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澄、周辺国の関係改善をすると決める

「す、澄? わしも時間を割いて協力したんだから、そんな顔見せずに何かお礼は……?」


「は?何、寝言、言ってるんですか?この、バカ当主は」


 一方、当のご当主はこのご様子。


 必死で怒られないようにゴマ擦ってるの、見え見えなんですけど?


 それって、余計に相手の怒りを上げるってこと分からないのかなぁ?


 政貞さまには協力してもらったからお礼は当然だけど、あなたにするお礼なんて粟一粒もないんですけど!?


「この時代の婚姻が、どういう意味かあなたわかってるんですか!?」


 この時代に来て一番の大声、いや、自分でもこんな大きな声が出るんだってびっくりする声が出た。


 氏治さまが慄いて後ろにたじろぐけど、この怒りはぶつけなきゃどうしようもできない。


「娘を出す家が、嫁ぎ先の家と協力関係を結びたいっていう理由がほとんどなんです!それをなんです!?正室も側室二人とも、ほぼ離縁状態にしちゃうだなんて!」


 この時代、武家の恋愛結婚なんてほとんどない。


 大体が家と家との結婚がほとんどで、政治的関係を強めるためだ。


 だから、どちらかの家が裏切れば嫁いできた姫の立場は、非常につらいものがある。

 そりゃそうだ。


 この家とは長くやっていこうっていう証のために嫁いだのに、その役目を果たせなかったんだから。


「今二人がどんな気持ちでそれぞれの家にいるか、考えたことないんですか!」


 当然、嫁ぎ先の家の中で居づらくもなるだろうし、かといって家には戻れない。


 何せ、婚姻失敗は姫の責任っていうことで、実家でも針の筵に近いはず。


 だけど、氏治さまの現状はそれを姫にしちゃったわけだ。


 葉月姫様に会ったことはないけど、毎日すごく辛くしてそう。


 稲姫様だって子供がいるのに、小田を離れて実家である芳賀の勢力下に行っている。


 二人とも『家の役に立てなかった』っていう辛い気持ちで、毎日過ごして手もおかしくない。


 あたしも一応女の子の端くれだから、どうしても姫の二人に肩入れしちゃう。


「この状況を何とかして、さらにお二人が戻ってこれるようにしなきゃ! 氏治さまだって、二人と別れたままじゃ嫌ですよね?」


「そ、そりゃそうじゃが。佐竹にしても芳賀にしても、このままでは無理であろう……?」


「それを、何とかするんです!ちょっと、あたしいろいろ考えてきます!」


 色々な感情で頭が一杯になったので、あたしはずかずかと評定の間を出て行った。


 周囲との関係、勢力図もそうだけど、まさか婚姻関係も翻意していたなんて最悪すぎる。


 思った以上に、小田家は絶体絶命の状況。


 あたしはこの小田家を守りたい。


 あたしをあたしとして認めてくれた、この家を守りたい。


 弱くても泣いてもあたしを捨てないって約束してくれた、氏治さまを守りたい。


 だけど、それがすっごく難しい事と、すぐに有効策が出せない自分が無力な事を知ってしまった。


 だから、こんなにも怒ってしまっているんだ。


 氏治さまに対する突き放すようなさっきの言い方は、八つ当たり以外の何ものでもない。


 ――何もできなくてごめんなさい、氏治さま。


 心の中で、謝りながらあたしは大きく息をついて空をにらんだ。


「絶対に、この状況から逆転する!それが今回は、小田家への恩返しになるんだ!」

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