらなにもこういう出会いあんのかなー?チャンスはあと三回も残ってるしな!!!
………自分で言ってて悲しくなってきた。




