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短話集 禊  作者: 怪童実篤
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お前の才能たった1

 男はため息をついた。何度目かもわからないため息だ。なぜなら彼は一度も企業から内定を貰えたことがないのだ。同期たちはうまくいっているのにうまくいかない。将来的に生活保護に頼るしかないのかなぁ。才能がない人はそれに応じて生活保護費を受け取れる。それはそれで良いのだが、生活保護で多額の金をもらうということはその分自分に才能がない人間だと衆目に晒すようなもので。生活保護番付なるものもある。まったく生きづらい世の中だよ。そう彼は思った。

 

 こうなった原因は男の過去に戻る。全ては彼の生まれから始まる。彼は才能がなかったのだ。ほぼゼロ。両親は才能値が2人とも50だった。しかし、彼は違う。突然変異したのか男は才能がたったの1しかなかったのだ。才能が数値化されて見えるこの時代で、全ての才能が1だということは異常だった。両親は男が生まれた後にこのことを医者から告げられ酷く困惑したという。最初、父親が母親の浮気を疑ってしまってそれはえらいことになったという。その時の親のように、彼は眉間にしわを寄せることも多かった。

 今まで男は才能が1でもなんとかやってこれた。才能が数値化されたといってもみんなそれを言いはしない。高ければ妬まれるし、低ければ陰口を叩かれるのが関の山だからだ。教育では聞くことはタブーとされている。教育分野では500年間も才能は関係ないとされているからだ。いわゆる建前というやつだ。その建前でこれまでやってこれた。いいや、ひとつだけ才能が出てきたことがある。好きな人に告白した時に、才能値を教えてと言われたことだ。男は嘘をついたのだが、それも見抜かれてしまった。男に才能がなかったからだ。学校で求められる才能もなかった。目にみてもそれがわかるほどだった。

 「あなた何にもできないじゃない。才能ないのバレバレよ。そんな将来のない人とは付き合いたくないわ。」

 思い出しても目頭が動く。

 採用になると話はより困難、誤魔化しは効かない。企業は才能値を求めてくる。偽ることのないように医師の才能診断が就職活動の過程ではいる。何ともいやらしい。実際に働くと、本当に才能値に比例して、才能値の大きいやつほど仕事ができるらしい。学校で散々才能なんてと言われるが、全くの嘘であるようだ。ふざけやがって。そう男は拳を握った。男は営業の才能が1という理由でアーエンスに書類選考で落とされてしまった。それならと思い金融や製造業などを目指そうとするも、それも才能が1で落ちてしまった。どうしようもない。他人の才能が憎い。そう彼は思った。

 

 そして今、とうとう嫌になった彼はネットに逃げ込んだ。掲示板で才能値低いやつ集まれというスレッドを見つけて入り浸る。オレ才能ないから生活保護受けるわとの声や、才能ないから就職できねえ、諦めるわとの声が見える。そして、世の中カスだと打ち込んだら大量の同意を得た。ニンマリと笑う男の影が画面に這い寄る。彼は掲示板で他の仲間と慰め合った。ここには仲間がいる。救いはここにある。何日かそんな生活を続けていると、男の母親がマンションまでやってきた。

 「あんた。なんもせずになにやってるの。」

 そんな大声で言われてはたまらない。母親には逆らえない男は就職活動を再開した。何度も志望理由書を工夫し、勉学によって簡易的な試験で高得点をとっても内定はもらえなかった。否、面接にすらたどり着かない。

 そんな時にダメ元のGテレビからお祈りメールが来た。しかし、ただのお祈りメールではなかった。履歴書に書いた才能値に関して取材がしたいとのことだった。男はどうせならと思って快諾した。いや、本当はヤケクソになっていたのだ。

 「率直にお聞きしますが、本当に才能値が1なのでしょうか。」

 「はい。本当に1です。」

 「おぉ本当に。あのー、ここにある取材の才能が1なんですけども、他に才能値で落とされたことはありますか。」

 「営業の才能、経理の才能、事務の才能、人事の才能、上げたらキリがありません。とにかく1なのです。」

 Gテレビはこの私を特集ニュースで扱うつもりなようだ。めちゃくちゃを言ってやった。世の中おかしいだとか、なにやっても無駄だとか、そういうことを。ニンマリとした顔をこれでもかとカメラに焼き付けてやった。その顔がテレビから出てくる。ネットでも話題になっているようで、なおさら満足だった。

 才能がないし、もう就職活動やめよう。生活保護だな。ニンマリ顔を浮かべた。

 そう、彼は心の中で決意した。

 

 5年後、彼は代議士になっていた。テレビの出演からというもの、才能値に関する報道番組に引っ張りダコになり、露出が増えた。もちろん、才能のない人が大半を占める世の中で受けはよかった。そこにD政党が目をつけて、党の看板として立候補させたのだ。そうするとたちまち当選。彼は才能が1しかないのに才能が99の人間と肩を並べている。

 人生どうなるかわかんないなぁ。

 よくよく考えてみれば、才能があっても成功するとは限らないな。がはは。

 ニンマリと笑った。

 才能というのは厄介なものですよね。私はお話を書く才能がなく苦しんでおります。アイデアもさして出てきません。しかし、私の身近に文才がすごくあるなぁと思う人もあります。そういった人がなろうのことで読者が伸びないと悩んでいる姿を見て思いました。実は才能があるからといって必ずしも成功の至らないのではと。そうしてこの話を書きました。男は才能がありません。しかし、その才能のなさから人気を得ることができた。そして、成功したわけですね。人生才能なくてもひょっとするとうまくいくかも。そういうふうに肩の力を抜いて生きていくのもどうでしょうか。読んでいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 5話全て読ませて頂きました!教訓を含めた内容にあ、私もこの立場で、こんな経験あるなぁ。なるほどなぁ、ととても共感しました。「有能な者」「多数決の行方」があとがきを含め、個人的に心に残りまし…
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