第二十話 意外とまともな勉強会と定期テスト
俺の部屋にて。
「翔太、お前綾瀬さん来るなら来るって言えよ」
「すまんすまん」
「まあ私は長谷川くんが来るの知ってたけどね」
「俺だけ知らなかったんかい!」
そんなこんなでやっと勉強していくはずだったが…
「お!これ最近流行りの『さくさく』じゃね?!お前意外とこういうの—いや意外じゃねぇわ。このヒロイン、お前の好みドンピシャだし」
「おい、俺の女性の好みを暴露するんじゃないよ。童顔が好きとかタイツの方が好きとか」
「そこまで言ってねぇわ」
……ん?綾瀬さんがなんか小さい声でぶつぶつ言ってる。
「タイツの方が好み…童顔の可愛い系が良い……」
「違うよ!?別にそれ以外の女性で良い人もいっぱいいるから!!」
あらぬ誤解を生むところだった…間違ってはないけど……って!
「そんなことより今は勉強だから!」
「「はーい」」
やっとまともに勉強出来る…まずは数学からだな。え〜と、ん?何これ??オイラーの多面体定理???日本語でおk。
「あ、それは『頂点の数−辺の数+面の数=2』ってやつ。今は覚えるだけでもいいから」
「なんか良い語呂合わせとかない?その方が覚えやすそうだし」
「んー、私が知ってるのは『超ー変なメンツ』ってやつかな?」
「『超ー変なメンツ』??」
「超が『頂点』でーはマイナス、変は『辺』、メンツは『面』と『2』が合体してるの」
「めっっちゃ分かりやすい!俺も覚えとこ」
「裕也も苦手なのか」
「国語だけならまあまあ出来るけど、それ以外はあんまり。だって国語以外勉強しねーと分からんし」
清々しいくらいの怠惰具合。でも分かるなー。自分の得意科目はスッと入ってくるのに他の科目になると急に分からんくなるやつな。
「え?長谷川くん国語できるの!?私結構苦手なんだよねー。答えがワンパターンじゃないのが理解できない」
「典型的な理系脳」
この三人、苦手を支え合ってる最強の布陣じゃね?俺だけ得意科目ないけど。なんなら教えられること一つもない。
「じゃまずは公式の復習からね。ここはこの公式を使って—」
そうして軽く1時間くらい経過して—
「おお!めっちゃ分かるようになってきた!」
「やべー綾瀬さん女神じゃん!!」
「いや〜それほどでも〜」
これなら余裕で赤は回避できるな。後は古典だけど…こいつが古典出来るって、正直信頼度あんま高くない。他の教科で当てられた時…
「わかりません!」
「どこが分からないんだ?」
「分からないところがわかりません!!」
って言ってたくらいだし。大丈夫か??
「よし!じゃ次は古典だな。一応人並み以上にはできるつもりだから。今回のテスト範囲は物語一つ分だし、そんな覚えることは多くない」
「でもそもそも物語の現代語訳が出来ないんだが、どうしたらいいんだ?」
「暗記だ暗記。とにかく覚えるだけ覚えとけ!」
「古典の暗記て脳筋すぎるだろ!もっとこの文がなんでこう意訳されてるのとか—」
「わからん!」
「えぇ…」
「とにかく、こういうのはフィーリングだ!シュ、サッ、ババッ!って感じでよ」
「ひとつもわからんわ!!擬音で伝わるわけねぇだろ!!」
「仕方ねぇ。コツならあるから教えてやるよ」
「最初からそれを教えろや!!」
こいつと勉強やってたらツッコミで体力持ってかれるわ……。
かなり時間経ってんな。でもこいつの話聞いてて分かったことがある。…意外と分かりやすいぞ??最初は「ここはシュバ!って感じでよ」とか言われても全く分からんかったが、時間が経つにつれて言わんとしてることがわかってきた。人間の順応力すげぇ…。
「だからここがデーン!ってなって—」
擬音のセンスは壊滅的だが…
だいぶ集中してたな。えっ!?もう17:30か…4時間も勉強するなんて初めてだ…1人より複数人の方が全然捗ったな。
「もうこんな時間か。そろそろお開きか?」
「そーするか。俺も数学教えて貰えて思わぬ収穫もあったし」
「私もー。国語ってフィーリングなんだねって思ったよ」
完全に適応してるな、綾瀬さん。
「そーいえば、数学と古典ってテスト何日目だったっけ?」
「どっちも初日。というか明後日にテスト始まるから今日の復習しなきゃ!」
「そうだね。じゃまた明後日学校で」
「おう!」「うん!」
てな感じで土曜日が終わり、日曜日はしっかり復習して—
ついに初の高校のテストか…。なんか緊張してきたな。
「お!みなっち早いね!!」
「おはよう綾瀬さん。この前の復習するために結構早く家出てきたんだ」
「そーそー!」
「わ!長谷川くんも!」
「やっぱ学校の方が集中できるし」
そんなこんなである程度復習し終わったところで朝のHRも終わり、遂にテストだ。
「じゃあ荷物廊下に出し終わったら始めるぞー。今日は数学、古典、公民の順だ」
教室から出て荷物を置く時に友達と復習しあってる光景はもはや万国共通。
「よし、全員来たな。じゃあ最初は数学。8:45〜9:45の1時間、チャイムが鳴ったら始めろ」
キーンコーンカーンコーン♪
全員が一斉にペンを走らせる。




