ハーモニア

　音楽があふれるその世界では、誰もが音の恩恵を受けていた。

　己の感情を歌で表現し、気持ちを伝える事をかかさなかった。

　しかし、そんな世界に危機が訪れる。

　無音の脅威が黒い影となって、世界を覆い尽くした。

　言葉を、音を、歌を奪われた人達は混乱し、

　他社とコミュニケーションがとれなくなった。

　誰とも心を繋げられない世界で、人々は心病み、尽き果てるずだったが……。

　立ち上がった一人の救世主が、混乱する人々をなだめ、眠りにつかせた。

　多くの者達が眠っている間に、その救世主は音を取り戻すと約束して。

　無音の脅威は、正しく脅威だった。

　救世主は何度も静寂の影で、心を病みそうになった。

　しかし、そんな時は必ず記憶の中にある声に、音楽に慰めてもらった。

　それから何百年も経った頃、救世者はついに無音の静寂を打ち破る事に成功する。

　眠りから目覚めた人々は、復活した世界を前にして、歓喜の音楽で耳を互いの耳を震わせたのだった。